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兄弟喧嘩

「ぎゃ」

ダーレスの持っていた報告書が突如燃え始めた。


「能無しはいらん。

俺は、ミユウの血を使わない駆除方法を探せと言ったのだぞ」

フランシスの表情は変わっていないが、怒りは伝わってくる。


ダーレスは魔術で火を消すと、火傷を負った手を治癒する。

魔獣の研究所を管理するほどなのだ、ダーレスも大きな魔力を秘めている。

「もちろんです、陛下」

能力の高い魔術師だからこそ、フランシスの魔力の大きさも怖さも知っている。

マルセウスの第3王子の魔力は異質であった。

大きな魔力が潜在するが、それだけではなかった。ダーレスはデイルのことを思い出す。






「多分、ミユウしかあの花を駆逐できない」

マルセウス王宮、王太子の執務室でデイルの導いた答えが響く。

「却下だ」

デイルの言葉をアーノルドは即座に否定する。

「お前の言う駆逐は、ミユウの血の魔力だろう?

カレンディアが許すはずがない」


「は? 今更カレンディア嬢?

ミユウと()げ替えた女だろう?」

ガン!

デイルを殴ったのは、アーノルドではなくルティンだ。

「おまえは!

本当の魅了を使ったことのないお前が言うな!」

はぁはぁ、と肩で息をして、殴られたのが自分であるかのようにルティンの表情は歪んでいる。


「どうしても、譲れない相手にするのが王家の魅了だ。

絶対に手放さないようにするために」

ゆらり、とアーノルドが立ち上がる。

「巫女を王太子の婚約者にするとなった時に、どうしてルティンが慌てなかったかわかるか?

僕がカレンディア以外に、本気にならないことを知っているからだ。

おまえの魅了は軽い、対価の必要のない程度の魅了。

哀れだな」


「何を偉そうに!

僕の方が魔力も魔術も上なんだ! 先に生まれてきただけじゃないか!」

アーノルドに飛び掛かろうとして、ルティンに取り押さえられるデイル。

ガターン!

デイルとルティンが床に転がる。


「そうだ、先に生まれた。

マルセウスという国の責任を負って生まれたのが僕だ」

美優を襲い死にかけているカレンディアに、王太子という仮面を被らなければならない責務。

それも魅了という魔術があればこそだ、自分から離れる事はないだろう安心感。


体力や武力はルティンが勝ってはいるが、魔術ではデイルの方が上だ。

ルティンに押さえつけられていたデイルは、魔術でルティンをはねのける。

「僕に言わせれば、そんなに女に入れ込む方がバカなんだよ!」

アーノルドに攻撃しようとしたデイルは、ルティンだけでなく、警護兵にも取り押さえられた。


「お前の力は誰よりも強いかもしれない。

だが、それだけではダメなんだ。それが今の結果だ」

ルティンが警護を下がらせて、デイルを解放する。

「それを分かってくれると思っている」


デイルが顔を(そむ)け、顔を赤らめる。デイルだって分かっているのだ。

人をまとめる、その能力は兄に劣っている。

「もう一度、現地に行ってくる。

ミユウの血が使えないなら、考え直すよ」

部屋から出て行くデイルを追いかけようとした警護兵を、ルティンが制して止める。

「大丈夫、変なことはしないだろう」

マルセウス王国を大事にしているのは間違いないのだから。



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