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ヲタッカーズ10 秋葉原クエイク

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!


聖都の危機にアキバのCharlie's angels

"ヲタッカーズ"が立ち上がる!

オトナのジュブナイル第10話です。


今回は"リアルの裂け目"が地下深くに発生、秋葉原限定の大震災が起こって、御成街道架道橋が崩落する大惨事にw


自らの存在意義に悩む"ヲタッカーズ"は初動が遅れ、さらに前回捕らえた原子炉怪人"リアクトラ"が脱獄して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 力の消えたヒロイン


「危ない!手を切るわょ」

「気をつけて!あぁ血が出てる」

「ミユリさんが…出血?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバの、とあるゲーセンの地下深くにあるアキバ防衛秘密組織"ジャドー"の司令部。


「"リアクトラ"との闘いで、ミユリさんの細胞から太陽エネルギーが失われ、私達人類と同じく環境の変化を受けやすくなったと思われます」

「ソレはどーゆーコト?ミユリさんも人類と同様に痛みや病気に苦しみ、死ぬコトもアルってコト?」

「YES。しかし、黄色い太陽光線からエネルギーが得られたら場合、パワーは復活すると考えられます」


黄色い太陽?二日酔いの翌日の?笑


"ジャドー"産業医の見解に、エリザ司令官は頭を抱える。

いや。彼女よりも深刻なのは、ミユリさん自身なんだけど。


「私のパワーが消えてしまったの?もしも、このママ回復しなかったらどーしたら良いの?」

「心配しないで。必ず回復スル。ソレまで信頼出来る人の近くに…そうょ。テリィたんに近くにいてもらえば良いわ」

「でも、テリィ様は海外出張中で。サラリーマンなので…」


海外?いや。正確には衛星軌道だけど…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


はっくしょん!


「ミユリ姉様!どーしたの?」

「ソレがメトロ(銀座線)で鼻水たらしてた子がいて…」

「姉様が地下鉄通勤でコロナもらった?」


違うょw


ココは、チリドッグが美味い僕達のアキバのアドレス(溜まり場)"マチガイダサンドウィッチズ"。

ランチタイムを外し、色とりどりのメイド服を着た女子がキャピキャピと井戸端会議中。


「実は…パワーが消えたの」

「ええっ?いつから?」

「どーも"リアクトラ"のせいらしくて」


"ヲタッカーズ"の妖精のエアリ、ロケット兵のマタハだが、ふたりとも昼間はメイド。

それぞれの御屋敷でメイド長をやってる。もちろん、ミユリさんも老舗バーのメイド長。


"リアルの裂け目"が閉じてる昼間限定だけど。


「実は、私もパワーが消えたコトがあったわ。気は滅入るけど、二本足(じんるい)の感覚を理解スルには良い機会カモょ?」

「まぁ。エアリは地球が冷え固まって以来ズッと生きてる妖精さんだモノね。で、どの位でパワーが回復したの?貴女の場合」

「直ぐょ。10世紀ぐらい?」


ガックリと頭を垂れるミユリさん。

ガックリついでにまたクシャミが…


はっくしょん!


「誰!クシャミしたのは?ミクロの殺し屋をばらまいたのは誰?あぁ速攻で喉が腫れてきた気がするわ!」

「ご、ごめんなさい。つい…」

「ミユリさん?貴女なの?健康だけが取り柄だと思ってたのに!」


それだけかw


運悪く?マチガイダに入って来たのはスマホTV局"ワラッタ"プロデューサーのサリア。

"ワラッタ"をワールドワイドメディアに育てメディア女王として君臨スル野望を持つ。


「あのね!私がコロナになれば、仕事に支障が出て、会社の株価が下がり、大勢が失業、景気も後退し、大統領も変わる。ミユリさん!貴女、世界同時金融恐慌を引き起こす気なの?」

「か、帰ります…」

「店の中で息を吐かないで」←


第2章 秋葉原クエイク!


ミユリさんのパワーを奪った"リアクトラ"は、アラビアンでエキゾチックな怪人女子。

半島がイランに密輸した日本製の高濃度フッ化水素使用中の核事故の影響で怪人となるw


日本に逆恨みしアキバに来たがミユリさんの返り討ちに逢い、今は"ジャドー"の囚人。

"ジャドー"司令部の捕虜収容エリアの独房に監禁され今日はエリザ司令官の巡廻日だ。


「大人しくしてるようね。その調子で礼儀をわきまえてね。日本は礼儀作法にウルサい国だから」

「ソレ、もう10回以上聞いたから。聞き飽きてヘドが出そうょ」

「あら?サイキックパワー?私の心を操ろうとしても無駄ょ。この独房には、神経シールドが張られてる。貴女のアラビアンナイトなパワーは無効ょ」

「卑怯者!シールドを解除して!アンタのホントの姿を暴いてやる。そして、アンタの愛する者達を皆殺しにしてやるわ!」

「…もう死んでるし。さ、清掃班!独房の定期清掃をお願い」

「分りました。エリザ司令官」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。秋葉原駅電気街口前の広場。

通称"アキバのタイムズスクエア"。


「あっ!ミユリ姉様!」

「あら、カリナちゃん。何処へ行くの?」

「ソレが…今の彼氏と、いょいょ一緒に住むコトになっちゃって。マンションを見に逝くのん。きゃ!」


ウキウキモードのカリナさんは、ミユリさんの後輩で"シュガースター"のメイド長だ。


「まあ。ソレは良かったわね…はっくしょん!」

「あら、ミユリ姉様。まさか、コロナ?」

「やめてょ」

「姉様は、健康だけが取り柄だと思ってたのに」←

「カリナちゃんまで?とにかく!今の私は、鋼鉄じゃなくて砂壁の女」

「直ぐに治りますょ。今は、自分の時間を楽しめば?テリィたんも、今週はアキバにいらっしゃらないのでしょ?」

「そうなの…丸1日、のんびりしよっかな」


その瞬間…


地震?いや、そんな生やさしいモノではなく大地に立つ者全てを薙ぎ倒すような大地震!


「キャー!架道橋がっ!」


中央通り10車線を跨ぐ御成街道架道橋が崩れ落ち、火山噴火のように粉塵を撒き散らす!

車が何台も瓦礫の下敷きになり絶叫と悲鳴が交錯、さらにソコへ車が突っ込み火の手が…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方"ジャドー"では、清掃班が独房のエアロックを起動した瞬間に停電し真っ暗に!

直ちに非常電源に切り替わって、照明は復旧スルが"リアクトラ"の姿が消えているw


「囚人は?」

「逃亡した!基地を封鎖しろ!」

「システムを再起動だ!大至急!」


緊急時用の"B号プッシュ"が押される。


「衛星軌道上のコンピュータ衛星"シドレ"より"ジャドー"全ステーション。秋葉原地区に震災発生。震源は秋葉原駅地下900m。同時に"リアルの裂け目"発生を確認。地中における裂け目発生に伴う時空震が誘発した大地震と思われる。被害は甚大ながら秋葉原地区に限定。推定マグネチュード10.1。繰り返す…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


大惨事だ。


さすがに、高層ビル群で倒壊したモノはナイが、明らかに傾いてるビルが…黒煙が昇るw


「大丈夫?カリナちゃん、ケガは?」

「私は大丈夫です。姉様こそ?あ、腕が…」

「痛いっ!」

「姉様。コレ、折れてますょ。でも、大丈夫です。とりあえず、固定して病院へ」


意味もなく秋葉原駅へと避難する人々の波に抗いながらフラフラ歩く。

遠く高層ビル群は粉塵に霞み黒煙を噴き上げている。阿鼻叫喚の地獄。


「なんてコト?パワーさえ戻れば!」


エリザ司令官から電話。


「ミユリさん、大丈夫?」

「はい。でも、腕が折れて…骨折ってこんなに痛いのね。そっちの状況は?」

「基地を封鎖中。安全確保のための通常手順だけど…ミユリさんこそ気をつけて。パワーが戻ったら連絡してね」

「ソレまでは連絡するなってコト?」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、スマホTV局"ワラッタ"本社。

サリアが集まった社員に檄を飛ばス!


「みんな、大丈夫?怪我した人はいない?大丈夫?良かった。人は緊急時に大切なモノがわかるの。家族の下に帰りたい人は、どうぞ帰りなさい」


何人か帰ったが、何とサリアは全員の後姿をスマホで撮影し閻魔帳に記録している。

ソレを見た他の社員は、怖くなってヒソヒソと話し合い互いに牽制し誰も帰らないw


「みんな、残ってくれるのね!ありがと!さぁ先ず放送機能を復旧させて。アキバのヲタク達は怯えてるわ。情報を伝えないと!」

「ですが、4時間ほどかかります」

「ダメょ。頭を働かせて。30分後にオンエアよっ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ジャドー"司令部。


「…"リアクトラ"は、ウチの囚人の中で最も凶暴な犯罪者です。圧倒的なサイキックパワーで人の心を読んで操る。切り札は…」

「もう良いわ。最優先は、考えを読まれないコトょ」

「コレが技術部が開発した"神経防御ヘルメット"です。"リアクトラ"の独房に使った神経シールドと同じ原理です」

「レルズ中尉、装着して。さぁ"リアクトラ"を狩りに行くわょ!レッツゴー!」

「司令官!私達の方が実戦経験がアリます」

「だからこそ残って。司令部を守って欲しいの。信頼してるわ。お願いね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ワラッタ"の撮影スタジオ。


「ま、魔法なのっ?!スゴいわ。私が潔癖症じゃなかったらハグしてるわ!」

「いや。それホドでは…」

「で、貴方は誰なの?派遣の人?」

「社員です!貴女の向かいのデスクに座ってます。毎日貴女の前に座ってますよっ!」


彼が修理した大画面一杯に美女の顔。

やや?見覚えがアルな…ラズー博士?


「…助けが必要です。秋葉原は今、大変危険な状態。"ヲタッカーズ"は、この肝心な時に行方不明です。全く頼りになりません」


「嫌な発言ね。"ヲタッカーズ"は、アテにならないだなんて」

「しかし、大した女だわ。地震を使って会社の宣伝をしてる」

「しかも、スーパーヒロインには手厳しい」

「でも、自社の株価を上げるために"ヲタッカーズ"を叩く姿勢は看過出来ないわ。ウィト!」

「誰のコトだょwはい、何でしょう?」

「貴方、派遣社員を卒業して私の役に立ちたいのなら放送設備も直して頂戴。直ちにラズー博士への反論を発信するわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ジャドー"司令部。


「私と中尉が30分経って戻らなければ救助隊を出して。セクター12に接近。司令部、応答せよ」

「映像も熱センサーも反応ありません」

「電波障害が発生中。回路の故障かしら?入るわょ…あ、また停電!」

「司令官、何処です?映像が途切れました!生体反応も1人だけです」

「司令官は?」

「姿がない。反応も消えた」

「脱獄囚を発見!」

「どういうコトだ?"リアクトラ"が何人もいるぞ!」


乱射する銃声。悲鳴。

唐突に静寂が訪れる。


「1名ダウン!」

「生体反応…消えました」

「司令官に何が?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


黒煙がたなびく高層ビル群。

その麓で救援活動が始まる。


ボランティアによる救援物資配りだ。

テントの前の陣頭指揮はラズー博士。


「アキバのメイドでミユリと申します。博士の救援活動は素晴らしいですね。でもテレビでの発言は少し…意外でした」

「そう?でも、本心ょ?」

「今、アキバのヲタクは、明るいメッセージを求めています。"ヲタッカーズ"なら希望が持てる言葉を語るハズだわ」

「あら?"ワラッタ"の受け売り?貴女は"ヲタッカーズ"の広報なの?彼女で儲ける手合いなのね?」

「そーゆー博士は?」

「ヲタク連中に、頼れるのは私達人類だけと教えたい。"ヲタッカーズ"は、ソレを邪魔してる。ヲタクが自分で解決する力を奪ってるの。行き過ぎたコロナの給付金みたいなモノね」

「貴女、結構歪んでるわね」

「真実よっ!それに今"ヲタッカーズ"は大変なの」

「どうして?」

「リーダーの"ムーンライトセレナーダー"がパワーを失ったの。だから現れない。この前の闘いで、彼女のパワー充電機能が壊れたみたい。"ムーンライトセレナーダー"はバッテリー切れよっ!」

「憶測だわ!」

「お仲間の妖精さんもロケット兵士も眠れば回復スルわ。でも、ムーンライトセレナーダーは、このママ一生元に戻ら無い。つまり、役には立たないの」


ソコへ少女が駆け込んで来る。


「助けて。パパが突然倒れた!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方"ジャドー"司令部では"リアクトラ"を狩りに逝った司令官を心配スル声が上がる。


「でも、司令官は司令部を出るなと命令されたぞ」

「その司令官の命がかかってる。探しに行こう。但し、警報解除になるまで、このドアは2度と開けるな。行くぞ。3、2…」


ドアが開けたら…エリザが立ってるw


「銃を下ろして」

「司令官、何があったのですか?」

「奴に電波ジャックされたの。"リアクトラ"の仕業ょ。レルズ中尉は死んだわ」

「私達も行きます」

「ダメょ。"神経防御ヘルメット"が失われた。中尉の分は破壊されたわ。私の指示に従って。状況は悪化してる。"リアクトラ"はレルズ中尉の頭の中をサイキックスキャンしたわ」

「というコトは、保安情報にアクセスし、独房を開けられる。他の囚人のシールドを解除スル気ですね?」

「私は、独房を守る。みんなは司令部を守って。みんな、私を信じて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


少女に連れて来られたのは、地下アイドル通り裏の、古い雑居ビルが林立するエリアだ。

一見何とも無さそうだが、良く見ると、どのビルにもペシャンコに潰れている階がアル。


中にいた人は恐らく…


ラズー博士が瓦礫の中に横たわる中年男性に駆け寄り先ず脈をとり診察風の動作をスル。


「緊張性気胸だわ」

「わかるの?」

「医学部も卒業してるから」←

神田消防(アキバファイア)の救急車は呼んだの?」

「この災害時に来るハズ無いでしょ」

「前に"ヲタッカーズ"が病人を運ぶのをニュースで見たわ」

「今は期待スルだけ無駄ょ。静脈性出血。血管が傷ついてる」

「何処を止血すれば良いの?」

「特定するのは不可能。レントゲンが必要ょ」

「お願い!パパを助けて!」

「胸腔内に血が。このままだと自分の血で溺れてしまう」

「何とか助けてよっ!」

「お願い。パワーょ復活して。私にパワーを」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ジャドー司令部"では、司令官を独房へと送り出した後で、またしても不安が高まる。


「このママでは"リアクトラ"に襲撃されるぞ」

「司令官が何とかしてくれる」

「司令官に頼るのが得策とも思えない」

「どーゆー意味だ?」

「前に作戦が失敗した時も司令官だけが生き残った。司令官に不審な点が多いのも確かだ」

「で、どうする?既に、命を守るための神経防御ヘルメットは失われてルンだ」

「諦めるのか?ソレでも"ジャドー"メンバーか?」


副官のカイラ大佐が立ち上がる。


「誰が諦めるの?さぁ行くわょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方"ワラッタ"。

一斉放送の準備中。


「ほらほら。少し褒められたからって、ズに乗らないで。早く接続して」

「僕は、IT担当ナンだ。ケーブルの接続なんて高校の視聴覚教室でやって以来だょ」

「私だって生中継で喋るのは、人気トークショーの打ち切りを宣言した時以来ょ」

「あ!壊しちゃった!すみません。こりゃ上手く行きませんょ」

「ホントは、即クビにしたいけど、今は人手不足よ。だから、とりあえず貴方のヤル気を引き出すコトにするわ」

「え?そりゃありがたい。でも、どーやって?」

「私も貴方と同じだった。この地位を築く前の話ょ。当時の肩書は、有名メディア評論家でスター編集者だった」

「僕と何処が同じだょ?」

「だから!そうなる前の私ょ。熱い記者魂を持て余すだけの女子だった。今だって、報道されてない生の情報を伝えたいと思ってる。ラズー博士は陰気くさい話ばかりで、気が滅入るわ」

「でも、肝心の"ヲタッカーズ"は影も形もないのですょ?」

「私がいるでしょ?記者魂を持て余す部下に手伝わせ、必ずやアキバのヲタクを元気づけてみせるわ!」

「あ、画像が映りました」

「あら。ウィク、そういうコトなのょ。ちっぽけな存在でいるコトに慣れ切った一般人(パンピー)でも、非常時に思わぬ馬鹿力を発揮する。貴方は今からヒーローょ。私のメイクが出来る人を探して。大急ぎ!」

「はい!了解です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


結局、少女のパパは成すすべもなく、未だに瓦礫の下だ。

もはや意識のない父親の横で座り込むミユリさんに電話。


ソコへ衛星軌道からの宇宙コール←


「あ、テリィ様。私、全ての命を救うコトは出来なかった」

「でも、力を尽くしてる」

一般人(パンピー)としては、です。スーパーヒロインなら、もっと救える命があったのに…この何週間かは最高でした。アキバを助けたいと逝う思いが、やっと叶った。でも、今は全部取り上げられた気分です」

「今、僕に逝えるコトは、ミユリさんは何も変わっていナイってコトだ。例え、パワーがなくても」

「何もかもが変わりました。全然ダメなのです。絶望的な気分」

「その気持ちは…」

「テリィ様のおっしゃる通り、パワーが戻らなければヒロインにはなれナイ。全員の命も救えない」

「ヒロインでも救えない命はアル。だけど、ヒロインは決して諦めナイ」


その時、悲嘆に暮れるミユリさんの眼前で、強盗と化した腐女子がコンビニを襲撃スル。


「ん?ミユリさん、どーしたの?」

「私も諦めません!あの腐女子を止めなきゃ!」

「待ってょ!銃で撃たれるちゃうょ!」

「でも、ほっとけないわ」

「無茶はヤメて」

「行きます」

「アムロかょw今のミユリさんは、銃弾を跳ね返せないンだぞ!」

「そーとはバレないし」

「ミユリさん!」


第3章 勇者達のアキバ


"ジャドー"司令部の真っ暗な通路を短機関銃を構えたカイラ大佐が慎重に進んで逝く。


「クリア。レルズ中尉の死体だ…ん?神経防御ヘルメットは作動してる?」

「司令官は壊れたと」

「ウソだわ。見て」

「確かに作動してる。嫌な予感がします」

「同感ね。軍曹、貴方がヘルメットをかぶって…軍曹!どーしたの?」

「…奴が!奴が私の頭の中に入って来ました!ぐああ。じ、自信がありません。どれだけ抵抗出来るか。逃げて!早く…」


銃声。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、コンビニ強盗は…


「レジのお金を出して!」

「や、やめてくれ!命だけは…」

「だったら、お金を出して!撃たれたいの?だ、誰?貴女は…」

「おやめなさい。私を撃っても無駄ょ」

「な、何ょ?スーパーヒロインのコスプレイヤー?私に近寄るないで!」

「怖いんでしょ?わかるわ。みんなそうょ。自分や家族を救いたい。よく考えて。みんな同じ状況なのょ」

「ウ、ウルサイわねっ!黙ってお金を出して!撃つわよっ!」

「もうやめて。お願い、強盗さん。貴方を倒すのは簡単なの。でもね。ソンなコト、必要ナイわ」

「え?アンタ誰なの?いったい…」

「もうやめて。私は腐女子を信じてる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


全く同時刻。スマホTV局"ワラッタ"は放送設備を復旧、全アキバに向け放送再開スル。


「アキバ大地震(クエイク)の被災者のみなさん!"ワラッタ"のサリアです。我が社は、放送再開にこぎつけました…聞いて!大災害に襲われた時、私達はギスギスして攻撃的になったり、他人の恐怖につけ込むコトもアル。結局のトコロ、人間は自分勝手なの。でも、弱さを認め成長できるのも人間だけ。今こそアキバのヲタク1人1人がヒーローに、ヒロインになる時が来たわ!」


「たとえ"ヲタッカーズ"が姿を見せなくても、彼女達の精神を思い出して。ひたすら、人の良い面を見ようとする彼女達は、私達の良心を呼び覚ます存在ではなかったかしら?」


「"ヲタッカーズ"は、私達を信じてる。だから、私達も彼女達を信じましょう。本当に大変な時には、彼女達は必ず戻って来ると。それまでは、ヲタク同士で助け合うしかナイわ」


「"ワラッタ"は、アキバ大地震(クエイク)に被災した全てのヲタクに呼びかけます。勇気にまつわる話を募集するわ。貴方達1人1人がヒーローであり、ヒロインとなる物語を教えて。決して"ヲタッカーズ"みたいな英雄譚でなくて良いの。みんなが自分に出来るコトをやるべきだわ。ヲタクがヒーローやヒロインとなる物語を私に教えて!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


後に"ヲタクエイク宣言"と呼ばれる放送は強盗が進行中のコンビニにも流れる。

続々と詰め掛け放送に見入るヲタク達は、優しい気持ちになって強盗を取り巻く。


「僕も君と同じヲタクだ。さぁ銃を下ろしてヲタクにしか出来ないコトをやろう」

「貴女の気持ち、私もわかるわ。だって、私も腐ってるから」

「さぁ。正しい行いをスル時間。きっと貴女は、貴女がヒロインになれる道を選ぶハズ」


スマホの放列の中、拳銃を投げ捨てた腐女子が泣きながらミユリさんの胸へと飛び込む。

その彼女をシッカリ抱き締めるミユリさん。その画像はネットに載って世界へと流れる。


「秋葉原は蘇る。全ての祈りに愛と感謝を」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。


暗闇を短機関銃を構え進む大佐。

角で捕まり電気室に入れられる。


「(大佐を指差し)貴女、何してるのよっ?!」

「し、司令官?貴女を探しに」

「独りで?」

「軍曹が…」

「あぁ。だから、残れと言ったのに」

「なぜ神経防御ヘルメットが壊れたと嘘を?」

「貴女達に馬鹿な真似をさせないために決まってるじゃない!」


その時、カイラ大佐のスマホが鳴る。


「大佐、応答(カムイン)を」

「軍曹?生きてたの?状況は?」

「無事です。大佐はドチラですか?」

「もう死んだかと思ったわ」

「勝手に殺すなょ。じゃあな」


突然、口の利き方がゾンザイになった軍曹の振る舞いに、司令官と大佐は顔を見合わす。


「ヤメて。今のは軍曹じゃないわ。"リアクトラ"ね?」

「無駄な抵抗はヤメて降伏せょ。人類(二本足)ども」


画面の中で崩れ落ちる軍曹。

その背後に"リアクトラ"。


「我々は、囚人を解放し、ココから脱出する。お前ら人類(二本足)に勝ち目は無い。降伏せょ」

「カイラ大佐。ひとまず司令部まで後退スル」

「エリザ司令官。武器をお捨て下さい」

「大佐?」

今すぐ(ナウ)

「ナゼ?私は味方ょ?」

「ありえません。遺憾ながら身柄を拘束します」


司令官に手錠をはめ、近くのバーにつなぐ。


「"リアクトラ"に告ぐ。外への扉を開けたいのでしょ?囚人を解放する必要はナイわ。私がアクセスコードを知ってる。司令部に来て。私と…決着をつけましょう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


コンビニ強盗が落着し、とりあえずミユリさん達は、御屋敷に御帰宅スル。もう夕暮だ。


「ヒロインの初心に戻れた。空を飛ぶよりも気持ち良かったわ。飛行機を救った時や、ピザ店で強盗を退治してピザをもらった時より気持ち良かった」

「"ワラッタ"に続々寄せられてるヒーロー話や写メの中に、姉様のコンビニでの写メもありました。ナチュラルな、とても良い表情をされてます」

「ありがと、マタハ。最近の私って、常に無理してる感じだった。でも、この表情は違うね」

「本当に良い写真は、被写体への想いが溢れてる。だからだね(あ、コレ僕だょ電話会議アプリで衛星軌道から参戦w)。誰かを撮れば、その写真は永遠に残る。その瞬間の真実をカメラに収めれば、永遠に残り、メッセージを発し続ける。つまり…パワーがなくても誰もがヒロインだって」

「ホントに良い写真。無名のヒーローが撮った真実のヒロイン」

「"ジャドー"の分析によると、ミユリさんの太陽放射を代謝する比率は…ってコマい話はどーでも良いや。結論から逝うと、ミユリさんのパワーは戻るらしい。ミユリさんにアドレナリンが出るような刺激さえあればね。あれ?また揺れてる?大丈夫?」


余震か?


「みんな、大丈夫?」

「大丈夫ですぅ」

「余震じゃないわ。爆発?」

「誰か見て来て…あ、電話?」

「もしもし。中層階で火災発生?落ち着いて避難して。最上階の私達は自力で何とかします」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"ジャドー"司令部前の通路では、カイラ大佐が"リアクトラ"を狩る準備を進めてるw


「"リアクトラ"!司令官は拘束したわ。取引しましょう。姿を見せて」

「愚かな。ココにいる。貴様は、無様に死んだ部下より、少しはマトモな死に方が出来るカモ」

「死ぬのはアンタよっ!喰らえ!」


大佐が腰だめにした短機関銃を弾倉が空になるまで連射!だが効果なしw

さらに、大型手榴弾を投げ身を隠すや爆発…でも、コレまた効果がナイ←


すると"リアクトラ"の周囲を飛び交う原子が速度を上げ、核の火の玉発射の準備←

しかし、大佐は背中からショットガン、次に腰から拳銃を抜いて弾の続く限り連射!


「その程度の攻撃では私を倒せないわ」


"リアクトラ"が大佐を突き飛ばす!壁に叩きつけられ大佐は呆気なく失神←

さらにトドメを刺そうと近づく"リアクトラ"の顔面に拳骨大のロケット弾w


エリザ司令官?


通路の角で、エリザ司令官が使い捨ての対戦車ロケット砲(パンツァーファウスト)を構えている。

さらに、その横には何やら一心不乱に呪文を唱えるメイド服を着た妖精w


エアリだ!"ヲタッカーズ"の妖精担当w


にわかに、薄暗い通路の中に淡く光るピラミットのような図形が現れる。

光るピラミッド図形は、驚く"リアクトラ"を、その中へと閉じ込める。


「"ジャドー"の独房が修理されるまで、とりあえず、私の"結界"に閉じ込めておくわ」

「ありがと、エアリ!助かるわ」


そして、司令官は失神中のカイラ大佐を抱き起こし駄々っ子に逝い聞かせるように諭す。


「言ったでしょ?私は味方ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、御屋敷のある高層タワーでは、中層階で発生した火災から逃げ惑う人々がエレベーターに閉じ込められて大騒ぎになってるw


「問題発生よっ!ドアが開かないわっ!」

「私が逝きます」

「ミユリさん、どうやって?パワーの消えた電撃ガールの出番はナイだろ?」

「でも、誰かが逝かなきゃ。すぐ戻りますから。約束します。逝くと伝えて。今、助けるから」


衛星軌道からではミユリさんを制止するコトも出来ないw

彼女はシャフトからワイヤを伝いエレベーターへ降りる←


さらにドアをこじ開けて人々を救助!


「大丈夫?気をつけて。まだ誰か残ってる?貴方で最後?」


ところが、その最中にワイヤが焼き切れミユリさんを乗せたままエレベーターが落ちるw


「ミユリ姉様ーっ!」


絶叫虚しくシャフトの底へと落ちて逝くエレベーターは、地階の床に激突して四散スル…

激突の大音響に絶叫が交錯し、舞い上がる粉塵のその中から…何かが飛び出して来る!


ロケット兵装備のマタハw

そして、マタハの腕には…


ミユリさんだ!しかも、ムーンライトセレナーダーに変身してる。パワーが戻ったのか?


「遅くなってスミマセン、姉様」

「あぁ…てっきり死んだかと思ったわ」←

「アキバでヲタクが待ってる。逝け!"ムーンライトセレナーダー"」


ロケット兵装備で空を飛ぶマタハに抱かれた"ムーンライトセレナーダー"が大活躍!

高速道路から落ちかけたスクールバスを救いビル火災を吹き消して電撃で停電を復旧w


アキバ復興に励むヲタク達の頭上を飛んで、彼等の拍手と歓声に応えるミユリとマタハ。


「アキバに"ヲタッカーズ"戻る」

「彼女に続け!アキバ復興!」

「ありがと"ヲタッカーズ"!」


"ワラッタ"のヘッドラインが熱い。


第4章 エリザ司令官の正体


その頃、無事"リアクトラ"を神経シールド付き独房に押し込めた"ジャドー"司令部。


「エリザ司令官。"リアクトラ"が"お前の真の姿"とか何とか…」

「カイラ大佐。貴女に話してなかったコトがある。私は…作戦中に戦死したエリザの偽者なの」

「ええっ?!」

「その時"ジャドー"は"リアルの裂け目"から逃走して来た、ある異次元人を追っていた。しかし、後に明らかになったけど、その異次元人は囚人ではなく、無実の者だった。その異次元人が半島に潜伏しているコトを突き止めた"ジャドー"は、特殊部隊を送り、異次元人を抹殺するコトにした」

「"ジャドー"って、異次元人の抹殺部隊だったのですか?」

「大佐、その質問には答えられない。でも、エリザは異次元人が無実だと知っていた。つまり、彼女と同じ次元難民だったの。消滅したマルチバース宇宙の生き残り。エリザは、任務の中止を訴えたが、その異次元人が捕らえられた時に最大の犠牲を払うコトになった。つまり…自らの命を差し出し、異次元人を救ったの。彼女は…真のヒロインだったわ」

「まさか、その異次元人が司令官ですか?」

「その通り」

「どうやって司令官に?」

「私は、変身出来るシェイプシフターなの。"ジャドー"設立のため、エリザになりすました。そして、ミユリさんの御父君と約束を交わしたの。この星で、お嬢さんの面倒を見ると」

「司令官でナイなら貴女は誰?」

「私は、崩壊したマルチバース宇宙の唯一の生き残り。そして、古代火星王朝の末裔にして最後の1人」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"アキバ大地震"を契機に、ワールドワイドメディアへの道を歩み始めた"ワラッタ"。

真夜中も決して眠るコトの無いオフィスの窓の外に"ヲタッカーズ"が現れ騒然となる。


妖精エアリとロケット兵装備のマタハに両脇から支えられたムーンライトセレナーダー。


実は、ミユリさんナンだけどねw


「サリアCEO。素晴らしい演説だったそうね」

「お褒めの言葉、光栄ょ。でもね!"ヲタッカーズ"は何処にいたのょ?アキバ大地震(クエイク)の時に知らん顔だなんて」

「怖がらせてごめんなさい」

「私じゃナイわ。アキバのヲタクを怖がらせたの。彼等は、直ぐに社会から見捨てられたと感じる。覚えておいて。ヲタクに限らズ、人類(パンピー)は、人生の大半を孤独に過ごすの。だから、悲劇に襲われると、必ず癒しと安定を求める生き物なのょ」

「今回は、サリアさんがアキバのヲタクに希望を与えてくれた。彼等のみならズ、私達も励まされたわ」


すると、サリアはミユリさんにだけ聞こえるように小声となり、こう逝ったとのコトだw


「全くもう。世話が焼けるヒロインなんだから。次からはチャンとテリィたんに励ましてもらうのょ」



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"大地震"を軸に、ワールドワイドメディアを目指すCEO、スーパーヒロインに批判的なスタートアップ、秘密防衛組織のトップに登り詰めたシェイプシフター、前回捕まったが大地震で脱獄した原子炉怪人などが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ第3波渦中の本気の3週間に揺れる秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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