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美優の存在

王子達の魂胆も知らずに、美優は、与えられた部屋でワンにもたれて力尽きていた。

王の謁見で極度の緊張を強いられたからだ。

この世界に飛ばされ、怒涛のような毎日であった、気が緩むと疲れが出ても仕方ない。

ワンに喰われた傷は治っても、肉と大量の血を失い、膨大な魔力を消費したのだ。



謁見室での事を思い出す。

あんなに美形の王子が自分を好きかもなんてあり得ない、そう思ってしまうのは優しく接してくれるから、夢見たいからだ。

あの王太子もルティンも気持ち悪いぐらいに優しい。

それとも、異世界人って、この国の男性にとって魅力があるのかな、と考えて首を横に振る。


「私、この世界でもてるタイプ?」

この世界では、私は美人なのだろうか?

ワンに分かるのだろうか、と小声で聞いてみる。

どこで聞かれているか分からないから、声を響かせないようにしている。


「それはわかりませんが、この世界は魔力に大きく影響受けます。

人間と魔獣の争いも続いてますし、人間同士の戦争もあります。

誰もが強い魔力を欲しています。

ご主人が魔力を与えるというのは、気付いていないようですから、俺の魔力でしょうか?」

うーん、とうなる美優もワンに同感だ。

美優には魔力の標準などわからないが、ワンの姿と魔力にルティン達がとても驚いていたから破格の魔力量なのだろうとは思う。


この世界に来たばかりの私は、お金もなく寝る場所も食べる物もない。魔力があっても現実はそういうものだ。

お金を稼ぐ方法も、この世界のことは知らない。

王子様に出会って、王宮に連れて来てもらったのはラッキーだと思うことにしよう。

そのうち追い出されるだろうけど、それまでにこの世界のことを勉強しよう。

「衣食住をみてもらって、文句を言うなんて贅沢とはわかっているの。

なんかね、王太子様って綺麗すぎて恐いのよ。

ろくに知らない私に、そんな風に思われて王太子様に悪いと思うんだけど」




コンコン、とノックをしてからニナが部屋に入って来た。

「ミユウ様、ルティン殿下とデイル殿下がおいでです」



美優が寝室からリビングに行くと、王子がすでに待っていた。

「お待たせして申し訳ありません」

美優がソファーに座ると、横に仔犬のワンが丸くなって寝そべる。


「ワン殿は、また小さくなられたのだな」

デイル王子は、ワンに興味が尽きないようである。


「ご主人の側にいるのに必要だからな」

仔犬になったワンは、美優に頭をなでられている。


「先ほどは疲れたであろう?

王宮に着いてすぐの謁見であったから。重鎮達の関心が高く、無理をさせてしまった」

ルティンが美優に笑みを向ける。

一瞬、美優はドキッとしてしまう。王族は美形が揃っているのだ。

「いえ、大丈夫です」

なんとかそう言うので精一杯で、頬は赤い。


「ところで、旅の間もワン殿は食事をしなかったが、どのような物ならいいのだろうか?」

ルティンが聞くが、美優もそれは気になっていた。美優と出会ってからワンは食事をしていない。


「俺は、ご主人と同じ物を週に1~2度食すればいい」

それからも、ワンへの質問が続き、美優はぼんやりと聞いていた。


「それでいいかな?」

突然、美優に話をふられて、思わず「ええ」と答えてしまった。

「ご主人」

ワンが美優に、いいのか?と確認するが、時すでに遅し。

「では、明後日には、ワン殿を聖獣として披露する会を催すことになる」

どうやら、ワンを聖獣としてもいいか、と聞かれていたらしい。


「ところで、ミユウにその時に着るドレスを贈りたいが、好みをうかがっても?

年相応の物がいいのだろうが」

「私は20歳よ」

ルティンもデイルも驚いたように美優を見る。


「僕よりも年下と思ってた。

僕は18歳だ。

それなら、直ぐにでも結婚できるではないか」

デイルが言うのを、今度は美優が驚く。デイルが大人びているからだ。


「ミユウは可愛いね。

僕は婚約者もいないし、僕を結婚相手として考えないか?」

ダイレクトにデイルが美優を口説き始めるのを制したのはルティン。

「デイル、ミユウは疲れているんだ。」

顔は笑っているが、ルティンからピリピリした雰囲気がただよう。


「結婚なんてまだまだ考えてません」

美優がきっぱりと告げるが、ルティンもデイルも美優の歳を知って急ぎ始めたようだ。




翌朝、王子3人から花束が届いた。

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