英雄二人
今回の戦争は帝国側の勝利で幕を閉じた。
「あ…ありがとうございます。」
負傷した騎士団員の手当を行う。といっても致命傷などは負ってはいなかった。
多分この人はリアムの側で戦っていたのだろう。リアムには内緒で私はリアムに要塞に張った結界の縮小版の結界をリアムの体を包むように張っていた。
しかし結界を人に張るなんて初めてだし、効力が心配だった。もしかしたら効力が逆になっていて攻撃を集めてしまうかもしれない…だとか、途中で結界が切れてしまうなどの心配していたのだが杞憂だったようだ。
リアムのそばで戦っていた人はほとんど無傷だったが
スカーレットのように大怪我している人もいた。
その人達にも手当を行うと、なんだか変なものを見るような顔で礼を言われた。
私…何かしただろうか。
なんとなく、距離があると言うか…。いや、もともと仲良くなんてなかったからこのくらいの距離で正解なのか。
「フローラ、ちょっと来てくれないか。」
「?…どうしたの、リアム。」
リアムに呼ばれたので他の団員は入れないように団長室に入る。
「フローラ、今回の戦争の噂を知っているか?」
「噂?」
噂なんて出回っているのか。そんなこと聞く機会なんてないしな。
あっ……もしかして。
「疫病の事!?」
抗ズウェラ薬は第一騎士団が持ってきたことにしていたんだった。実際は持ってきていないのに持ってきたことになっていたらおかしいと思うはず。
「ズウェラは反帝国軍が帝国軍を壊滅させようと流したものだったらしいんだ。フローラが薬を作ってくれたんだろ?」
リアムは薬を持ってきていないことに気づいていたんだ。
「やっぱり…私疑われているんだよね。」
不自然なことをしたことは認める。魔法なんて知らなかったら不自然に見えてしまう。
「いや…それは無いよ。薬は持ってきていたことで押し通してるから。それよりフローラ…人間のために魔法を使ってくれてありがとう。」
改めて言われるとちょっと照れる。自分で決断したこととはいえ、私はなかなかの勇気を振り絞ったと思う。しかしそれはリアムやケイシアといった優しい人間に出会えたからだ。
実際リアムは魔女と知っても愛情を向けてくれているのだし。
「疫病じゃ無いなら何が噂になってるの?」
「捕虜から聞いた話なんだが、その捕虜は捕まる直前に奇襲部隊から伝書鳩を受け取ったそうなんだ。その内容は奇襲部隊はたった一人の女に襲撃され壊滅寸前という情報が記されていた。」
嫌な汗が落ちるのに気づいた。
「その襲撃した女の特徴が誰かさんとそっくりで…噂になっているんだけど…知らない?」
気まずくなりゆっくりと視線をリアムから外す。しかしそれは何かやましいことがあると肯定してしまっているようなものだった。
「多分…それは…私です。」
申し訳ないような恥ずかしいような。恥ずかしさのあまり、涙がこみ上げてきた。
「虹色の戦乙女……なんてあだ名がついてるよ。」
また、あだ名つけられた!…しかし今までの中で一番現実味のあるあだ名ではあるが。
「リアム…私をどうする気なの。」
さっきの言い方からして、なんて事をしてくれたんだ!みたいなお叱りがあるのかと思っていた。
「どうする気もないよ。」
リアムは私が何か勘違いしていると思いクスッと笑った。
「ただ虹色の戦乙女がフローラだってことは周知の事実だし、彼らにも言われたしな。」
「彼ら?」
彼らというのは私が手当てした軍人達のことだった。なんでも怪我が回復したから(私の治癒魔法で急激に回復した)第一騎士団に怒鳴り込みにきたらしい。その内容が私を冷遇するな、というものだった。
そして第一騎士団に私の素晴らしさを熱弁したんだとか。話の内容を聞くとかなり盛られていたが概ね私がした事と合っていた。
「軍部も騎士団もフローラの業績が正当に認められることを望んでいる。帰ったら何かしら勲章が貰えるかもね。」
勲章とかは要らないけど、それは私とリアムの結婚が認められるのではないだろうか。
「勲章なんかよりもっといいものを貰おうと思うわ。」
ただ、私はリアムが欲しい。リアムは私のもので私はリアムのものだ。
******
「この前まで平民だった女が公爵に?」
「いくらなんでも与えすぎだろう。」
皇宮の広間には貴族や有力者が集められていた。集められた理由は戦争で成果を上げた者達への褒美を皇帝が与えるのを見届けさせるためだ。
そして今ダイヤモンド公子…いや、爵位を受け継いだため今はダイヤモンド公爵とともに皇帝の前にいるのは先程公爵位を受けた女人、フローラだった。
たいそうな美人ではあるがその顔が彼女の上げた戦果をにわかには信じがたいものにしていた。
これが筋肉がついた大女だったら信じていたかもしれない。
「静粛に。」
ざわざわとする広間は皇帝の一言で静まり返った。
「フローラ、そなたの功績を称え公爵位を授けたが何か申したい事はあるか。」
「身に余る栄誉でございます。そして申したい事ですが、私の隣にいるダイヤモンド公爵との結婚を認めていただきたいのです。」
公爵という高い身分になったフローラとリアムには結婚を阻むものはなかった。身分を理由に結婚に反対していた皇室だったがその理由となる身分が解決してしまった以上、認めざるをえなかった。
「よかろう。皇帝である私が認めよう。ここにいる全員が証人だ。」
二人を祝福するもの、二人の陰口をいうもの、どちらでもないもの、などと分かれたが皇帝が認めた以上表面上だけでも祝福しないといけなくなった貴族達が二人に向かって拍手を送る。
やっと認められたことに私は安心したような気持ちになった。
フローラは公爵位を受けてすぐにリアムと結婚し、ダイヤモンド公爵夫人になったので彼女が『公爵』を名乗る事はなかった。
やはり彼女は謎に包まれている。たった一人であれだけの戦果を上げられたのか。その真実を誰もが知りたがったが、事故でダイヤモンド夫妻が亡くなり真実は闇の中になってしまったのだった。




