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波乱の予感

ワンが神獣と言われても、神獣がどのようなものなのか誰にもわからない。

伝承の中の架空の生物であったのが、目の前に現れると、期待をしたり、恐怖を持ったり様々だが、大きな脅威には間違いないのだ。

言葉を理解し、知能があっても人間に協力的であるとは分からないが、マルセウス王がワンを神獣と披露するのは、自国に美優がいるからだ。

どこの国よりも早く、ワンを自国の神獣と認知させる必要があるからでもある。


王は次にワンの隣でルティン王子にエスコートされている美優を紹介した。

「神獣の巫女姫であられる。

我が国の協力者として、王宮に滞在することになった。

巫女姫を我が国に迎えられた事は、大きな喜びである」

広間が埋めるような大きな喚声に包まれる。

神獣の巫女姫など初めて聞く言葉だが、言った者の勝ちだ。王が新しい地位を作ったのだろう。


優しい王子にエスコートされ、人々から祝福されているようで、美優は嬉しかった。

一人この世界に来て、魔獣に襲われ死にそうになって、言い様のない不安でいっぱいだったのだ。

だから、ちょっと気が大きくなってしまった。

「私がお手伝いできることが、あればいいのだけど」

ルティンに出会ってから、王都に来る間の宿も衣服も食事もお世話になって、王宮で生活をみてもらっている。


「それは、陛下も王太子殿下も喜ばれるだろう」

その言葉を待っていたとばかりに、王子様は微笑む。

ここ数か月、魔獣の出現が多数報告されている。

ワンの魔力があれば、討伐しやすくなる。

ワンはミユウの側を離れないから、ミユウを連れて行くことになるだろう。



あ、ステキ。

美優はルティンの王子様スマイルを見てしまった。

生まれた時から王子として人目の中、笑顔は顔の一部のように身についているルティンは、世の中総庶民の世界から来た美優には麗しすぎる。


着飾りまるで披露会のヒロインになったかのような高揚感、エスコートするイケメンの王子様に好意を持っても不思議ではない。

異世界転移のご褒美、と浮かれている美優が気づくはずもない。

ルティンが国の為に、自身を生け贄として美優を操るのが、王族としての責務と思っているということを。



沢山の招待客の中、隣国ウズデロイト王国の外交官が美優を注視しているのを気が付かないのは当人の美優だけだ。

そっとルティンが美優を引寄せると、一瞬で美優の頬が真っ赤に染まる。



デイルが平然な顔をしながら、燃え立つ程の怒りを覚えていた。

王子なら誰でもいいんじゃないか、単純な女め。

だが、美優は次期王への近道だ。表向きはご機嫌を取らねばならない。



婚約者の侯爵令嬢をエスコートしている王太子も、美優が頬を染めるのを歯がゆい思いで見ていた。

あの娘を手に入れれば、周辺国統合も夢ではないかもしれない。

今はルティンに預けるとしても、ずっとそのままではおけない。

神獣の手前、正妃でなければなるまいが、あの娘に正妃を務める能力があるように思えない。




神獣の情報はすでに国外へと出ていた。

神獣がどれほどの力か、巫女とは何者なのか、マルセウス王国が神獣を独占するのを阻止しようと動きだす。

神獣を手に入れれば大きな力となり、神獣が暴れれば、その地は壊滅するだろう。





「神獣とは、この目で見てみたいものだ」

フランシス・リー・ウズデロイトは、隣国マルセウス王国にいる外交官から魔術で届いた急報に目を輝かせる。

「巫女姫か、どれほどの価値であろうか」

何を思い浮かべたのであろうか、笑みを浮かべる表情に、側近達に緊張が高まる。

「陛下、すでに巫女姫の元に諜報を向かわせる手筈をしております」

指令書にサインをもらうべく、側近が机に紙面を広げる。

「早いな」

「数日前に、王宮に登城した令嬢がいるのに隠匿されていると情報がありましたので」

フランシスは絶対なる権力を持つ若き王だが、権力をささえる部下も有能であった。



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