魔獣を倒す者
ルティンは王都に近い街に魔獣が現れたとの連絡を受け、すぐに向かった。
そこには見たこともない魔獣が暴れていた。
ボックズよりも大きいく動きが速く2本足歩行をしている。
街の警備隊が対戦したが、討伐出来たのは3匹。
ルティンの隊は魔獣の出没が増えてから結成された、魔獣討伐部隊である。武具も魔獣の魔力を受けないように魔術が施されている。
馬を魔獣の足元を駆けさせ、至近距離から魔弾を打つ。
「殿下! 奥の2匹討伐完了」
魔獣を追いかけていた騎士達が戻ってくる。
「よくやった。こちらも一掃した」
ルティンは3匹、反対側からも1匹討伐したと騎士が戻ってくる。
「全部で9匹か、ケガはないか?」
ルティンが倒れている魔獣の確認をしながら、騎士隊達に労いの言葉をかける。
「それにしても、初めて見る魔獣だな。どこから現れたのか」
この街は山や森からは遠く、魔獣が隠れ住んでいるような場所からは遠い。
これほどの大きさの9匹の魔獣が、誰にも姿を見られずに生息地から遠いこの街に来るなどありえない。
「どこかに、転移の魔法陣がないか調べよ」
ワンは転移魔術を使うのだ。魔力の大きい魔獣が転移することもありえるのでは?
「魔法陣ですか?」
騎士の一人が確認してくる。
「これほど魔獣が現れるのは、おかしいと思わないか?」
まるで転移したかのような出現であった。
今までは、田舎の町はずれや、草原、森など目撃者が少なかった。今回は街中ということで、たくさんの人間が出現を目撃したのだ。
突然、現れ暴れだした、皆がそう言った。
ワンは魔法陣がなくとも転移できたが、動力となる膨大な魔力があってこそだ。
街に現れた魔獣は大きな魔力を持っていたが、そこまでの魔力はない。ルティンが即座に斬り捨てるのを出来たことが証明する。
ワンが空から降りて来た剣を持つのを見て、ルティンも剣に魔力を纏わせ空気の振動を刃にする魔術を訓練した。
ルティンは優れた剣技で、ワン程の魔力がない分を補う魔術を身に付けた。
だから、ボックズよりも大きな初めて対する魔獣であっても、瞬時に対応が出来た。
ワンには、まだまだ及ばないのは魔力量に大きな違いがあるからだ。
「殿下、お見事ですね。これは3匹というより3体というべき大きさの魔獣ですね」
「ワンの剣を見て、魔術を組んでみた結果だ。早速、軍で取り入れたい」
王都に近い街とは言っても、報告を受けてすぐに飛び出しての戦闘だ。
疲労が取れない。
何故だか、疲れているからミユウの顔を見たい、と思ってしまった。
弟のデイルからは、国境を超えると連絡が入っていた。
我が国の神獣が他国に向かうなど許される事ではないが、止める術がないのも事実である。
だからこそ、第3王子が同行することで体面を保っているのだ。
国境の街は、ここからは遥か遠い。
いくらワンが付いているからと言っても、ミユウは自分の身を守れない。
ニナはちゃんと守っているだろうか。
デイルが付いているから動向の連絡が来る事を分かっていても、デイルと一緒に居て欲しくないと思う。
出来るなら自分が側に居たい、心配で仕方ない。
「バリー、王都に戻り報告を済ませたら、ミユウの後を追うぞ」
街の警備隊に後始末の指示を出しながら、ルティンはバリーを振り返る。
「殿下、それは」
バリーは言葉を飲み込む。
ワンではなく、神獣の巫女を追うと言ったルティンを見つめていた。




