表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/89

末っ子の王子

朝から花束を持ったデイルが訪ねてきた。

「ミユウ、朝食の誘いに来た」

ニッコリと笑みを浮かべ、美優に花束を渡す。


「ありがとうございます。お花を貰うなんてうれしいです」

イケメンの年下の王子に花を貰ったら、誰だって頬を染めるだろう。

朝起きたら、王太子とルティンからの花束が届いていたが、直接手渡されると、嬉しいのと恥ずかしいのとで美優は頬を真っ赤に染める。


食堂に行くと、大きなテーブルに、デイルと美優の二人だけだ。

「他の方は?」

美優は朝から、王家の食堂と緊張していただけに、他の人がいなくて少しほっとしていた。


「王も王太子もすでに執務に入っている。ルティン兄上は魔獣討伐で留守にしていたので軍に行っている。王妃殿下は昨夜も夜会だったので、起きられるのは昼前だろう。いつものことだよ」

優雅な手つきで食事をすすめるデイル。

「お花のお礼を言いたかったのですが、今度にします」

「え?」

デイルが、嘘だろう、とばかりに美優を見る。


「なにか?」

美優もデイルが笑みを崩したのに気が付いた。

「もしかして、可哀そうとか、寂しいわねとか、言われると思いました?」

美優の言葉は図星だったらしく、デイルの手がピクンと動く。

それでご夫人やご令嬢の関心を引いていたのだろう。

「18歳でしょ? しかも侍従が身の回りの世話をしてくれて、寂しいなんて5歳児だって言わないわよ」

さすがに、王子様に言い過ぎたかと美優はデイルを見る。

手にしたフォークに力が入っている、緊張しているのは仕方ない。


「強敵ですね、僕を甘やかしてくれるご令嬢が多いのに」

デイルの笑みが張り付いたように見えてくる。

「よかったわね」

末っ子の王子様だもんね、美優お姉さんわかるよ。



美優は普通の20歳の大学生だが、デイルから見ると貴族の令嬢や夫人に比べて見劣りする。

幼く見えるのだ。

その美優が年上ぶるのが腹立たしい。

だが、ワンを従属させれば王座さえ手に入るかもしれない。

そのワンが欲しいなら、美優を手に入れるのが1番の近道なのだ。

こんな女、普通なら目もむけないのに。デイルは心の中で美優を(さげす)む。

「ミユウは新鮮だな」

絶対にこの女を、僕の足元に屈せてやる。


「王太子殿下は、もうすでにお仕事をされているのですね」

美優が、もうデイルの事は関心のないように王太子の話をするのが、デイルを苛立(いらだ)たせる。

「ねぇ、ミユウ。僕は昨日言ったことは本気だよ」


ポン、と美優が真っ赤になる。

「私はここの生活に慣れるのに精いっぱいで、他に目を向ける余裕はないの」

ごめんなさい、と断りの言葉を続けようとした美優をデイルが言葉を被せる。

「じゃ僕が、この国の事を教えてあげるよ。

だから、明日の披露会のエスコートはさせて欲しいな」


「ワンと一緒に出席するので、エスコートはいらないと思うの」

王太子とルティンの花束にも、エスコートをしたいとカードが添えられていた。

考える時間もないし、美優は面倒に思ってエスコートなしと決めた。


「女性が一人で出席するのは、良く思われないよ」

デイルがさも心配そうに言うが、美優は考えを変えない。

「この国の作法に添ってないかもしれませんが、私自身が作法を身に付けていないのでエスコートしてくださる方に迷惑をかけると思うの」

「だからこそ、エスコートが必要だよ」


「心配してくれてありがとうございます」

御馳走様でした、と美優が席を立つ。

後を追おうとしたデイルに、美優の足元を歩くワンが振り返る。まるで威嚇するかのように。


席に座り直したデイルは、息を深く吐く。

あの女に無理強いは出来ない、ワンの機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。

今のデイルの頭の中は、美優の事でいっぱいだ。それは本人でさえ気が付いていない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ