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王子達の意志

美優を部屋に送って、王太子は王家のサロンに向かった。

大臣達はそれぞれの執務に戻っており、王と王子はサロンに集まっているからだ。



「遅くなりました」

王太子が王の向かいの席に座る。

侍従がお茶を淹れるのを待って、人払いをした。


「ルティン、よくぞ見つけた」

王が第2王子に声かける。

「魔獣が多数出現するとの報で、討伐に向かったのが1週間前になります。

人里近いところまで魔獣が出現しており、被害も大きなものでした。

街から山までは広大な草原が続いており、そこで魔獣を討伐していた時に強烈な光の柱が見えたのです」

その後の報告は受けて、皆が読んでいる。


「ワン殿の魔力は、どの魔獣よりも大きく強いというのは一目で分かった。魔術も使え、人語を理解する。

あのような魔獣は初めてだ。 他国が手に入れては、我が国に大きな脅威となる」

王は、確認するように王子達を見る。


「あれほどの魔力。手に入れては臣下ではいられない。

ワンを手に入れた者が次の王に近いと思いませんか?」

第3王子が王を見る。

「デイル、自分が言っている事を理解しているのか!

次の王は、王太子である兄上だ。

力だけでは王になれない」

ルティンが第3王子にくってかかる。


「ルティン兄上、もしもですよ。

王太子よりも力を持ってしまったら、僕も王子として国を憂いているのです」

末っ子王子に玉座に手が届くチャンスが来たのだと、第3王子デイルは思う。

生まれた順番が早いだけで、長兄が王になる。だが、あのワンを手に入れれば大いなる魔力を手に入れる。


「ジェスファー、ルティン、デイル、我が国に取って最重要なのは、あの獣を他国に取られないことだ。

それに次期王の座は関係ないが、あの力を王が持っていたら国はさらに豊かになるだろう」

王は3人の王子全員の方が、ミユウの気に入る者がいる可能性があると考える。

次期王の事は、その時に考えればいいのだ。

ジェスファーは既に王太子として実務をこなしている。力があるだけでは、ダメなのだ。

「王太子を代えるつもりはないが、大いなる力を手に入れた者を放っておくわけにはいかんだろう」


「もちろん、僕も参戦するよ」

王太子が面白そうに、第3王子に答える。

「王の座というより、あの力が魅力的だと思わないか?」


どんなに訓練しても、あの力に近づくことも出来ないだろう。それほど大きな力だ。

魅力的な力だ。ルティンは草原で垣間見たワンの力を思う。

ワンを率いて他国に攻めいる自分を想像すると、興奮を抑えられない。

兄の気持ちも、弟の気持ちもわかる。

ルティン自身がすでにワンの力が欲しいと思っているのを、ごまかせない。



「ルティンも意志が決まったようだな。」

玉座の後ろに控える聖獣、自分こそ欲しいのだ。

王は自分にはそれが出来ない事が、やるせない。


「王として3人に命ずる。

何としても白銀の獣ワンを手に入れよ」

王と3人の王子が視線を交わす。



「兄上には、婚約者がいる。どうされるのですか?」

ルティンが、ジェスファーに確認をする。


「国益を考えれば、どちらを取るかなどわかっているだろう」

カタン、とカップをソーサーに置く音が静かなサロンに響く。

王太子は、美しい顔に笑みを浮かべ、ルティンに答える。

「あの獣を従える、とても魅力的だね。そのために正妃にあの女の子を据えるだけでいいなら、安いものだ」



王家の男達の会話に、美優の意志を案ずる者はいない。


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