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吸血鬼一族の歴史旅行  作者: 如月麗羅
縄文時代
6/15

5話 大号泣

それから、千文ちゃんは屈葬(くっそう)された。


体育座りのような姿勢で、土のなかに埋められていくのを、ぼんやりと見つめていた。


屈葬は、死者の霊の災いを防ぐためだって。

千文ちゃんの災いって、なんだよ。千文ちゃんがそんなことするわけないじゃないかっ。

霊だろうが、なんだって良い。もう一度、千文ちゃんに会いたい。災いが本当にあるなら、俺を千文ちゃんの所へ連れて行ってよ。




いつの間にか真夜中になっていた。


「千文ちゃん……千文ちゃん……」


呟きながら、家を出て、千文ちゃんの所へ歩いていく。


「千文ちゃん……千文ちゃん……」


千文ちゃんの姿を見たくて、土をどかそうとした。土に手を突っ込み、少し力をいれただけで、何故か土が吹き飛んだ。吸血鬼パワーかな。そしてそこには、土で汚れてしまっている千文ちゃんが……


「千文ちゃん……千文ちゃん……」


穴に飛び込み、千文ちゃんに抱きついた。

その時、千文ちゃんの青白い首筋が見えた。


―噛みたい 吸いたい


そんな欲求がわき上がった。


『吸血欲求はね、愛情とつながってるんだよ』


そんな父さんの言葉を思い出した。


けれど、その意味を深く考えられる程の理性は残っていなかった。


「っ」


噛みついた。


血を大量に流して死んでしまった千文ちゃん。血は吸えなかった。

それでも、何かを求めるように噛みつき続けた。


「!」


目を見開いた。口内に、血が流れ込んできたのだ。

驚きはしたが、その甘い液体に、理性が消え去った。


千文ちゃん……千文ちゃん……


脳内で呟きながら、血を吸っていく。


「……ん」

「!!」


千文ちゃんの、声が聞こえた。


今度こそ驚き、口を話す。


千文ちゃんの顔が、赤みを取り戻していた。


「なっ」


どういうことだ。なんで…… 何が……


呆然と、千文ちゃんを見つめる。



「わぁ、お前すごいことしたねぇ」

「…っ父さん!」


頭上から、父さんの声が聞こえる。

そして父さんは、千文ちゃんを優しく抱え、俺の首根っこを掴み、超高速で家へと戻っていった。



「と、父さん!これは、どういうことなんだ!?」


家に入った瞬間、父さんに詰め寄った。


「死んで24時間以内に吸血すると、生き返るんだよねぇ」

「は!?」


父さんは、心底面倒くさそうに、衝撃の言葉を放った。


「まぁ、強い吸血欲求、つまり、大きな愛情をもって吸わないといけない、っていう条件はあるんだけど」

「えぇ!?聞いてないんだけど!」

「だってまさか、お前たちがそんなに拗れて死ぬなんて、全く考えてなかったからさぁ」


俺がすごい形相で叫び詰めよっているのに、父さんは面倒くさそうな態度を崩さない。


「それで、生き返ったら吸血鬼になるように念じて吸ってなくても、吸血鬼になるんだよねぇ」

「は!?そ、そそそそそれじゃ、お、俺は、千文ちゃんを同意なしに吸血鬼にしちゃったってこと!?」

「良いじゃん。あの子なら喜ぶでしょ」

「そんな訳ないじゃん!あー、絶対嫌われるぅー!」

「あんな避けてた癖に今さら?」

「ぐっ」


ほんとにこの父さん(イケメン)辛辣だな!


「で、お前には語彙力ないからあの子への説明は僕がするけど、これからのことはちゃんと自分たちで話しあってねー。吸血鬼にした責任はとらないと」

父さんがニヤリと小悪魔みたいな笑顔を浮かべた。やめろ。悔しいことに似合ってるけど、息子に見せる顔ではない。って、違う。父さんの顔のせいで思考がそれた。

「そっ、そうだよな!責任とらないと!せっ、切腹とかしなきゃいけないのかな!?」

「……はあぁ」

何故か父さんにこれ見よがしに大きなため息を吐かれた。ムカつくなぁ。


「二人共、千文ちゃんが起きたわよ」

「……わ、たし………?」


千文ちゃんを見ていた母さんが、こちらに視線を向けながら言った。

俺は、勢いよく千文ちゃんの方を見た。

そして、土下座をした。


「千文ちゃん!申し訳ございませんでしたぁーーー!」

「え?」


俺の突然の謝罪に、千文ちゃんはきょとんとした声を出した。



◇◇◇◇



あれから、10年くらい経った。

千文ちゃんが生き返ったなんて言えないので、俺たちは今、森の中で俺と千文ちゃん、父さんと母さんの4人で暮らしている。

あの後、呆然とするする千文ちゃんに父さんが相変わらずマイペースに、面倒くさそうに説明をした。

吸血鬼のこと、転生のこと、俺が千文ちゃんを吸血鬼にし、生き返らせてしまったこと、そんなことを話した。

俺は、千文ちゃんに怒られるとか、泣かれるとか、そんなことを想像していた。

でも、千文ちゃんの反応は180度違った。


「あの、私まだ全部は理解できてないけど、吸血鬼になれて、嬉しい!」

「へ?」

「わっ、私……ずっとずっと、文哉君のことが好きだったの!………っ……あのっ、私を生き返らせることができたってことは、、そのっ………文哉、君、も……私の、ことを」

「ぢぶみじゃんーー!」

「え」

「お、おでもぉ、千文ぢゃんが、だいずぎだよぉーー!」

「ふっ、文哉君っ!ぐすっ。嬉しい、ありがとう」


千文ちゃんの告白に、俺は大号泣して抱きついた。

そんな俺を千文ちゃんは相変わらずの包容力で受け止め、涙ぐみながらも微笑んでくれた。


「うわぁ。最後まで締まりのない奴だなぁ」


そんな父さんの声は聞こえない!聞こえないったら聞こえない!


縄文時代終わりです

次、弥生時代です

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