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フランシスの怒り

ウズデロイド王国、美優が狙われた後に戻ります。

ウズデロイド王国、マルセウス王国、同じ時間系列で進んでいます。

机を蹴る大きな音が室内に響く。

肩で息をしながら、フランシスは呼吸を整え冷静さを取り戻していく。


ワンと共に赤い花の視察から戻ってきたフランシスに知らされたのは、美優が狙われたこと。

未遂で済んだが、短く折られた針が菓子に仕込まれていた。

小さな菓子だ、気づかず口に入れていたらと思うと、血が煮えたぎるほど怒りがわいてくる。


視察といっても転移陣を使うので、戻って来るまで2時間もかかっていない。

その間に、美優の存在を知り、菓子の準備をして侍女を潜り込ませられる者は限られている。

情報も権力もあり、美優の存在が邪魔な者。


「トミー、実行犯は捕まえてあるんだろうな?」

「はい、巫女様の侍女殿のおかげです。

女の背後関係は調べてあり、すでに捕縛に向かわせてます」

フランシスの側近になる人物だ、有能であり行動力もある。


フランシスが美優のいる部屋に向かう間に、トミーは状況を説明する。

横にはワンがいて聞いているが、ウズデロイドの機密に触れる部分も隠そうとはしない。

フランシスが許していることを感じているからだ。


「マサチュート侯爵に動きがあります」

貴族議員マサチュート侯、娘ミルトレッドは美姫と誉れ高く、後宮に1室を賜っている。

前王の時代には内務大臣の任を得ていたが、フランシスに解任され復権を狙っている男である。

娘が王子を産めば、フランシスの首を狙うであろう一人だ。

当然、美優の存在を認める事はない。



じゃまな存在は抹消する。

それは、フランシス自身が取った方法だった。

「ミユウといて、俺が腑抜(ふぬ)けたと思うか?」

武力に重きをおき、他国を侵略してウズデロイドを大国にしたフランシス。

魔獣の研究所がなくなり、他国への進軍も控えているのは、美優のところに行く時間を優先させているためだ。

フランシスにとって、今は強硬策は必要な時ではないと判断しているからでもあるが。


「反対でありましょう。

巫女様とは初めてお会いしましたが、巫女様の所から戻られた後の陛下は判断スピードもあがっておりました」

トミーが続ける。

「確かに陛下の表情が穏やかになった、とは言えますが、それで陛下が変わったと思う(やから)は考えが甘いとしか思えません。

陛下の恐ろしさを身をもって知ることでしょう」


美優が休んでいる部屋の前に着いたことで話は終わる。

トミーが警備の兵士に異常はないかと確認する。

穏やかに開いた扉の中に、美優はいた。

物音で気がついたのであろう、立ち上がっていたカレンディアがフランシスを認めるとカーテシーをする。

トミーの中でカレンディアのポイントが上がっていく。


「ご主人!」

フランシスを差し置いて、ワンが美優の元に駆けて行く。

被害なく、心情も安定していると連絡を受けていても確かめずにはおれない。

「カレンディアが気づいてくれて、私は大丈夫よ」

心配ないから、と笑う美優をフランシスは言葉もなく見ている。


この笑顔が無くなるところだった。

フランシスにとって、必要か必要でないかだけであった。それが、美優と出会い、大切という存在が出来た。

「フランシス、私はほら、大丈夫だから、心配してくれてありがとう」


「俺のミユウにしたことを後悔させてやる、楽しみにしていろ」

フランシスが怒り(あら)わにするのを、美優が悲鳴をあげる。

「俺のじゃないし、過剰にしないで」


「俺が俺のだと思うのは自由だろ?」

そう言われると、否定することもできない。

「俺は、ウズデロイド王だ」

反論は受け付けないということだ。

美優だって、助かったのはカレンディアの機転のおかげでラッキーだったと分かっている。


針の入った菓子を口に入れてしまったら、飲み込んでしまったら・・・

痛みを想像してしまい、背筋が凍る。


フランシスは美優の頬を撫でると背を向けた。

「ワン、後は頼む。

つけてある警備兵は自由に使ってかまわない」

トミーを引き連れて部屋を出て行くフランシス。


どこに行くかは知らないが、することは分かっている。

「ご主人が気にする必要はない。

これは、ウズデロイドの失態だ。

その王が責任を取る」

ワンが、美優のせいではないと慰める。

「そうです、狙われたミユウ様は怒っていいお立場です。

犯人に同情する要素はありません。許してはいけないのです」

「ありがとう、カレンディア」


それでも、と思ってしまう。

多少はこの世界のことも分かった。階級が上の者から指示されたら断ることは難しい。

あの女の人もしたくてしたんじゃない、させられたんだ。

迷いがあったから、カレンディアに気づかれた。


上に立つ者が間違ってはいけない。


美優はソファに(もた)れると目を閉じた。


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