2話 豚さん
ボードに手をかざし恐る恐る画面の職業欄を見た。
するとそこには、見たことも聞いたこともない職業欄が記載されていた。
《掃除人》と。
いや、確かに掃除は好きだ。百均のお掃除グッズコーナーを物色するのが趣味な自分にとってこれは天職だろう。
だが、違うんだ。ダンジョンでこの職業になりたいわけじゃないんだ。
お前に冒険者は向いてないから、ダンジョンの掃除でもしてろってことか?
それともモップでも使ってモンスター殺せってことか?
どっちにしてもチクショウだ。
「俺、謎すぎる職業になっちまっt――」
仲間に報告しようと振り向いたら、一人の男以外この部屋にいた人間はみんな気絶していた。
その男は、黒いスーツをきっちり着こなし、革素材の手袋をしたまるで映画に出てくるスパイのようだった。
「君と話をするためにこの場の人間には気絶してもらった。大人しくついてきてもらいたい」
「嫌だと言ったらどうしますか?」
「君にその意思を尊重させるほどの力はないだろう」
「ですね。従います」
「よろしい。では、右手を出してくれ」
黒スーツが俺の手を掴んだ瞬間、視界が真っ黒になった。
*
「ご苦労黒スーツ君」
目を開くとそこは、モニタールームのような空間だった。
この人仲間からも黒スーツって呼ばれてんのかよ。
そう思いつつ辺りを見渡したが、俺と黒スーツ以外の人間はいない。
真ん中あたりの机の上に子豚が座っているくらいだ。
……ん?子豚?
もしかしてこいつがしゃべったのか?
「はじめまして野上健くん。そしてようこそダンジョン・コアへ」
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!
少し落ち着こう。
深呼吸だ深呼吸。
「あなたは一帯何者ですか?それとダンジョン・コアとは何なんでしょうか?」
「僕は始まりのモンスターであり、全てのダンジョンの管理者さ。気軽に豚さんと呼んでくれ」
流石に情報量が多すぎますわ。
俺がこんな大物に呼び出されたのは、やはり職業が関係してるのだろうか。