3話 千文ちゃんと秋と冬
それから、うーん、何年経ったかな
ほら、縄文時代だし、当たり前だけど時計とかカレンダーとかないじゃん?春夏秋冬で1年経ったっていうのは分かるから、7才までは頑張って数えてきたんだけどねぇ。めんどくさくなっちゃいました!
そんな俺、文哉の、秋
久しぶりにスマホを手に取った。昔はいじりまくってたのに、縄文時代の生活が思ったより楽しくて、充実してて、ずっと触ってなかった。
そんなスマホで、写真をとる。
画面を見れば、そこにいるのは超絶イケメン、俺!って、そういうのじゃなくて、そこにいるのは、中学生くらいの男の子。
つまり俺は今、う~ん、、14才くらいってことで!決定!
ゆる~くいこうぜ、ゆる~く。
今日も俺は、キノコとか、ドングリとかの、秋の食べ物を採りにいく。
もっちろん、千文ちゃんと一緒にだ。
え?千文ちゃんとの関係がどうなったかだって?
え~?
それ聞く~?
聞いちゃう~?
えっとね~、俺と、千文ちゃんはね~、千文、ちゃんはねー、千文、ちゃんは………
そうだよ!お察しの通りですよ!
俺達の関係はなっんの変化もない!
くっ。
いくら外見が良くたって、しょせん中身は彼女いない歴=年齢以上の男だよ。正確な年齢は分かんないけどね!
いいし!別に今のままでも十分幸せ、、幸せ、、、しあわせ……た、確かに幸せではあるけど、やっぱり千文ちゃんと付き合いたいよ~!そーしそーあいになりたいよ~!
千文ちゃん、いつまで経っても俺を子供扱いなんだ!確かに、千文ちゃんの溢れ出る包容力に、いつもついつい甘えちゃうけどさ、それでも、それでも俺だって男なんだ!千文ちゃんとどうにかいい感じになりたいよ~~!
秋の食べ物たちを採った後、俺たちは村に戻ってきた。
今は、俺たちが採った食べ物を煮てます!縄文土器で、煮てます!
そう、縄文土器、縄文土器だよ~!
縄文時代っていえばやっぱ縄文土器だよね!!というか俺、縄文土器以外知らない。他になんかあるかな?
う~ん、、、あっ、貝塚、とか?
ま、それはおいといて。
見ろ!皆の衆!!
これが、俺と千文ちゃんの、愛の結晶だあぁぁーー!(←違う)
千文ちゃんの作った縄文土器で、俺の採ったドングリを煮たやつだ!
あー、うまいよー!
今はまだ、そう、まだっ、相思相愛じゃないけど、いつか絶対に好きになってもらって、この美味しい料理を毎日食べるんだーー!
◇◇◇◇
それから、また何年か経った。
今の俺は、高校生くらいだ。
みんな聞いてくれ、今冬なんだけど、めっちゃ寒い!
未来と違って温暖化進んでないから、めっちゃ寒いんだ。
けど、服とか家は意外と暖かい。火は必須だな!消えると地獄だ。
けどけど、雪が毎年降って、いつも雪だるま作ってる。それがすっごく楽しい!みんなに“なにこれー”って言われるけどね……。そうだよな。雪だるま知らない縄文人にとっては雪だるまなんてただの丸い雪2つだよな……。
でも毎年、千文ちゃんだけは一緒に雪だるまを作ってくれるんだ!やっぱ千文ちゃんは優しいよなー。
と、そんなことを考えながら、現在俺は狩りをしてる。
吸血鬼って、ほんとに運動神経が良いんだよなぁ。すっかり慣れた狩りだから、違うことを考えながら出来ちゃう!普通は、獲物に集中し続けなきゃいけないんだけどね。やっぱ吸血鬼って楽だぁ。
へいへいイノシシさ~ん!あなたの命、美味しく食べさせていただきます!
ねぇねぇ知ってる!?マンモスって、縄文時代にはいないんだって、俺、縄文時代といえばマンモスだと思ってた。マンモスは、旧石器時代なんだって。縄文時代はイノシシとからしいよ。
そうして獲物を持って帰ってくれば、大好きな千文ちゃんが笑顔で待っていて、俺を褒めてくれる。
それがいつもすごく嬉しくて、最高の幸せ。
これから、何年経っても、いくつになっても、この生活が続いていくんだろうと。例え、千文ちゃんとの関係が変わっても、変わらなくても、こんな幸せな場面が、何回も訪れる。共に少しずつ成長しながら。
バカな俺は、そんな呑気なことを考えていた。
自分が吸血鬼である。それの意味を、理解せずに。