表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
82/259

魔女は聖女になりたい II

「私以外は…大丈夫だと思うが、騎士団もなかなか厳しい状況だ。帝国軍が押されている。」


敵はそれほどまでに強い。


「東側の諸国に気を取られ、自国の属国を無視し続けた結果今戦争になっている。我々は平和な時代に胡座をかき過ぎた。」


スカーレットはチッと舌打ちをした。その舌打ちは誰に向けたものではない。しかし話の内容からしてその怒りをどこかに向けたくなるのは分かる気がした。


「これ以上増援は望めないのでしょうか?」


「帝国からは望めないだろう。戦場に第一騎士団を投入している時点で相当追い詰められているのに第二騎士団、第三騎士団、と投入していたら帝国の守りが薄くなる。」


なら…敵対していない属国からの増援を期待したいが、属国なので他の属国が帝国に牙を向いているのを見て敵側につくかもしれない。


「スカーレットさん、ありがとうございます。」


私はいてもたってもいられなくなり、病院の建物から飛び出した。


「ちょっとどこいくのよ!?」


スカーレットやジャンヌが私を止めたがそれよりも、リアムや第一騎士団の状況の方が心配だった。


「押されてる…。負けそうなの?」


リアムが負けるなんて想像がつかないが数の利向こうにあるとそうもいかない。


「リアム…。」


要塞の出入り口の門までやってきたが門兵が通すはずもなかった。


「ここから先は戦場だ。通すわけにはいかねぇよ。」


門兵はこれだから女は…とブツブツとつぶやいていた。その呟きの内容は女性ならぶん殴りたくなるほどのものだったが、私の理性がそれを抑えた。


「通してください、リアムのところへ行くんです。」


「はあ!?だからこの先は戦場だって…言って……る…だ…ろう……がぁ。」


このままじゃずっとここで足止めされると感じた私は魔法で門兵を眠らせた。


「ごめんなさい、帝国が負けたら元も子もないでしょう?」


門兵は寝ているので返事はしない。まぁ、私も帝国が滅ぼうが興味はないと以前なら言っただろうがリアムが帝国に忠誠を誓う騎士である限りそうはいかないだろう。

だから私はリアムの為に人に魔法を使う。リアムが望むから結果的に帝国の為になっているだけだ。

リアムとこの戦争に行く前に約束したことがある。魔法を使わないといけない場面が来ると思う、だが悪用しないでくれ…と。


門兵が寝ているすきに勝手に門を開け、私が要塞の外に出るとバレないようにまた閉めた。


「ここは馬で戦ってるところまで駆けるのが最適よね。」


馬が一番早い移動方法だとわかってはいるが私は馬を扱えないんだよね。


魔女と聞いて箒に乗って空を飛んでいるイメージを人間は持っているらしい。


「箒…乗れたらよかったね。」


実際魔女は箒に乗ったりしない。箒に乗っても空は飛べない。飛べたらどれだけよかっただろうか。箒はただの箒だ。


スカーレットを封じ込んだ筋力の底上げの魔法を主に足に使い、馬と同じくらいの脚力を一時的にだが手に入れた。


(よし、これで第一騎士団の所まで駆けよう。)


足に力を入れ、地面を蹴ると少し宙に浮いたような感覚になり急速に前進した。


(このペースならすぐ着くかも。)


しかし走っている途中に気づいた。突如私が第一騎士団の前に現れるのは不自然ではないか?そして何より馬も使わずにこのスピードで現れたら人間じゃないことは丸わかりだ。自分から人外宣言をしに行くようなものだ。


「えっ!?じゃあどうすればいいの?」


走る…というか飛ぶ足を止め、立ち止まる。第一騎士団と一緒にリアムはいるだろう。だからリアム一人と会うのは困難だ。


「遠目で無事を確認して、こっそり援護すればいいかな。」


ならばリアム達の後ろから来るのではなく、戦場の横をぐるっと回って敵側の背後に回れば援護しやすいかな。


「よし、それで決まり。」


私は進行方向を変えるとまた足に力を入れた。自分の足がバネみたいだ、と思う。魔法がかけてあるから当たり前なのだが。

この筋肉増強の魔法のおかげで私は母と女二人で森で暮らせていたのだと思う。


戦場の回り道にある少し大きめの街はすぐ見えてきた。こんなにも戦場が近いので、住民は要塞内やその後ろの地域に避難している。

街は人が居なくなり、所々から火が上がっていた。ここにかつては人が住んでいたのかと思うと少し寂しいような気持ちになった。別に私がこの町に住んでいたわけじゃないけど。


「うわぁぁぁぁぁぁん!」


子供の泣き声のような声が聞こえ、私は辺りを見渡した。子供なんて一番最初に避難するべき人がまだ残っているなんて信じられなかった。

声の方向に向かうと、そこには倒壊した家屋と泣きじゃくる子供がいた。


「何してるの!?早く逃げて!」


こんなところにいたらいつ戦場から攻撃が来るのかわからないじゃない。しかし戦争が激化してきたあたりからもうここの住人は避難が完了していると聞いていたのだが。


「お母ーーさんーー!!」


子供が泣きながら指差す先は、家屋に押しつぶされている母親らしき人の腕だけがはみ出ていた。あたりに血が流れている事からもう失血死してしまっているだろう。


「ねぇ、君なんで逃げないの!?」


街の人たちは母子を置いて先に避難してしまったのだろうか。それくらいしか思いつかない。


「うわあああああん!!」


子供は泣くばかりで一向に話してくれない。私だって急いでいるのに。第一騎士団から怪我人が出たことからリアム達が心配なのに。


「ほら、私と一緒に要塞まで逃げるよ。」


私は子供の手を掴んだ。私はこの子を見捨てられない。見捨ててリアムを救ったとしてもいい気分にはならない。

私はもう一度要塞まで戻る決断をした。



******



「まったく…どこへ行ったのやら。」


スカーレットは腹に巻かれた包帯をさすりながらつぶやいた。フローラに借りができてしまった事があまり気に食わなかった。

フローラに一丁前に説教まがいのことをしたのに自分が怪我して彼女の世話になるなんて恥もいいところだ。団長が何故彼女を選んだのかいまいちわからなかった。でもここの衛生兵の話を聞いているとフローラは足手まといではないようだった。


フローラを勝手に敵対視していた自分が情けなかった。自分は団長に選んでもらえなかったのだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ