森の家
美優が目覚めたのは2日経ってからだった。
「ミユウ様」
側には、カレンディアが付いていて、目覚めた美優に嬉しそうに笑った。
「どうぞ、カレンディアとお呼びください」
美優は一気に倒れる前の記憶を思い出し、ベッドで飛び起きた。
「あ、カレンディア、あの、ごめ」
死なせてあげれなくって、ごめんなさい、と言おとうそした言葉はカレンディアに止められた。
「ミユウ様、謝らなければいけないのは私の方です」
カレンディアは、ミユウの身体にそっと触れる。そこはカレンディアが剣を刺したところだ。
「痛かったでしょ、あんなに血を流して。申し訳ありません、お身体に傷をつけてしまいました」
首を横に振って、美優は答える。
カチャン、と音をたててカレンディアがサイドテーブルにスープの入った皿を置く。
「ずっと眠っておられましたから、空腹でしょう? ゆっくりお食べください。
夕食には、キチンとしたものをお持ちしますが、今はこの方がお腹に優しいです」
美優が皿を取り、スープを飲み始めると、カレンディアは美優が寝ている間のことを話した。
「ワンが私達を背に乗せ、王宮を飛び出したのです。
私を助けたのを、王太子殿下に見られて、ミユウ様のお力に気が付かれました」
一瞬だが、王太子と言った時に、カレンディアの表情が歪む。
途中で気が付いたカレンディアが、ワンとニナを誘導して、今いる小屋に案内したらしい。
ここは、ニードルフ公爵領に近い森にある狩猟小屋だと言う。
きっと国外に逃げたと探すだろうから、裏をかいて国内に隠れようと、カレンディアが提案したようだ。
さすがは王太子妃教育を受けているだけある、王太子や王の思考を読んでいる。
「ここに落ち着いて、朝を迎えたのです。
それは美しい朝陽でした。いつもと同じ朝なのに、初めて見るぐらい美しくって。
生きていていいのかな、って思ったのです」
美優に剣を向けた時と同じ人間かと思うぐらい、カレンディアの雰囲気が違う。
ずず、とスープをすすって美優がカップに口を付けたままカレンディアを見る。
「カレンディアを見た時、すごい美人だと思った、羨ましいぐらいにね。
だから死ぬのはもったいない、って思ったの。
巫女が欲しいからって、婚約者を乗り換えるような、女をバカにした王太子にもったいない、って」
私がもらっちゃおう、って小さくゴニョゴニョ美優が言う。
「私はもちろん、ミユウ様のものですわ」
その言葉を聞いて、美優がガバッとカレンディアの手を取る。
フフフ、と笑みを浮かべてカレンディアが、美優を手を放しスプーンを持たす。
「まずは食事をなさってください」
ワンとニナが狩りから帰ってくるころには、美優はベッドから出て歩き回っていた。
「わ、ウサギ」
シチュウかな、焼き肉かな、と美優がナイフを手に取る。
「ミユウ様、私にもお手伝いさせてください。
お料理したことありませんが、これから覚えますわ」
侯爵令嬢のカレンディアが料理したことないのは、当たり前のことだろう。
「じゃ、カレンディアは私にマナーとか教養を教えてくれる?」
「お任せくださいませ」
ワンとニナが食料調達、美優が調理、カレンディが手伝いと美優の勉強の教師、とそれぞれが仕事を分担して、穏やかな生活が始まった。
いつまでも続くことはない、と美優たちも思っていたが、思ったよりも早く、その生活は壊れた。




