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裏表のある王族たち

魔術師団研究室では、王より与えられた実験体の結果が思わしくなかった。

巫女の血の付いたハンカチを実験体の傷口に巻けば、もがき苦しんで異形の形に変わり死んでしまった。

その血を採取してあった赤い花にかけても、巫女の血のように消滅したりはしない。

「巫女の血を増殖させることは出来なかったな」

研究員は、王に報告すべく結果をまとめる。

「巫女の血で反応をしたのは間違いないが、身体が持たないというのが正しいだろう。

僅かに適応する対象だけが、巫女の力を得る事ができるということだ」

リスクが大きすぎるということである。

現時点では、何が適応の条件かは確認できていない。


マサチュート侯爵を旗手とした血統主義者という貴族達が、王の粛清を受け処刑の代わりに師団の研究施設に送られたのは数日前の事だ。

巫女の殺害未遂、謀反ありと断罪されたのだ。

魔術師団の研究室には、魔術にのめり込み、常識や良心から離れた研究をしている者も多くいる。

そこに実験材料として送られるのは、処刑されるより苦しみが長くなることだ。

それを公にすることで、フランシスの怒りの深さを貴族達に知らしめた。





美優が滞在する部屋にフランシスが来ていた。

「フランシス、一度小屋に戻ろうと思っているの」

ここにいては、マルセウスの王子達に復讐ができない。

フランシスが配した警備体制では、マルセウスの王子が来ることはかなわないだろう。


「ダメだと言ったら?」

美優の部屋で主のようにソファに座るフランシス。

「わかっている。ワンがいる限りどの軍隊をつけるより安全だと」

諦めたようにフランシスが肩をすくめる。


「ミユウ、顔見に行くから」

美優だって、フランシスがとてつもなく忙しいのは分かっている。

だから、自分を優先させてくれるのが嬉しいのと、仕事の邪魔をしている気持ちで複雑だった。

「無理しないで。でも、嬉しいかも」

少しうつむいて話す美優は、フランシスを意識してます、と言っているのと同じだ。


1週間ぶりに、美優、ワン、カレンディアが転移陣で小屋に戻った。

テーブルの上に、ルティンからの手紙。


『元気にしているか?

留守が続いていると聞く、戻ってくると思ってここに残しておく』

短い手紙がルテインらしい。

ふふ、と美優は笑うが、魅了にかかっている自分が以前はどういう対応だったのか思い出せない。


「ご主人」

ワンが、外に誰か来たようだ、と美優に奥にいるように言う。


外を確認に行ったワンが連れて来たのは、王太子アーノルドだった。

「殿下」

ロイヤルカーテシーでカレンディアが王太子を迎える。


ルティンはたまに来るが、ここに王太子が来たのは初めてのことだ。

「殿下、何か御用でしょうか?」

カレンディアは、アーノルドを居間のソファに案内する。


魅了が解呪された後、美優からかかっている振りを続ける。

しかも、好きな素振りもする、と言われているのだ。

最高のタイミングで振ってやるのよ、とキラキラした瞳の美優に言われている。


王太子の向かいに美優が座り、その後ろにカレンディアが立つ。

「アーノルド王太子殿下。わざわざご足労するほどの御用がありましたか?」

美優がカレンディアの淹れたお茶のカップを手に持ち、香りを楽しむ。


「たまには、婚約者殿に挨拶をと思ってね」

王太子もカップを手に持つ。

「私は、婚約を納得しておりませんし、受けてません。王家の事情は私には関係ありません」

「王妃が巫女というのが重要なのだ。

カレンディア、茶が上手くなったな」

ゆっくりお茶を味わいながら、アーノルドがカレンディアに微笑む。

咄嗟にカレンディアは(うつむ)いたが、顔をあげたときには笑みを浮かべていた。

「ありがとうございます。ミユウ様がお茶がお好きなので練習しましたの」

侯爵令嬢であったならば、お茶を淹れる事も料理をすることもなかったろう。


「カレンディアはお茶だけでなく、お料理も出来るようになったのです」

美優が自慢気に言う。

「ほぉ」

王太子はカップを置くと目を細めた。

「では、幽閉する部屋には小さいが厨房を用意しよう」

え?美優は意味がわからず、王太子を見る。


「巫女の命を狙って無事でいるはずがなかろう。

いい加減戻って来なさい。幽閉と言っても不自由はさせない。

手もこんなに荒れて、ドレスももっと似合うのがあるだろう」

婚約を解消した女に言う言葉ではない。それを王太子は自覚してないのだろうか。



「さて、ゆっくりはしていられないんだ。失礼するよ」

王太子は美優ではなく、カレンディアに視線を移す。

カレンディアは、はにかんだように微笑むと王太子から視線を外す。




アーノルドが消えた部屋では、美優の向かいにはカレンディアが座っていた。

美優に座らされたのだ。

「私、上手にできていたでしょうか?」

「うん、王太子様好きって感じだった」

カレンディアの対応に美優が答える。

「それより、王太子殿下、危ないよ!」

「ミユウ様?」


「あいつ、カレンディアを幽閉して自分に料理しろって言っているんでしょ?

恐いヤツだよ!」

幽閉自体が、自分だけのカレンディアにするためだった、とわかる。






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