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種がみせる悪夢

赤い花についた実は、いまにもはちきれんばかりに膨らんでいた。

中には多くの種がはいっているのだろう。

その実は、美優の目の前で(はじ)け、たくさんの小さな種が風に舞い上がった。

これから風に運ばれて、遠方に飛び散るのだろう。

美優の住む狩猟小屋の前の広場にも、種が一つ運ばれて来た。

その種は、土に着くとすぐに目を延ばし、根を広げ、小屋の中まで浸食してきた。


『食べたい』


「きゃあああ!」

美優は自分の叫び声で目を覚ました。

夢・・・ 美優はベッドに起き上がり、あれが夢であることを確認するように、部屋の中を見渡す。

植物に侵入されている痕跡はない、夢であったと確信して、息を吐いた。


美優の叫び声を聞いて、カレンディアとワンが美優の部屋に駆けつけて来た。

「ごめん、変な夢みちゃって」

えへへ、と美優が小さく笑う。


「ミユウ様、こんなに汗が」


カレンディアが、夜着の背中が汗でびっしょりになっているのを見てタオルを出してくる。

ありがとう、と受け取るとまずは額に当てる。

あれは夢?

何もしないでいたら、あれは現実になってしまう。



「ワン、カレンディア。

私、赤い花を確認に行く」

ベッドから降りようとして、膝に力が入らず前のめりになった。

逃げれるものなら逃げたい。


「ウズデロイド陛下もミユウ様にご負担をかけるのは、望まれておりません」

カレンディアが出かける支度をしながら、それでも行くのか、と確認する。


「うん、知ってる」

美優は覚悟を決めたように、前を見据える。


「ご主人、ちょっといいか?」

窓辺に立つワンが来てくれと、手を挙げる。

ワンの見ている窓からは、小屋の前の風景が見える。

「見ておいた方がいい」


朝陽を受けて立つ人物が見えた。

ルティンだ。

美優はその姿を見ると、ワンを伺う。

「毎朝、ルティンが小屋の周辺の安全を確認していた。小屋に入ることなく帰っていくから、ご主人は知らなかっただろう?」


「バカだね」

クスクスと美優が笑うと、力が抜けて来た。

「ワン、ルティンを呼んできて」


ワンが外に出た間に、素早く着替え遠出の装いにする。

ワンに連れられて小屋に入って来たルティンは、美優の姿を不審に思った。

「おはよう。

どこか行くのか?」


ルティンの問いかけには答えない美優。

「すごく怒っているの。

私の心を操ろうとしたことに、腹が立っている」


「デイルにも兄上にも聞いた。

操ろうとかじゃないんだ、なんていうか、離れたくなかったんだ。

いつも側にいてやれないから、それでも側にいて欲しかったんだ」

ルティンが真摯に美優を見て答える。

「悪かったよ。

美優を好きなんだと思う」


「は! 思う?」

美優は告白されたことよりも、疑問形であることが腹立たしい。

だが、今はそれにかまう余裕はない。


「ワンもいるけど、ガードして。

これから、赤い植物のところに行くの。

場所も知らないから、案内して」

「危険すぎる!

女の子の行くところじゃない」

ルティンが美優の腕をつかもうとして、ワンに止められる。


「危険だから、殿下にも守ってもらおうとしてる。

いくら護衛がいても、安心なんて出来ない」

止めるつもりはない、その目を見れば覚悟がわかる。


「もちろん守るよ」

ルティンは当然だ、と言う。






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