表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
84/259

優しい魔女

子供の手を引いて要塞まで戻ろう。流石に小さい子を見捨て自分の我儘を押し通せるほど私の精神は強靭では無かった。


「お母さんーー!!お母さんーー!!」


しかしなかなか子供はその場から動いてくれない。


「ここ危ないよ、死んじゃうよ?」


そう言っても子供にとっては危ないも死んじゃうもいまいちピンと来ないのはわかっている。

無理やり引きずろうとすると子供が怪我をするかもしれないのでなかなか強行手段に移れない。


「あれ?まだ人が残っていたのか。」


私でも子供でもない第三者の声に私はまだ避難していない住人がいるのかと声の方向を向いた。


そこには敵側の反帝国の腕章をつけた兵士が十人ほどいた。


(なんで敵がこんな要塞の近くまで進軍出来ているの?)


身体中に緊張が走る。目の前にいるのは敵で私達を殺そうとしている。

十人…と人数が少ないことからまだ敵は何処かに潜んでいるだろう。このまま要塞に向かって軍や増援に来た第一騎士団が出払っている時に奇襲を仕掛けにきたのか。


この街は戦場のすぐ横だが目の前の敵に集中している帝国軍は気づけない。知らない間に要塞奇襲の準備のため避難が完了しているこの街に身を隠していたのだろう。


(そして姿を現したということは襲撃の準備はもう整っている。)


「か弱い子供と綺麗なお姉さん、こちら側に投降した方がいいですよ。」


敵の一人が余裕な表情でこちらに投降を促す。私が帝国兵の服でも着ていたら殺されていただろう。ただの普通の服で良かったと初めて思った。


「おい、随分と豪華な身なりだな。」


敵兵の一人が私を舐め回す様に見た後そう言った。


(あっ。しまった。)


前に着ていた服はボロボロだったのでリアムが何着か服をくれた。シンプルなデザインだが使っている生地などは高級だ。


(要塞は私の結界が貼ってあるから外からの攻撃は受けないけどこの敵達を野放しにはできない。)


私の結界は人の出入りは防げないのでこの敵兵達が堂々と門から攻め行ったら普通に要塞内に入れてしまう。もし要塞に入られなくとも帝国軍の背後を取らせてしまうことになる。


「はい。大人しくそちらに…。」


私は両手を上げて投降の意思を示す。ゆっくりと敵兵の方へ向かう。私は丸腰なので攻撃の恐れはないと思っているのだろう。

私が敵兵の近くまで行けば、敵兵は私を拘束しなければならない。その瞬間、私を拘束しようとした敵兵は崩れ落ちた。文字通り崩れ落ちたのだ。


私が触れた部分から急速に腐敗し体は崩れ落ちた。


「投降するわけないでしょ?」


その様子は私の体に隠れ子供には見えない。


「くそッ、この女!!」


敵兵は私の仕業だと気づくと剣を抜いた。その抜く勢いで私の頰がシュッと切れ血が垂れた。


「要塞まで走って!」


子供にそう叫ぶと子供は震えながらも走り出した。


「そうはさせるか。」


敵兵の一人が子供に向かって走る。大人なのですぐに追いつき剣を振り上げた。が、その瞬間に剣は地に落ちた。もっというなら剣を握っていた腕ごと地に落ちたのだ。


「うっ…腕……俺の腕ェェェェェ!!」


慌てて吹き出す血を押さえるがそんな事で血が止まるはずもなく敵兵はその場に倒れた。

他の敵兵達は仲間が殺されているのに動揺を見せず、まずは私を殺す事にした様だった。


「何者だ貴様!」


そう尋ねてくる敵兵だが喋っている途中でも構わず剣を振る。

私は今、しっかり魔法を使って倒しているが他の誰かにバレる心配はない。魔法の存在を見た今目の前にいる敵を倒したらバレる心配はないのだ。

私は手に巨大な火の玉を生成する。これを食らったらチリすら残らないだろう。


私の手で奪ってしまう命の最後の問いかけに応えるべく、私は口を開いた。


「優しい魔女…かしら?」



******



休憩もはさみつつ、走って少年が要塞にたどり着いたのはあの街から1時間後だった。巨大な城壁は近くにある様に見えて意外と遠い。


やっと着いた時にはもうフラフラで門兵のおじさんに運ばれて要塞内に入った。

目を覚ますとそこはベッドの上で血生臭い匂いと薬品の独特な匂いが混じったなんとも言えない匂いだった。


「怪我は無さそうだな。」


衛生兵の女性が起きた僕に言う。そしてどうしてもっと早くに避難しなかったのか説教された。


「えっと…お母さんが、家に潰されて。」


あの時はお母さんが生きていると信じていたがいざ冷静になると死んでいることはわかりきっていた。


「お姉さんが助けてくれた、銀色のお姉さんが。」


まるでこの世のものではないかのようだった。初めて見た時お母さんと僕を神様のもとに連れて行く天使が迎えに着たのかと思ったくらいだ。


その銀色の髪は光な当たり方によって何色にでもなる。


「銀色のお姉さん?」


衛生兵の女性は首を傾げた。もしかして全身銀色とか勘違いしちゃったんだろうか。確かに僕の言葉が足りなかった。


「フローラ…?」


衛生兵の女性は誰かの名前を呟いた。



******



敵兵を倒した後、探査魔法を使ってこの敵兵達の大元…奇襲部隊とでも言おうか、その大元を叩きに行った。近くの森に潜んでおりその森の地形から要塞がよく見えた。それと同時に戦場の様子も望遠鏡で見るなら最適の位置だった。


「フゥ…。あら?帝国軍が反撃してるじゃない。」


敵兵の死体を踏みつけ、その敵兵から取った望遠鏡で戦場を眺める。戦況は大きく変わっていた。帝国が優勢になり、反帝国軍は撤退しようとしているところを帝国軍に猛攻撃されている。


多分私が倒した奇襲部隊が今頃要塞を襲撃し、戦場に出ている帝国軍は混乱…という筋書きだったのだろう。その奇襲部隊は仲間の元ではなくお空に帰ったがな。


望遠鏡で第一騎士団を探していると騎士団の旗が見えた。それを目印にリアムを探すと、どうやら無事なようだった。


「あっ、リアム!」


見つけた途端嬉しくて手を振ったが望遠鏡で見るから近くにいるように見えるだけで実際は距離が離れているから見えるはずないことに気づき、誰も見てなかったよね?と辺りを見渡した。


(もし誰かに見られてたりしたら恥ずかしい。)


足元にある死体を燃やし尽くした後、リアムの無事も確認したことだし私は帰路に着いた。


そのあとジャンヌに散々怒られる未来は見えていたのでどう帰ろうかと思考を巡らせ歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ