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王宮に初登城です

王宮には馬車に揺られて、2日かけて着いた。

馬車を引くものは馬ではなく、人間に飼いならされた魔獣である。馬より格段に速い。


この2日、美優は貴族のドレスを着ていて、歩き方も教わった。

ニナは男爵令嬢だったのだ。

「娘3人の3番目です。幸いにして魔力が高かったので、魔術学校に入学して騎士になりましたが、貴族とはいっても男爵家では領地から出る事もなかったかもしれません。

ドレスの裾のさばきかたは、こうです」

見てください、とニナが美優に教える。


途中の町も、王都も初めてみる世界に目を見張った。


白く優美な城が見えた時は歓声をあげそうになった。

「ご主人、落ち着いて」

ワンは人間の世界は初めてのはずなのに、この順応力。王子達はワンが主たる魔力の持ち主と信じている。

「ご主人、気を付けてください」

それは、魔力持ちとバレないようにということだが、護衛として一緒の馬車に乗っているニナには分からない。


「ワン様は、ミユウ様をどうしてご主人と呼ばれるのですか?」

それは、王子にも最初に聞かれた。

美優の膝の上に小さな犬の姿でくつろぐワンに、ニナが聞く。

「ご主人は、俺が唯一守る者だからだ」

それは正しいが、言葉が足りない。

美優が弱い存在で、ワンが守っていると思わせている。


砦で、美優がたくさんの魔法粒を作ったのを見ていたニナでさえ、そう思う。

ニナが教えると、すぐに美優は魔法粒を作れるようになった。

だが、ワンが魔法粒に触れ続けていたのだ。

ニナの魔術では調整までは出来ずに、生活で使うには強すぎる魔法粒の魔力を吸収するために、ワンが触れていたとはニナに分かるはずもなく、ワンが手伝っていたようにしか見えなかった。



王宮に到着すると、馬車の扉が開かれた。

そこには、すでにルティンの姿があり、馬車から降りる美優をエスコトートする為に手を差し出していた。

美優は、ニナを振り返ると頷くので、その手に自分の手を乗せる。

馬車から降りると、ワンは美優の膝から飛び降り、足元を一緒に歩き始めた。

そして、馬車の周りに道をつくるように、近衛隊の隊列が出来ていた。


「王子殿下、何ですか? 拷問はないと言ったじゃないですか」

美優は迫力ある近衛隊に怯えて、ルティンのエスコートを振り払うと少し離れて歩く。


「ミユウを捕まえるのではない。敬意を込めた出迎えだと思って欲しい」

美優が名前を教えてから、ルティンは馴れ馴れしくミユウと呼ぶ。


一般市民に近衛の出迎えとか、ハードルが高すぎるから!

頑張れ、私!


美優が心の中で自分に叱咤している間に、ルティンはもう一度手を差し出す。

美優が嫌そうな顔をして、手を乗せるのに気が付いただろうルティンが小さく笑う。

「僕のエスコトートを光栄と思って欲しいな」

明らかに美優を見下している。


「カチン!」

美優が言葉にして睨みつけるが、迫力はない。


「ははは」

ルティンは、美優を不思議に思っていた。

血と泥で汚れていたが、見たことのない服装だった。

貴族の令嬢とは思えない振る舞い。だが手も髪も手入れされており、平民のものではない。

聖獣とさえ思えるワンもミユウも、今まで存在を知らなかったのだ。


魔獣が増えて来たことと関係あるのだろうが、なんとしてもワンの力は取り入れたい。

もしも他国に取り込まれるような事になっては、取り返しがつかないと分かっている。

「申し訳ない、僕に媚びない女性は珍しくって、からかってしまった」

少し照れたようにルティンが言うと、大抵の女性はルティンの要求を受け入れる。

そして、ミユウを使ってワンを使役獣にするのだ。



「私の国は、貴族とかなくて身分差のないところだから、王子様とか慣れてないの。

私の態度が悪かったら、ごめんなさい。

でも、それをからかわないで欲しい」

プイと前を向く美優に、ルティンは言葉がでない。


身分差のない国。

ミユウは、どこの国から来たのだろう?

貴族のいない国、未開の地だろうか?

奴隷として連れてこられたのを、ワンが逃がして連れているから守るべき者なのだろうか?



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