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002 勧誘

スタートダッシュ!連続投稿の2本目です。

そんなわけで、のんびりしていたある日。

昔なじみの近所のお兄ちゃんがやってきた。


「よう!リアが帰ってきたって?」


私をリアと呼んだ、がたいの良いこのお兄ちゃんは、テオドール。

私が生まれたころから近所に住んでいて、兄妹のように仲良くしてくれている。

まわりの男の子たちが私の怪力を恐れて遠巻きにし始めても、変わらず接してくれたお兄ちゃんだ。


「テオ兄、久しぶりー!」

「おう!あまり落ち込んでなさそうだな、安心した。」

「うーん。全く落ち込んでないわけでもないんだけどね。」


久しぶりにテオ兄に会えた嬉しさで元気よく挨拶したからか、落ち込んでないと判断されたらしい。

でも、どこへ行っても不要だと言われ続けて、落ち込まないはずもない。


「なんだ?やっぱり仕事、見つからなかったのか?」

「まあね・・・。気長に探すよ。」

「ちょうどよかった!それならお前、自警団に入らないか?」


ここは田舎で、いわゆる警察組織となる王都から派遣される騎士たちの数も少ない。

その為、村人たちで自警団を作り、村の平和を守るようにしているのだ。

テオ兄はその自警団の団長だったはずだ。


「実はな、ちょっとトラブルがあって、女の団員を募集中なんだ。」

「トラブル?」

「うちの村のメイン事業といえば、温泉だろう?その女湯に、女装して入ろうとした奴が出たんだ。」

「女装?!」


驚きだ。

そこまでして入りたいのか、女湯。

女である私には、さっぱり分からない感覚だ。


「女湯を男湯から覗こうとするやつは、男の団員でなんとかなるが、女湯に入られちまうとなぁ・・・。」

「あぁ、うん。男相手に戦える女の人は限られるもんね。」

「そういうこと。だから、お前に自警団に入ってもらえないかと思ってな。」


理由を聞いて納得した。

田舎だからこそ、人材は豊富とは言えない。

私なら、そこいらの男であれば腕力で負けることは無いだろう。


「自警団に入れば、領主様からそれなりの報酬も出るし、良いだろう?」

「報酬も出るの?!わかった、やる!」


私は二つ返事で引き受けた。

このままニートになるよりは両親の助けになれるだろう。


「よし!じゃあ早速、我らが自警団の本部に案内してやる!」

「はーい!よろしくお願いします、団長!」


元気よく返事をした私の頭を、テオ兄は、グリグリと乱暴に撫でた。

そうして、二人で自警団の本部へと向かったのだった。


「だ、団長!後ろのその子はまさか・・・!」


到着するなり私の姿を見た団員らしき男の人が引きつった顔で私を指さす。

こら、人を指さすんじゃない!


「おう、アルメリアだ。知ってるだろう?」

「怪力女を自警団に入れるんですか?」


一応声をひそめてはくれたが、『怪力女』ってバッチリ聞こえたぞ。


「女湯の警備強化の為には欠かせない人材じゃないか?」

「た、たしかに、彼女なら・・・。」


納得しつつも恐ろしいものを見る目で私の方を見る。

なんか、腹立たしい。

そんな気持ちが表に出てしまったからか、ますます団員さんは怖そうな顔になる。


「そんな顔するな。失礼だろ。こいつも中身は普通の女の子だぞ。」

「テオ兄、ナイスフォロー!」


ニッコリ笑ってテオ兄を見る。

テオ兄もニカっと笑って言う。


「こいつの怪力についても、体術を学ぶ過程でコントロールの仕方を覚えるだろうし、丁度いいだろ。」

「あ!テオ兄まで怪力って言った!失礼しちゃうわ。私、女の子なのに!」


とはいえ、確かにコントロールできるようになるかもしれない。

自警団の団員は、騎士さん達から戦い方を教わることができるのだ。

ぜひとも体術を習わなくては!

意気込む私を遠巻きにしてみる団員たち。

そのほとんどが男の人なのに、そこまで私を怖がらなくても良いと思う。


「ここが俺の部屋だ。」


そう言ってテオ兄が連れてきてくれたのは、本部の二階にある部屋だった。


「団長室ってことだね。シンプルというか、質素というか・・・。」


部屋の中の感想を言うと、テオ兄は苦笑いした。


「当たり前だろ。こんなところに余計な金は使えない。必要なものが最小限揃っていれば良いんだよ。」

「たしかに、それもそうだね。」

「ほら、これが入団希望書だ。家でゆっくり書いて、明日持って来い。」


一枚の書類を渡して、テオ兄が言う。


「家で?ペンを貸してくれれば、ここで書いちゃうけど?」

「自警団は遊びじゃないんだ。怪我をする可能性もある。一度家に帰って改めて考えてから書くんだ。」


テオ兄が珍しく真剣な顔をして言うので、私は黙って頷いた。

家に帰って改めて書類を見る。

書く範囲は半分くらいで、もう半分は入団に当たっての注意事項が書いてあった。

仕事上、ケガをしたり、命を落としたりする可能性もあること。

適切な治療は施すが、治らなかった場合に自警団も領も責任はとらないこと。

自警団に入ることはあくまで署名した本人の自由意志であること。

そういった事が細かく書いてあった。

私は一通り注意事項を読んだうえで、もう一度考える。


(ケガをしても、治療はしてもらえる。でも、治らなかった時は自己責任になる・・・。)


たしか、治癒魔法を使える人はごく少数で、そのほとんどが王都に集められているはずだ。

だから、田舎の村の自警団では、普通の医者が行う治療しか受けられないのが基本だ。

ポーションを飲んで治すという手もあるが、元々財政が潤っているわけでもない田舎では、使える数が限られている。

それらを考えたうえで、それでも私は書類にサインした。

どこへ行っても要らないと言われ続けた私を、必要だと言ってくれた唯一の場所だ。

ここで頑張っていこうと、そう決めたのだった。






ありがとうございました。


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