刑の実行
処刑のシーンがあります。
お気をつけてお読みください。
一面に咲く赤い花。
綺麗と思ったのに、自分の腕を持つ兵士の緊張に気が付くとオカシイと感じる。
どうして、こんな所に連れてこられたのだろう?
カレンディアに取り押さえられた侍女は、軍の施設で尋問を受けたが、ほどなくして転移陣に入れられ、そこから馬車に乗り、赤い花が咲き乱れる地域に連れて来られたのだ。
王宮で働いている侍女なら、その場にいるのが、魔術師、軍人、官士と様々な制服がいるのがわかる。
それだけ重要地点なのだろう。
「陛下から好きに使えと下賜された。
それぞれの立場でデータをとるように」
侍女と一緒に来た武官がその場にいた者達に告げる。
周りは男ばかりだ、侍女は怯えるような顔をするが口を開かない。
侍女の身元から、後宮にいる令嬢が背後関係に浮かんだが証拠はない。
「こんな所につれてくるとは、そんなに陛下を怒らせたのか?」
高位軍人とわかる制服の男性が、武官に確認する。
「陛下の大事な方に、針の入った菓子を食べさせようとした」
武官の回答に、驚きの声があがるが、侍女に対してではない。陛下に大事な人がいるということだ。
「それで処刑か」
「王宮で侍女をしている貴族の令嬢か。
陛下は、やることがえぐいな。みろよ、震えているぜ」
こんな所で処刑?
「貴族だけあって、少ないが魔力があるな」
魔術師がニヤニヤと侍女を見る。
軍でも拷問などなく、侍女が話したとしても指図した人間は知らぬ存ぜぬを貫くのは分かりきっている。
フランシスの意志をただしく理解したのであろう。
魔術師が侍女を連れている武官に離れるように言うと、侍女の腕をくくってある縄を持って中央に歩き出した。
「何するの。 やめて!」
侍女が耐え切れなくなって叫びだした。
ドン!
背中を押されて、前のめりになり赤い花に近づく。
赤い花を遠巻きに見ている男達に不安しかない。
「処刑っていうこと?」
侍女は仕える令嬢の家から保護を受けることになっていた。
例え牢に入っても助けてくれる約束だったのだ。
マサチュート侯爵家が逃がしてくれるはずだ。
そこには赤い花が広がっているだけだ。
それが余計に不気味に感じる。
「やめて! お嬢様に言われて断れなかったの。
折った針を持たされて、菓子に刺せって」
赤い花の間際まで連れて来られて、武官が手を離す。
「私は反対したのよ! あの女が誰かさえ知らないもの」
赤い花から距離を取って見ている男達の視線は、侍女と花を観察するようだ。
離れた武官を追いかけようと侍女が動いた時、侍女の足元に芽がでてきた。
「え?」
侍女はそれを見ようと、下を向いたが目を見開いた。
芽が出たばかりなのに、葉が出て侍女の足に触れた。
熱い。
感じた時には葉が足に引っ付いたように離れない。
葉がどんどん増えて大きくなっていく。
「きゃああ!」
葉を離そうとした手も葉に引っ付く。
「熱い!」
男達の目の前で、データ収集という処刑が行われた。
侍女は徐々に溶かされ、痛みに苦しみ助けを求めたが、手を伸ばす者はいない。
ウズデロイド王からの処刑宣告。
それは翻ることはない。
「いやあ!ミルドレッド様よ!」
侍女は助けてもらおうと、指示した令嬢の名前を挙げるが、誰も助けなどしない。
「ミルドレッド・マサチュート侯爵令嬢よ!」
足首から脹脛が解け始めた時には、痛みに耐えかね、気が狂ったように泣き叫んだ。
「ぎゃあああ!」
フランシスは、戻って来た部下に労いの言葉をかける。
「あちらはどうだ? 花はどれぐらい広がった?」
「無事完了いたしました。
魔術師が魔具を持ち込んでましたので、いいデータが取れました。
軍の方で、途中に攻撃をしたのですが、やはり一時的に消滅しますが、数時間で芽がでました。
広がりは予想の範囲内です」
「マサチュートの名が出たか?」
「はっ」
「あいつ邪魔だったんだよ」
フランシスは口元に笑みを浮かべ、チェアの背に身体を埋めた。




