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マルセウス王国第3王子

街で1泊して、美優達は国境の街に向かっている。

「僕を置いていこうとしても無駄だから」

デイルが美優に引っ付くように歩いている。朝早くワンと二人で出立しようしたがバレてしまった。


「ミユウ、この先は国境だ。神獣が他国に行くなど許されることではないんだよ?」

デイルは笑顔を浮かべているが、王子として認められないと言っている。

「私は、このどこにも属していない。

マルセウス王国にお世話になったから魔獣討伐のお手伝いはしたわ」

街道を進むのに、美優は馬車を雇って4人で乗っている。

長閑(のどか)な田舎道を古びた馬車が、歩く人々を追い抜いていく。


美優は窓の外を珍しそうに覗いている。

ニナ、あれは何?

殿下、あれは何?

美優は、好奇心いっぱいに聞いてくる。


ミユウは何者だろう?

このどこにも属していない、そう言った。生まれた国はどうなったのだろう、とデイルは考えてしまう。

あの時、まるでミユウが挙げた手に反応したように、空から剣が降りて来た。

王宮に来てからミユウと一緒にいたけど、魔力は弱く、魔術を使う事は出来なかった。

だから、ミユウがあの剣を呼んだと思うのは間違いだろうが、そう見えたんだ。


「国境を越えるのか?」

デイルが美優とワンに確認してくる。

「わからない、でもいろんな物を見てみたい」

美優だって王子達には腹が立ったが、トラブルを起こしたいわけではない。


「じゃ、僕が一緒に行くから、お忍びで外遊するということではどうだろう?

僕だって、美優には好きにさせたい。

あくまでも、マルセウス王国の一員であると意識を持ってほしいんだ」

美優が頷いたのを見て、ニナも安心したようだ。

「ミユウ様と殿下が仲たがいしても、私はミユウ様に付いて行こうと思ってました。

警護は私しかいませんからね」

「ニナ好き~」

美優がニナに抱きつくのを見て、デイルは溜息をつく。


どうして僕にはなつかないんだ、僕は王子なんだぞ。

僕の気を引こうとしているのでもなさそうだし、とデイルは馬車に揺られながらミユウを見ていた。



「見て、街が見えて来た!」

馬車の窓から身を乗り出し落ちそうになりながら、美優が街を指さす。

「ミユウ様、気を付けてください。落ちてしまいます」

ニナが、美優の身体を押さえる。

「二人とも、あの街に着いたら着替えよう。軍服はこれからはまずいかも」

美優がお金の袋をデイルの目の前に差し出す。


そういうことは知恵が回るらしい、とデイルはまた美優の事を考えている自分に気が付く。


「それは神剣を売った大事なお金です。とてもいただけません」

ニナが辞退しようとするが、美優は許さない。

「軍服って目立つし、他国では絶対ダメでしょ?

こういう時の為のお金よ、バンバン使って。

でも殿下って、町人風の服着ても浮きそう」

フフフと笑う美優が、デイルには眩しい。


「どういうことだ?」

「殿下は何着ても王子様になっちゃうのかも、ってこと」

でしょ、と美優がニナに確認を取れば、ニナもそうですねと笑う。

「ミユウ様、ワン様も十分目立ちます。

初めて見る衣装を着られてますから」

ワンは、アニメのキャラと同じ衣装を着ている。この世界で見たことないと言われても仕方ないのだ。

「たしかに、ワンも着替えましょうか」



街に着いて、古着屋でデイルは初めて古着に手を通した。

「どうして僕がこんな事を」

文句を言いながらも、デイルはお忍びで他国に行くことに好奇心をごまかせない。

ワンは美優の着せ替え人形となっている。

あっちの役でなくて良かった、と安堵するデイルであった。




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