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王子様は王子様でした

森の中、下草を掻き分け進む一群。

「何故、僕がこんなことしないといけないんだ」

文句言いながら、先頭で進むデイルの後をニナ、美優、ワンと続く。


「殿下が、ウズデロイドに入ったら魔術は控えようって言ったんですからね」

聞こえましたよ、と美優がわざと大きい声で言う。


「ワンの魔力は大きいからね、何かの弾みで感知されたら大変な事になる」

他国もワンを欲しがっているのをデイルは分かっている。

だから、魔術の行使を禁止し、街道を避けて林道に入ったが、人通りがないらしく草が生い茂っている。


バキバキ、ボキボキ。

腰まである草を掻き分ける音と、草を踏みしめて進む音が響いていく。

ニナは後ろを歩く美優に全身の神経を集中している。

山道に入った時に、泣き言を言っていたのに、今は寡黙に歩いている美優。

その順応性にいつも驚かさせられる。


「ご主人、どちらに向かっているのですか?」

マルセウス王国から逃げ出すのが目的だと分かっているが、この方向を選んだのは美優なのだ。

「うーん、どこも見たことないからどこでもいいの。知らないことばかりだから」


美優は楽しそうに言うが、慣れない歩きで、足のマメは潰れて痛い。

「ミユウ、ちょっと休憩しよう」

デイルが皆に確認して、美優の元に寄ってきた。

「足出してごらん」

美優の足元に屈むと、治癒をかけて足のマメを治す。


ドキン・・・

ワンを手なずける為に、自分の機嫌を取っているのだと思っても、美優の胸は高鳴る。

「ありがとうございます」


「ずいぶん我慢してたろう? 早く言えばいのに。

治癒の魔術も少しは出来るから」

まるで本当に心配しているように聞こえる。

私も治癒したことあったのに、魔術を練習しても上達しない。やっぱり、血を媒介にしないとできないのかもしれない。

「王子様は大変ですね、こんなことまで気にかけて」

こんなこと言いたいんじゃないのに、魔術が出来ない自分が情けなくって。


(うつむ)く美優に、デイルは声をたてて笑った。

「ハハ、美優が出来ないのは分かっている。

女性を守るのは当然のことだ」

「そのうち出来るようになるから!

年下のくせに生意気」

いー、と舌を出す美優にデイルの笑い声が大きくなる。


「こんなに笑ったのは久しぶりだよ。

見かけも中身も絶対、僕より幼いって」

アハハ、とデイルの笑い声は続く。

「ごめん、バカにしたんじゃないんだ。

僕は騎士だから、弱い女性は守りたいんだ。守らせて」


ドッキーン!

美優の心臓は破裂しそうである。

ダメよ、いくら顔が良くたって、ワンのオマケと言われたのよ。美優は心の中で自分に言い聞かす。

「お、王子様は口が上手いから、女の子はメロメロだよね」


一瞬、口を閉じたデイルだったが、すぐに笑いだす。

「どもって、何かと思えば。

おだてているの? それとも焼きもち?」

あー、ダメ、と言いながらデイルが口を手で押さえる。

「ミユウはメロメロじゃないって言いたいんだろう? どもったけど」

口を押え(うつむ)いているけど肩が小刻みに(ふる)えて、笑いを耐えているデイル。


「ちょっと、失礼よ」

美優が(かが)んで、デイルを覗き込む。


「こんなことレディはしないって。君って不思議だよね。

僕が王子って知っている?」

「第3王子様でしょ?」

美優が真面目に答えると、デイルはさらに笑い出す。


「殿下、ミユウは貴族のご令嬢のように言葉で駆け引きを得意ではないのです」

ニナが、ミユウに助け舟を出す。


「知っている、だからこんなに笑えるんだよ。ずっとこのままでいてよ」

デイルは、美優の前に手を差し出す。

「お手をどうぞ、巫女姫様」


「治癒してもらったので一人で歩けます。ありがとうございました、王子様」

デイルを置いて歩き始めた美優の後ろで、デイルが驚いた顔をしたが、直ぐに笑い出した。


「もしかして、言葉の駆け引きのつもりだった?そのままじゃないか」

アハッハ、行くよ、と笑いながらデイルがニナとワンを(うなが)す。

表情豊かな美優との旅は、デイルにとって思ったより快適だった。





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