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マルセウスの政略

「陛下、ウズデロイドよりの書簡に返答せねばなりません」

アーノルドが王に詰め寄ると、王は周りを見渡しアーノルドに意見を求めた。

「王太子は、これに賛同していると聞いたが?」


「はい。

ウズデロイドと共闘が出来たのは僥倖(ぎょうこう)でした。

これを機に友好関係に持って行くべきであると思っております。

そして今回、巫女がいればこその討伐でした。

あれが種を飛ばし繁殖すれば、王都どころか国や世界に滅亡をもたらしたかもしれません。

褒美として、王家の姫として迎え、巫女が気に入っていた狩猟小屋の辺りを領地として下賜するのが順当ではないかでしょうか」

美優の小屋で、アーノルドとフランシスの密約。

それがあるから、赤い花に両国で対処することになったのだ。

赤い花の殲滅を終えた今、密約は表面に出て来た。




バタン!!

大きな音をたてて、美優のいる客間の扉が開かれる。

「ミユウ」

美優の名を呼びながら入って来たのはルティンである。

「ミユウ、すぐここを出るぞ」

大股で歩きながら、美優の返事を待たずに腕を取ろうとするが、ワンにその手を払いのけられる。

「殿下、落ち着いてください。

ご主人はまだ体力が回復しておりません。血を流し過ぎたのです」


ドスっ、音をたてるように美優の向かいの椅子に座ると、ルティンは(うつむ)いて頭を押さえた。

「今回の事で、巫女に報償が与えられることになった。

ミユウ達が住んでいた狩猟小屋と辺りの取りを領地として与えることになった。

そしてミユウは領主と成れるように、巫女とは別の地位を与える、それは王家の姫となることになった」

話しを聞いていた美優は驚くばかりだ。あの土地を貰えるのは嬉しいが、姫になるなんて無理だと思う。


「そして」

ルティンは顔をあげたが、報償おめでとう、という雰囲気ではない。


「ウズデロイドとは敵対していたとは言わないが、お互いが危険な相手と認識していた。

だが、あの花を殲滅させるためには、2国に広がる花を同時に対処しなけば、完全に消滅させることは難しいと分かっていたが、共闘するにはお互いに信頼がなかった。

マルセウスにとっては、ウズデロイドは魔獣を生み出してた国だ」

ルティンが説明しなくとも、美優にだってわかる。戦争間近の国同士が手を取らなばならないほどの危機だったのだ。


「自分たちが争っている場合ではない、と分かっていたが簡単にお互いが折れるわけにはいかなかった。

国としての建前が必要だった。

だが、共闘することに成功した。

それは・・」

ルティンが言葉につまる。

「王家外交をしたのだ。

マルセウスの姫をウズデロイドの王に嫁がせる」


「ミユウ様、マルセウス王家は王子しかいません」

カレンディアが補足するように言う。

「なので、姫が必要であったと?」


「違う、ウズデロイド王はマルセウスの姫ではなく、ミユウを名指ししてきた。

ウズデロイドの正妃になるには、マルセウスの姫という身分が必要なんだ」


「あれ?

王太子がカレンディアとの婚約を解消して、私を次の婚約者にするんじゃ?

それなのに、ウズデロイドに嫁ぐなんてできないよね?」

美優が確認するようにルティンに言うが、ルティンは首を横に振る。

「ミユウと兄上の婚約は成立していない」

美優は承諾せずに逃げたのだ、あの話はそのまま止まっていたということになる。

「そしてミユウが嫁がねば、約束を守れなかったマルセウスの有責で戦争になる」


話しを聞いていた美優がプルプル震えている。

「魅了といい、人をなんだと思っているの。

王様だから思い通りにできる、なんて思っているなら大間違い。

女の取り合いで戦争? 上出来じゃない!」

美優の瞳がギラギラしている。


ルティンは驚いていた。

自分の知る美優は、どちらかと言えばおとなしく逃げてばかりで、守ってあげたい女の子だった。


「私は私にしかなれない

逃げたりしない、表玄関から堂々と出るから」

美優がとても怒っている、それだけは確信のできることだった。



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