3話 お久しぶりです
皆さん、お久しぶりです。亜弥斗です。
300年くらいたちました。僕ももうとっくにお爺さんです。
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300年間、特に変化のない日々を送ってきた。仕事は最低限やって、後はひたすら寝ていた。
死なない老いないなんておかしいから、定期的に村を移動しないといけないのが面倒くさかったけど、それ以外は寝てればいいから楽だった。
でも、最近面倒くさいことが起こっている。
それは、村、というか、国どうしの争いだ。
稲作が伝わってきたばかりの頃は良かった。ただ米を作ってるだけだった。不作の年もあったし、小さなケンカもあったけど、未来よりずっと平和で穏やかだから、寝やすかった。
でも、その内用水とか食料をめぐって村と村で争い始めた。
用水は確かに稲作において必要で、食料も生きていくうえで大切。でも、だからって争って奪い合うなんて、なんて面倒くさいことを。
その時僕たちの暮らしてた村は能天気な人たちが多くて、他の村との争いにすぐに負けた。そして、その村の一部になった。
それから、勝ったり、負けたりしてたら、いつの間にか1つの国になってた。そんなことがいろんな所であって、いつの間にか日本列島には100以上の国ができてた。
今は、豪族って奴が僕らたちを支配してる。
豪族は本当に面倒くさい。前みたいに程よく休めない。寝てばっかりの生活も出来ない。
豪族は本当に面倒くさい。
しかも、まだ国どうしで争っている。本当に面倒くさい。争いも、それを率いてる豪族も。僕は今すぐ寝たいよ。
そんな風に思っていた頃、父さんが珍しく素晴らしい事を言った。
「最近いろいろ面倒だし、しばらくは森の奥で家族だけで暮らそっか!」
今でも、父さんの性格は前世とほとんど変わりがない。ただ、1つだけ大きく変わった部分がある。それは、人間への情だ。父さんはそれが無くなっていた。
永い時を生きていれば、嫌でも自分が人間ではないことを自覚する。それに、能力の違いによる考え方の違い。吸血鬼からすると、人間の弱さは酷く哀れに見える。また、何回も移動し別れを繰り返していれば、情を持つことが無意味に思えてくる。
そうして、だんだんと情がなくなっていく。まだ転生したばかりだった頃は、見たことのない父さんの姿に驚いた。今では僕も情が無くなってきているけど……。
だから今回も、命懸けで争っている共に暮らした人たちを見捨て、国を出ていった。
これで今日から、森に引きこもって眠りまくることができる。幸せな日々が始まりそうだ。