ルティンの帰路
魔獣が討伐され美優が消えた後、ルティン達は急いで帰途に就いた。
街には寄らず街道を最短距離で駆ける。
「味がしないな」
ポツンと出た言葉に、ルティンが自分でも驚く。
行きも同じ食事だったはずだ。野営で軍の食事に味を求めるのは間違っていると分かっているが、どうして違う?
ミユウがいない。
食事作りを手伝ったと、皆に話をしながら配って回っていた。
ミユウの後ろには大鍋を咥えて歩く神獣ワン。
温かい食事だった。
神獣の配膳で毒見などしなかった。
デイルもいた、兄弟とはいえ食事を一緒にすることは少なかった。王家とはそういうものだ。
「殿下」
側近のバリーが食事の器を持って来た。
「食事が静かですね。ミユウ様はよく話されてましたから」
「ああ、そうだな。だが、明日には王都に着く、直ぐに他の任務が入るだろう。
食べて少しでも休め。明日の朝も早いぞ」
ルティンは自分に言い聞かすようにバリーに言うと、少し離れてバリーは寝袋に入った。
ミユウは魔獣達との戦闘が怖くて転移したのだろうか。
無理もない、軍人でもない若い女性に戦場は辛かったのだろう。
誰が見ても、ミユウは保護が必要な弱い女性だ。
だからこそ、ワンが美優を守っているのだろう。
明らかにワンの方が魔力が強いのに、ワンがご主人と呼ぶ女性。それを当然のようにミユウは受けていた。
あの神々しい剣は、ミユウが挙げた手に導かれるかのように空から降りて来た。
ミユウは何者なのだろう?
他国の僻地の住人だと思って王にもそのように報告したが、それが間違いではないか?
ワンがその僻地から連れて来たと思い込んでいた。
ミユウはケガをしていた、大丈夫だろうか?
ちゃんと戻ってきてくれるだろうか?
寝ないといけないと思っても、ミユウの事を考えるのを止められない。
ルティンは空になった器を横に置くと、水筒を手に取る。
渇いた喉を潤して寝袋に入るが、またミユウの事を考えてしまう。
ワンは人型を取れた。
それはどれほどの魔力がいるのだろう? 未知なる魔術、まさに神獣だ。
ミユウは我々とは異質だ、人間なのだろうか?
王宮に戻り着いて、ルティンは王に報告に行くと王と王太子が待っていた。
「陛下、第一部隊ただいま戻りました。
神獣の力は想像以上です。隊では軽い負傷者がでただけです。
ワンは人型となり、空から召喚した大剣をあつかいました」
「その大剣の事を詳しくしりたい」
王太子が、デイルより急報が届いている、と言う。
ルティンはデイルの書簡を読むと掌を強く握った。
「あの剣を売っただと!?」
あの女、と言いそうになってルティンは口を押える。
ルティンの慌てる様子を見て、王太子がやはりな、と思う。
「大丈夫だ。すぐに金を持たせた使いを、その街に一番近い陣のあるところに転移させた。
すでに武具屋には着いているはずだ。
護衛の者もその街に向かわせてある。
デイルは剣の詳細はかいてないのだが、それほどの物なのか?」
王も王太子の言葉を興味深そうに聞いている。
「空から光を纏った人の背ほどある大剣がワンの頭上に降りてくると、ワンは人型に変化しました。その剣を一振りするだけで、魔力の強力な波となり、木も魔獣も斬り捨てられました。
まことに光り輝くと言うべきか、装飾された美しい剣でした」
ルティンが手を広げて剣の大きさをアピールする。
「その場を見れたお前が羨ましいよ」
それは嘘偽りのない王太子の言葉。




