すなが④
「ようやくわかってくれた!」
ボンクラちゃんはそう言って涙ぐむ。
しかし私の心を擬音で示すならば『スン……』であった。
──お前は何故イケメンなんぞになったんだ。
飼い猫がイケメンになるなんて、癒しのもふもふが消えて代わりにヒモが増えるのと同義……ゴメン過ぎる。
喜ぶ飼い主はおそらくいない。せめてスパダリレベルに有能でないと許されない案件だ。
現に目の前の愛猫とおぼしきイケメンは、先程ちゅーるに飛び付いた挙句、それをペロペロしていた。
猫なら可愛いのに、イケメンだと残念極まりない光景である。
しかも私自体が会社に飼われる社畜生ときたもんだ。
脱・畜生への道は厳しい。
同情するなら金をくれ。
愛されるよりも養われたい、マジで。
「なんでご主人はそんな目をするのッ?!」
「いや~、元・ボンクラちゃんは元・愛猫だけあって、元・ご主人の心の機微に敏感だなぁ~」
「『元』ってなに!?」
すりすりしてくる元・ボンクラちゃんだが、今は所詮、ただのイケメンである。
いや、ただのイケメンではない。
『猫まっしぐら』ならぬ『ヒモまっしぐら』のダメイケメンだ。
「貴様などお呼びでない! そうだろうハニー?!」
「にゃッ!!」
擦り寄るダメイケメンをニョロイケの触手が叩く。
「フッ、そのモフみすら失った役立たずとは違い、私はスパダリだ。 現に貴女が落下した際、華麗に受け止めたのはこの私!!」
確かにアレは助かった。
仮に私がヒロインだとして、スパダリの定義が『ピンチのヒロインを華麗に救うイケメン』であるならば、スパダリと言えんことも無い。
ニョロニョロはしているが。
ニョロニョロはしているが。(※二回目)
「今もツマミを欲する貴女の為に、作っていたところ……料理もバッチリだ!!」
「ツマミを?!」
なんか静かだと思ったら、その間は料理していたらしい。
いつの間にかニョロイケはエプロンまでしている。ふりっふりの若奥様風のやつ。
新婚気取りか。
「……あ、いい匂い」
ニンニクのいい香りが鼻腔を擽り、食欲をそそられる。
「酒と相性バッチリのシャレオツなおツマミ……アヒージョだ! おあがりよ!!」
そう言って出されたアヒージョは、とても美味しそうだった。
だが……
「──コレ、材料なに?」
タコ(っぽいもの)のアヒージョなのが気になるところ。




