習慣の違いは大きな違い
美優はフランシスに屈した。
カレンディアに魔力を振るったフランシスに激怒したのだが、フランシスが土産にと出した野菜とフルーツに屈した。
まるで我が家のように食事を一緒に食べているフランシスを見て、ルティンは探しに来てくれない、と美優は一瞬だけ思ってしまった。
自分達が逃げたくせに、追いかけてこないというのは甘えだと分かっている。
「王様ってヒマなの?」
美優はフランシスにコーヒーを淹れながら聞いてみたが、ギロリと睨まれてしまった。
「ごめん、ここに来るまで簡単じゃなかっただろうし、時間もかかっただろうから」
「王がヒマな国などないだろう?無能か賢王かの違いはあるがな。
だがな、優先順位はあるんだよ。
離れていたら、ミユウを口説けないからな」
顔を赤くしたのは、言ったフランシスではなく、言われた美優である。
「そんなこと言ったって、お妃様とか、寵姫様とか、後宮とかあるんじゃないの?」
王様だもん、と美優が確認すると、フランシスは、え?とばかりに何げなく答える。
「普通あるだろ?」
ガタンと立ち上がった美優は、フランシスが描いた転移陣を指さす。
「すぐに帰れ。
もう2度と来るな」
感情のない言い方に、かえって美優の本気度がわかる。
「私は一夫一妻で育ちました。一度でも浮気すれば離婚も出来る国です。
複数の奥さんで共有する夫などいりません。
あー、やだやだ、問題外だわ!」
美優が、汚そうにフランシスを見る。軽蔑してます、と顔に書いてある。
「ミユウ様、こちらの国の王族には正妃の他に側妃がいるのです。
ウズデロイド陛下には正妃はおられません」
フランシスを庇うのは、カレンディアだ。
「だからなに? 他の女のところに通うのを認めるのが正妃というなら、そんな男いらない。
お妃様にならなくたって、幸せっていっぱいあるはずよ」
美優の言葉に、カレンディアがポロポロ涙を流す。
「はい。
妃になりたいんじゃない、好きな人の側にいるために妃になる必要があっただけ。
好かれたかった」
もう終わりました、とカレンディアが顔をあげるが、涙は止まらない。
「だから、出て行って」
美優は出口を指さして、フランシスを見る。
ワンとニナは無言に徹して、部屋の隅に控えている。
「優先順位と言っている。
後宮の女に愛情があるわけではない、王の義務だ。
すぐにでも解散させる」
「フランシス、貴女も王太子も同じね。女性の方は愛情があるかもしれないのに」
王太子アーノルドが婚約者を変えようとしたことで、カレンディアは美優を殺そうとした。それほどアーノルドを好きだったのだ。
「俺は間違えない。美優が一番大事だ。
後宮が障害というなら、必要なかろう。
自分が好かれているからと、受け入れないといけないのか?
それなら、ミユウは俺を受け入れないといけない。
第一、後宮の女達は実家の権力で後宮に入り、国の金で贅沢をする為に俺に媚びているだけだ」
美優に言うフランシスの言葉は、カレンディアにはきついはずだ。
「俺は、ミユウに好かれたい。だから、後宮は解散させる」
フランシスは帰る気はない、とばかりに動こうとしない。
「そんな簡単に出来るはずが」
後宮なんて、陰謀と権力の渦と、美優はドラマのように思っている。
「俺は独裁者だ、問題ない」
「問題大有りよ!」
美優がドンと机をたたいて、コーヒーがカップから零れるのを、ニナが慌てて片付けだした。




