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増えた魔力

ルティンは現王太子アーノルドに不服があるわけではないが、弟の気持ちも分からないではないのだ。

長男は王位に就くために人一倍の努力を求められてきたことに比べ、デイルは末子として甘い考えがあるのも事実。

第一に、魔力を得る為に美優の喉を斬りつけたというのは、許すことが出来ない。

それは、目の前にいるフランシスも同じというのがわかる。

美優の目の間で、それを実行に移すのをやめているだけだと。


「ミユウ、弟が申し訳ないことをした。傷はどうだろうか?」

デイルに気を取られ、美優がケガをしたことを後回しにしていた、とルティンは慌てて美優の喉を見る。

傷は消えているようだが、服の襟元には血がこびりついている。かなりの流血があったに違いない。


「痛かったよ。

斬りつけてくるなんて思わなかった。

一緒に旅をした仲間だと思っていたから」

首に手をあて、美優がかすれた声で言う。

「ミユウ様、お声が。

まだ、完全に治癒されてないのですわ、無理して話さない方が」

カレンディアが、美優の肩にストールをかけて、血の付いた襟元を隠す。


立ち上がろうとした美優がふらついたのを、フランシスが支える。

フランシスの表情は変えないが、一瞬横目でルティンを見る。

美優がゆっくりとデイルに近づこうとして、部屋の空気が一瞬にして変わる。


ワンがデイルの身体を拘束するが、ワンもルティンも跳ね飛ばされる。


「よくも!」

ゆらりと立ち上がったデイルの顔は、別人のようだ。

「僕を拒んだな!」

禍々(まがまが)しい気配が辺りを包む。


バン!

大きな音がして美優に衝撃波が当たるのを、フランシスが盾となって防いでいる。

「フランシス」

大丈夫、と答える余裕さえないフランシスは首だけで、カレンディアに美優を保護するように指示する。

フランシスは、美優を後ろに隠すとカレンディアに預ける。そこにニナがか駆け寄り、剣に手をやり直ぐに抜ける体制を取る。


ワンがデイルを魔力で押さえこむが簡単にはいかない。

ワンとデイルの魔力は、大きな差があったはずなのに、今は均衡している。

それが、美優の血を取り入れたことだと、誰もが感じていた。

ただ、デイルに意識がないように思えるのだった。


「がああ!」

デイルが身をよじり大声を、出すと、ドンと音がして、小屋の屋根が吹き飛ぶ。


はあ、はぁ。

肩で息をしているデイルが片膝をつき、虚ろな瞳が辺りを見渡す。


ルティンはジリジリとデイルから離れる。

ルティンは、まるで意志がなきかのように、フラリ、フラリと歩みを始めるが、操られているかのように向かうのは美優の元。

デイルの目だけが、ギラギラと不気味に熱を帯びている。

「喉が渇くんだ」

デイルの視線に射抜かれて、美優がヒッと声をあげて後ずさる。


「デイル」

ルティンがグッとデイルの腕を掴むが、振り払われてしまう。

「デイル!」


「うるさい!」

ハッハッ、と荒く息を吐きながら前に進むデイル。

「いつも、兄上はもっと出来たと比べられ、3番目は遊べばいい、ってどういうことだ!

僕は出来るんだ、兄上よりも!」

背中を曲げて歩むデイルは苦しいのだろう。


ルティンは、弟を可愛がった、兄のアーノルドもだ。

自分達のような王家の負担なく、伸びやかに育って欲しいとねがうからだ。

兄のアーノルドは、感じるものがあったらしいが、ルティンは兄弟3人協力していけると思っていた。


それは、ルティンの勝手な願いで自己満足でしかない、と思いしらされる。それでも、デイルにこれ以上勝手をさせない。

美優を傷つけさせない。


「のどが乾くんだ」

デイルが美優に手を伸ばす。


ダーン!

ワンのしっぽがデイルに振り下ろされ、デイルが吹き飛ばされた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 三王子は美憂のお相手になって欲しくなさで甲乙つけがたいです。 王族の立場を優先するのは仕方ないけれど、異世界でひとり生きていかなきゃいけない美憂とは一緒になって欲しくないなあ。 美憂の天秤…
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