表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました  作者: 瀬里@ピッコマ/Lineマンガ連載中
争乱 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/32

2 争乱の幕あけ



「だから女を磨くことした」


「あっははは。王子、違うこと期待してんじゃないの??」


 放課後、貸切ったダンスルームで、子爵令嬢、もとい、マレの隣国キーランから送りこまれた暗殺者、今はバステト皇女の数少ない貴重な友人という座に収まったミケーネは、バステトとルークとのお昼のやり取りに大笑いをした。


「どういう意味だ?」


 ミケーネは、顔をしかめるバステトににやりとしてつづけた。


「男は、好きとか嫌いとかの前に、体が反応するものなの。」

「からだ?はんのう?」


「そっ。前に★◇□▲※のこと、教えてあげたでしょ?」


「ああ。恋愛的な気持ちが大きくなると、自然にしたくなるってミケーネが言った」


「そう、でもね、そういう気持ちが少しぐらい足りなくても、男ってのは、女がくっついてきて、煽られると我慢できなくなっちゃうの。」


「好きがたりなくてもできるのか?」


「そうよー。男ってのはそんな生き物だから。でも、子供ができれば結果は同じでしょ?」


「うむ、同じだ」


「王子もそれを知ってるから、そっちを期待してるかもしれないわねー。」


「なるほど……。女を磨いて好きになってもらって、自然にしたくなってもらうより、そっちの方が結果には早くたどり着く。ミケーネは賢いな。……で、煽るとはどうすればいいのだ?」


 ミケーネは、誘導にのって来たバステトにニヤニヤしてしまうのを隠せない。

間違ってはいけない。多少面白がってはいるが、これは親切だ。

 好きになってもらうって、あの駄々洩れ具合に今更何を言ってるんだか。

 それよりは、皇女に迫られた方が、あの王子も喜ぶだろう。

 繰り返すが、これは親切だ。

 その証拠に、周りの影たちもこの会話を止めもしない。

 


「そうねー。キスはする?」


「そのぐらいならする」


「じゃあ、キスの時に……舌をね……それから……」

ミケーネは、かなり具体的に卑猥な言葉を使ったつもりだった。

このかわいい皇女の顔を真っ赤にさせて恥ずかしがらせて反応を楽しむつもりだったのだ。


それなのに。


「ん?それって、飴玉をもらうのとどう違うのだ?」

「何言ってんの?」

「だって、ルークは、いつも飴玉をくれるときにそれをする。サクールの飴玉は空気に触れると溶けやすいから、そうするしかないんだって。口の中で包み紙を剥くんだけど、私がうまく剥けないから、いつもそうやって食べさせてくれる。」


「……っ」


 思わずこっちが照れてしまったではないか!

 何やってるんだあの王子。

 くやしい。色を扱う女暗殺者のプライドにかけて、男を手玉に取るもっとすごいやり方を伝授しなければ!

 しかし、ミケーネがさらに口を開きかけたとき、ミケーネの首元のチョーカーからびりっと刺激が走る。これは、警告だ。

 (ミケーネ。そこまでだ。)


 ミケーネは、首のチョーカーをいじりながら、すっと気持ち切り替える。



「皇女様、休憩は終わりです。ミケーネに、姫様の舞を伝授してくださいませ」 


 



-------------------------



 ミケーネは、マレの隣国キーランの生まれだ。

 物心ついたときには、親の記憶はなく、スラムでドブネズミのような生活を送っていた。

 両親か片親か、どちらかは外国の人間だったらしく、浅黒い肌の人々の中でミケーネの白い肌は目立った。

 自分の肌の色がよからぬ考えをもつ大人を引き寄せるのだと気づいたとき、ミケーネは、泥で肌を汚すことを覚えた。

 

 自分が賢しく、運動能力が高いのだということは、スラムで暮らすうちに気づいた。

 その能力を買われ、ある組織に拾われ、暗殺の技能を仕込まれる。


 そんななか、皇女の暗殺依頼。

 スラムで親代わりの子供たちを盾に、国外での仕事だが断れなかった。

 ケイリッヒ風の顔立ちが、今回の仕事にぴったりだったという。

 言葉は、覚えるのが得意なので、さして苦労をしなかった。


 病気でこられなくなったという子爵令嬢に成り代わり、学園に侵入するまではスムーズだったが、そこからは全くうまくいかなくなった。

 皇女に、手練れの護衛が何人もついていて、とても近づける状態ではなかったのだ。

 マレの護衛が張り付いているんだと思ってた。


 逆に王子ががらあき。

 それを上に伝えたら、ターゲットを切り替えるよう指示が入った。


 ミケーネは、キーラン出身で。この国については必要情報しか持っていない。

 当然、影の騎士の話も聞かされていなかった。

 さらに、末端のミケーネは、ケイリッヒやマレに混乱を招くのが目的ならそれもありだと思った程度で、命令の意味まで深く考えることはしない。


 そして、当然のごとく失敗した。


 王子の背後には影の騎士とかいうとんでもないのがいて、泳がされた挙句、あっという間に情報ルートどころか組織ごとつぶされてしまった。


 後で聞かされたところ、大陸の列強の裏社会では、ケイリッヒの影の騎士というのは、非常に有名らしく、王族に手を出そうなどと考えるバカはいないらしい。


 確実に失敗する、捕まるリスクのある命令が出された。王子の暗殺指令自体がすでにフェイクだったんだろう。今考えるとあの時は、指示系統が少しおかしかった気がする。その時には、すでに組織に何かされていたのかもしれない。




「さて、君にはいくつか選択肢がある」

 捕まったミケーネにあの王子が別人のように冷たい声で言った。


「このまま死ぬか、俺に死ぬまで飼われるか」


「色っぽい意味じゃあないんだよね、っぐっ」

 後ろの近衛兵に腕をねじ上げられた。


「一つ、条件がある。キーランに残してきた、私が面倒を見てるやつらがいる。そいつらに、定期的に援助をしたい。それをしてくれるなら、喜んで飼殺される。そいつらをおさえとけば、私は裏切らないよ。いい条件だろう?」


 ミケーネは、死を恐れてはいない。いつか自分がろくでもない死に方をするのはわかっていた。

 死ぬのは必然で、いつ死ぬかだけだ。

 だから、この条件さえ適えば、他はどうでもよかった。全部くれてやってもいい。


「ふーん」

 ルークは、ミケーネの覚悟を感じ取ったのか、調べろ、と背後に向かって小さくつぶやくと、ミケーネの首をねじ上げた。

 この男、遠慮がない。ミケーネは、痛みにたえて、口をつぐんだ。

 興味なさそうに手を離すと、そのまま無遠慮にミケーネの体をじろじろ見る。

 王子に取り押さえられる前に、服は乱れてあちこちあらわになっていた。


 ルークは、使えるかな、と小さくつぶやきながら、あごに手を当てた。


 やがて、何かを決めたのか、ミケーネを見下ろして、凄絶な笑みを浮かべる。


「いいだろう。隷属の首輪はつけてもらうけどね。

 君には、これからある役目を与える。

 それができたら、君の言う、キーランの関係者、僕がまとめて面倒見てあげるよ。

そのためにも、まずはバステトに舞を教わって。」


 「君の役目は、……」



 ミケーネは、目を見張り、覚悟を決めた。




 






-------------------------



 「殿下、王宮から早馬が……」

 夕方、王太子執務室分室が、にわかに騒がしくなる。

 執務室付きの数人の補佐官が、あわただしく動き回る。

 ルークの元に、王宮からの火急の使者が駆け込んできたのだ。


 ルークは、その文書を受け取ると、目を通し、握り締める。

 その表情にいつもの余裕はなく、焦燥が浮かんでいた。


 「っ、予定より早い」

 

 

-------------------------

 


その知らせはマレでのクーデター発生を告げるものだった。






 


ここまでご覧頂きありがとうございます。

なぜ、バステト皇女に向けられた暗殺者がルークを狙ったのか、の疑問に回答する回でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピッコマでの連載始まりました! Webからも無料で読めます。

いらっしゃいませ さようなら 旦那様

結婚がテーマのロマンスファンタジーです。

遺産相続の条件は、一年間の結婚生活。
けれど彼には、愛し合う恋人がいた──。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ