口の悪い王
王が突然、消えた。
執務中で、たくさんの人間が見ていた。
魔法陣もなく、忽然と消えたのだ。王宮は騒然となり、国力をかけて王の探索がされていた。
王の仕事は多岐にわたる、それが全て滞り、生死さえわからない。
ウズデロイド王宮では、王家史上ありえない騒乱が起こっていた。
フランシスを探しながら、王に成り替わろうとする者達が暗躍を始めたのだ。
その王は、王都から離れた田舎にいた。
自分を殴った女を魔術で仕返しをしようとしたが、ワンの魔力で押さえられていた。
膨大な魔力と魔術を極めた人間であると絶対な自信があっただけに、フランシスはワンを睨むように見つめていた。
かたや、フランシスを殴った美優は、ニナに魔術で濡れた髪の毛や服を乾かしてもらっている。
フランシスは、思ったとおり魔術が使えないらしい、と美優を認定する。
市民の服装であるが、男二人の美貌は平民ではありえない。
感じる魔力は男が飛び抜けている、一人の男は自分では感知しきれない程巨大だ。
それに比べ、背の高い方の女は大きな魔力があるが、小さい方は魔力は感じないし、容姿も普通にしか見えない。
全員が、この小さな女の世話をしているようにしか見えない、どういうことだ?
「お前名前は?」
たしか背の高い女に名前を呼ばれていた、と覚えているがフランシスは美優に名前を聞く。
美優は呼ばれてフランシスを改めてみるが、デイルにおよばないものの美丈夫である。
「こっちの人って、みんな綺麗なのね」
高位貴族になる程、生まれた時から美的感覚が育てられ、伴侶にも美しい者を求めていくと、美人の子供が生まれて行くのは当然である。
王族など、その典型だろう。
「私は、山本美優。ミユウが名前よ」
さっきまで、フランシスに威圧されていた美優だが、慣れて来たらしい。
「さっきはごめんなさい。タブン、私達が貴方を呼んじゃったのよね?」
魔法陣のないところに転移は出来ないと聞いているから、多分ケガをして血を流した自分が魔法陣なしで呼んだのだろうと思う美優である。
「なのに、痴漢よばわりして吹き飛ばしちゃって」
「痴漢?」
反応したのは、ニナだ。
「うーん、女性の同意を得ずに身体に触ったり、裸を見たり、性的行為を強要する人」
真面目に答える美優に、皆の注目が集まる。
「俺はその痴漢とかではない。何故かここにいたんだ」
フランシスの言うことは最もだ。
「だから、ごめんなさい。
裸だったから逆上しちゃって」
吹き飛ばすなんてやりすぎたわ、と美優が小さく付け足す。
「全くだ、あんな貧相な身体、隠す程でもあるまい」
パッシン!
フランシスの顔に手袋が投げつけられた。
「決闘だ!」
手袋を投げたのはデイル。
だが、その時にはワンの力で、フランシスは吹き飛ばされていた。
ニナは、ショックを受けている美優を抱きしめている。
「ニナー!
あいつサイテー!」
ニナの腕から顔を出して、美優がフランシスを指さす。
まるで、やってしまいなさい、とでも指示をする悪女のようである。
ガサ、河原を転げたフランシスがユラリと立ち上がる。
「よくもやってくれたな」
額は切れて、血が流れている。
その正面にはデイルが立っている。二人とも手に魔力を集め、攻撃のタイミングを見計らっている。
二人の魔力量を考えると、命を失くすかもしれない。
「ワン、二人を防護壁で封じて!」
デイルとフランシスの周りに防護壁が張り巡らされ、大きな魔力を使うと相手だけでなく自分も同等に被害が及ぶと分かった二人は、魔術は諦めて取っ組み合いのケンカになった。
王族として生まれ育った二人には、ケンカなど初めての体験である。
剣も魔術もなく、お互いの拳と蹴りで相手にダメージを与えようとする。
二人のケンカを見ていて、美優は思い出した。
そうだあの時、私はワンの母親みたいなものだから、父親は誰だろう、って思たんだ。
あの人が、ワンの父親?
人間に見えるけど?




