深夜のお茶会
その夜遅く、フランシスは報告を受けていた。
王の執務室には、たくさんの男達が出入りしている。赤い花の状況、美優を襲った侍女の自白。
次々と情報がもたらされる。
その中にマルセウス王国の報告もあった。
王太子、第2王子がマルセウス側の赤い花の視察に訪れたという。
マルセウスが神獣の力を試そうとするのは、容易に想像できる。
フランシスもワンと視察したときに試したが、ワンの魔力で一時的に消滅するが、直ぐに新しい芽がでてくる。
「マルセウスの動向に気を付けろ」
フランシスは報告を持ってきた男に指示をだす。
「はっ」
男はニヤリと笑みを浮かべさがった。
ドラクロア第一准将、フランシスの軍での片腕という男だ。
「陛下、ドラクロアは進軍の準備をしそうですな」
トミーは、フランシスが誤解するように言ったと指摘する。
元々、フランシスはマルセウス進軍は視野に入れていたのだ。それが研究所がなくなり、魔獣の生産ができず、マルセウスの国力を落とすところまで進んでなかった。
なにより、フランシスの興味が美優に移ったことが大きい。
美優は荒い息を吐いて目覚めた。
汗が流れ、喉が渇いている。カレンディアを呼ぼうとして手を止めた。
隣の部屋で休んでいるであろうカレンディアを起こすのは忍びない。
夢に出てきたルティンは鮮明であった。
身体は拒否するかのように疲れている。
どうして?
ルティンにはニナがいて、その現場を見たはずなのに。
しばらくルティンに会っていない、ニナが使いに来るだけだ。
絶対にフランシスの方が、大事にしてくれているとわかっているのに、夢に出て来るなんて。
確かにルティンの顔は綺麗だと思う。
王太子もデイルも、マルセウスの王子の顔は類をみないぐらい奇麗だ。
それに、いやな汗をかいたと分かる。
どうして、ルティンが気になるのだろう。
ニナがいるのに、いやだな。
カレンディアは、王太子殿下のことはどう思っているのかな?
今も、好きなのかな?
「ミユウ様?」
ノックの音がしてカレンディアが寝室に入って来た。
「物音がしましたが、起きてらしたのですね。
呼んでくださればよろしいのに」
「喉が渇いてしまって」
苦笑いでごまかすように、美優が言うと、カレンディアも同意する。
「私もです。夢見が悪くって。
深夜ですが、お茶を用意いたしますね」
すっかり目が覚めた二人は、何種類かの茶葉の飲み比べをしていた。
香り、色、カレンディアが美優に説明をする。
「夜遅いので、お菓子は用意しませんね」
カレンディアがカップを並べる。
「ミユウ様はどのお茶が気に入られましたか?」
「最初に飲んだのが香りが良かった」
美優が茶箱を刺すと、カレンディアが箱を手に取る。
「この香りがお好きな方は多いのですよ。王太子殿下も、」
言いかけてカレンディアが口を閉ざす。
「申し訳ありません。
終わったことだと諦めたはずなのですが、夢を見てしまって」
「夢?」
「はい。苦しくなって起きてしまったら汗びっしょりで」
カレンディアの状況は美優と同じだ。
「待って、カレンディア。
それって、私も同じ。ルティンの夢を見ちゃって、どうしてだろうって。
滴り落ちるような汗が、身体が拒絶しているみたいに思えたの。
苦しくって、喉が渇いて」
「ミユウ様」
カレンディアが、真剣な顔で美優を見る。
「全く同じなんです。おかしいと思いませんか?」
美優の返事を待つことなく、カレンディアは部屋の外で警護をしている騎士にことづけする。
「至急、解析のできる魔術師をお願いします」
カレンディアの言葉に悟ったのだろう、警護の騎士の一人がすぐに廊下の奥に向かう。
そしてフランシスが現れた。
「至急とはぶっそうな話しだな。
深夜と分かっていてそれとは、余程重大なことなのであろう。
俺はこの国一番の魔術師で、解析もできる」
ジャラジャラと机の上に広げる魔術道具、解析するのは魔力だけでは不可能だ。
「どうしたのだ?」
それで、美優とカレンディアの腹は固まった。
「私達二人が同じ状態で、それを身体が拒否しているのに止められない。
まるで、そうさせられているようで、呪いのような」




