表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/272

親友と(四)

 いつも『何かしらの邪魔』がある。今日もやっぱりダメだった。

 次に逢えるのは『音楽室の入り口』だが、それも望み薄だ。今よりもっと人がいる。

 朝練が終わって、音楽室に机を入れる時なら? いや、そんな急いでいる時に、話なんてできる訳がない。


 一体、どうしたら良いのだろう。もう、今日一日、ずっとこんな気持ちのままなのは確定だ。

 そうなると、また『謝ること』もできず、このまま流されて『うやむや』になってしまうのだろうか。もう疲れた。考えたくない。


 ふと、真衣の手元にあるノートを覗き込んだ。

「まだ続いているの?」「続いているよー」

 嬉しそうに言うと、真衣がノートから顔をあげた。香澄と違って、真衣はにっこり笑顔だ。羨ましい。パッとノートに戻った。


 真衣にとって、真治と意思疎通をすることは、試練でも何でもないようだ。むしろ真治が誰と話していようとも、そこに自分の都合を優先して割り込んで行く。先生でも先輩でも、関係なくだ。

 そんな時、真治は少々『迷惑そうにしている』が、それでも真衣だけには、ちゃんと相手をしてあげている。


 やっぱり真治にとって、真衣は『特別な存在』なのだろう。


 香澄は真衣にばれないように溜息をして、開きっぱなしのノートを読んだ。思わず『ん?』となる。


六月十日(金) 主婦 進藤真理子

 ここで颯爽とお母さん登場!

 やっほー、元気にしてますか?

 学校で真衣をよろしくね!


六月十一日(土)

 いつもお弁当ありがとうございます。

 今日も唐揚げと卵焼き、とても美味しかったです。

 真衣は、元気が良すぎて困ります。


 確かに真衣の母が登場しているではないか。

 そして、それに律儀に返す真治なのであった。これではまるで、幼稚園の『れんらくちょう』ではないか。うーん。違うか。

 良いなぁ。トランペットは不思議なパートだ。

 いや違う。真衣が不思議なのだろう。


 香澄は部外者ではあったが、くすっと笑うしかない。


 パラパラと真衣がノートを捲り始めたので、香澄はそれ以上内容を読むことができなかった。

 それでも見えた頁には、時折トランペットやら、猫の絵があって、実に楽しそうである。それも羨ましかった。


 もっと羨ましかったのは、どのページも、びっしりと字が埋まっていることだ。


 表紙まで捲り終わると、そこには『トランペット』と書いてあって、トランペットの絵が大きく描かれている。

 それはパート内で回覧する『交換日記』だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ