001 門前払い
「残念だけど、お嬢ちゃんに冒険者は無理よぉ。」
王都の冒険者ギルドで、妙に色っぽい受付のお姉さんにそう言われた。
「無理って、何でですか?」
私は慌ててお姉さんに詰め寄る。
「だって、その細い体。体力なさそうだもの。かといって、魔法が得意なわけでもないでしょう?私好みのイケメンなら口を聞いてあげないでもないけど、あなた、女だしねぇ。」
「腕力なら自信があります!」
「腕力のある女の冒険者なんて、必要ないのよねぇ。ほら、まわりをよく見て?」
そう言われて周りを見る。
剣を腰に差したイケメン。
がっちりした格闘タイプのイケメン。
細いながらも魔法を得意とすることが一目でわかるイケメン。
魔物を自在に操るイケメン。
ありとあらゆる種類のイケメンぞろい。
まさしくイケメンパラダイスだった。
「ね?あなたみたいな子は場違いなの。さっさと帰ってくれる?」
「いや、そこを何とか!」
「どうしたんだい?」
そこへ、お姉さんによく似たおばさんがやってきた。
「ああ、ママ。この子がうちのギルドに入れてくれって駄々をこねてるのよぉ。」
「へぇ・・・。」
ママと呼ばれたおばさんが私をじっくりと見る。
私は真剣な顔で姿勢を正してピシッとした。
「無理だね。」
「なんでですか?!」
「ギルド長は病気で入院中。だから今は私がギルド長代理だ。その私が無理だと言ったら無理なんだよ。」
「どうして無理なんですか?理由を聞かせてください!」
「ああ、もう。うるさいね。とっとと帰ってくれないかい!」
そう言われて愕然としていると、剣を腰に差したイケメンがやってきて、受付のお姉さんに話しかける。
「レオ様!先日のクエスト、もうコンプリートなさったんですね!さすがですぅ!!」
お姉さんはしなを作ってイケメンに話しかける。
もはや私の事は目に入っていないようだ。
もう、実家へ帰る分の路銀しか残っていない私は、やむなく故郷へ帰るしかなかった。
私の名前はアルメリア。
田舎生まれの田舎育ちだ。
田舎といっても、幸いにも温泉が湧き出ていて、寂れているわけではない。
王都や領都ほどではないけれど、それなりに観光客もいて栄えている。
そんな街に生まれた私は、度々両親を青ざめさせてきた。
エピソード1
両親の話によると、当時2歳だった私のもとに、同い年の従姉妹を連れて叔母が遊びに来たらしい。
この叔母は遊びに来ると家の物を何かしらこっそり持ち帰る癖がある。
この時は私のお気に入りのガラガラを自分の子供に渡そうと思ったらしい。
持っていたガラガラに手を伸ばされた私は、
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
と叫んでガラガラを全力で振り回したらしい。
それをまともに鼻に受けた叔母は鼻血で顔が真っ赤に染まり、逆に私の両親は青ざめたらしい。
ちなみに、ガラガラは金属製だったにもかかわらず、折れて使えなくなってしまった。
エピソード2
あれは私が4歳のころ。
叔母は凝りもせずまた私の家へやってきては、何かしらを持ち帰っていた。
この日は私の大好物であるイチゴがターゲットにされた。
「アーちゃんのイチゴォォォォォ!!!」
何とかしてイチゴを守ろうとした私は、手近にあった小麦粉の袋を叔母に向ってぶん投げた。
小麦粉は6kg程入っていたらしいが、一直線に飛んで、叔母にクリーンヒット!
みごとに叔母は粉まみれになったのだった。
エピソード3
私もプリンセスに憧れるようになった6歳のころ。
私も女の子なので、『かよわい私』を演じていた。
田舎には子供が遊べる娯楽施設などないので、木登りをして遊んでいた時だった。
数人の男の子が勇者役、また数人が悪役になり、私は数人の女の子と一緒に木の上で悪役に捕まったプリンセスの役をしていた。
そんな中、悪役をしていた、子供にしては大きめの男の子が足を滑らせて木から落ちかけた。
ちょうどすぐ後ろにいた私は反射的にその手を掴んで男の子を助けたのだ。
ただ、男の子を掴んでいたのが片手だったことと、男の子が私より大きかったこと、そして完全に宙ぶらりんの男の子を楽々支えていたことで、見ていた子たちから怪力だと恐れられてしまった。
まあ、他にも色々あって、村中に私が生まれつき怪力であることが広まってしまい、年ごろになっても嫁の貰い手が見つからなくなってしまった。
それならそれで仕事をしようと思ったのだけど、怪力であるがゆえに、仕事の道具をことごとく破壊してしまう。
村で仕事を見つけられなかった私は領都へ行き、王都へ行き、仕事を探しまくった。
最後の頼みの綱で王都の冒険者ギルドへ行ってみたのだが、門前払いされてしまった。
このまま路銀が尽きてしまえば路頭に迷ってしまうため、やむなく故郷へ帰るはめになったのだった。
「父さん、母さん、ただいま・・・。」
「アルメリア!おかえり。・・・その様子じゃ、ダメだったのかい?」
「うん。王都にも行ってみたんだけどダメだった。役立たずでごめん。」
「そうか。まあ、まだまだ父さんたちも現役だから、ゆっくり探せばいいさ!」
「ありがとう。」
優しい両親は励ましてくれるが、心折れてしまった私は、とりあえず数日間はニート生活をして英気を養うことにしたのだった。
ありがとうございました。
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