5話 走馬灯
サイクロプス、またの名をキュプロークス。
それはギリシャ神話に登場する単眼の巨人。
「このデカブツがァ!」
こいつ、デカい割に速すぎる。
俺を認識した瞬間、突風とともに禍々しい金棒が振り降ろされた。
コンマ一秒でも遅れてたら今頃スクラップだっただろう。
「【分解】‼」
俺は全力の速さで【分解】を右手に纏い金棒めがけて走り出す。
金棒に触れると塵になった。
ちなみに【分解】は生物には効果を発揮しない。
「これで丸裸だなぁ」
そう言って右手に剣を戻し、奴の右手を切りつけようとした。
しかしその瞬間、俺の【危険察知】が発動した。
思わず飛び下がると、奴は驚きの行動をする。
奴の左手に先程【分解】したはずの金棒があらわれた。
それはねぇだろと思いつつ金棒を剣で受け止める。
経験も浅く、Aランク程度のステータスの俺とSランクモンスターの奴とでは真っ向勝負では勝てるわけがない。
なんとか金棒を受け止めながら【透視】で弱点を探る。
どうやら奴のコアはあの単眼のようだ。
俺は跳躍し、弱点めがけて突きをする。
だが、その強度に耐えきれず師匠から貰った剣は砕け散った。
まさか俺の方が丸裸にされてしまうとは……。
そして奴の反撃で部屋の真反対まで吹き飛ばされた。
「あーいってぇ」
俺はここで死ぬのだろうか。
【掃除人】として何もできないまま死ぬのだろうか。
この過酷な星で誰にも知られず死ぬのだろうか。
16歳の若さで死ぬのだろうか。
童貞のまま死ぬのだろうか。
杏子さんに好きと言えずにしぬのだろうか……。
頭に色んな記憶がフラッシュバックする。
俗に言う走馬灯だろう。
死ぬことに恐怖はない。
でも嫌だ。
師匠に修行をつけてもらって、もっと強くなりたい。あいつらと一緒に馬鹿騒ぎしながら冒険してみたい。高校生らしいことをしてみたい。杏子さんの料理が食べたい。バイクに乗ってみたい。猫を飼ってみたい。好きなバンドのライブに行きたい。ふかふかの布団で寝たい。S○Xしてみたい。みんなにあいたい。学校に行きたい。テストは受けたくない。誰かの役に立ちたい。父さん母さんに会いたい。でも、死にたくはない。テレビのインタビューを受けてみたい。傷跡を残してネットのオモチャになりたい。カラオケに行きたい。レンタルしていたビデオがあった。それを見たい。海に行きたい。洸希みたいにナンパしたい。杏子さんに好きと伝えたい。
――生きていたい。
掃除っぽいことしてくてメンゴ