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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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魔女の娘 Ⅳ

「きっ…騎士様!?」


彼女達の顔は青ざめた。リアムさんは走って来たのがわかるように少し息が上がっているようだった。


「こっ…これは、違っ。」


「魔女という侮蔑言葉を使っているのはどうかと思うが。」


「ごめんなさい!」


彼女達は涙目になってリアムに謝罪する。しかしリアムからはまた負の感情が漂ったままだった。


「謝る相手が違うだろう。」


彼女達はわたしの方に向き直るとまた、ごめんなさいと叫びそのまま逃げるように走り去っていった。


「フローラさん、大丈夫?()()()()気にする必要ないよ。」


もうリアムから負の感情はしない。けど、まだ汚いものがここにある。


私から漂っていたのだ。負の感情は。


魔女…()()()。やっぱりそういう程度なのか。人間ならこの慰めを受け入れられただろうけど私は違う。魔女だから…彼女達から謝罪が欲しかったわけじゃない。

そして魔女は人間には受け入れられない事を痛感した。


「なんで、来たんですか。」


そんな冷たい言葉をかけていた。


「え?急に帰ろうとしたから…。」


リアムの優しさは伝わってくる。でもそれは人間に対しての優しさであって私への優しさじゃない。この人は私が魔女だと知ったらこの優しさを向けてはくれない。

いや、魔女だとわかって優しさを向けてもらおうなんておこがましい事だ。


「騎士様!」


そこにベネティアが駆けてきた。


「急に追いかけたから心配しましたよ。帰るのを邪魔したら悪いですって。」


そう言ってベネティアは自然にリアムの腕に自分の腕を滑り込ませていく。そう、恋愛(こういう)のは人間同士がお似合いだ。


「そうか、悪い。」


リアムの悲しそうな声を聞き終わる前に私はリアムの横を通り過ぎて街を出た。町の出口はすぐそこだったので早く出れた。


(早く…帰ろう。)


そのまま私は森へと入っていった。



******



「魔女よ!」


「怪しすぎるわ!」


騎士の前で魔女に謝罪をさせられるという屈辱を味わった町娘、キーラとクロエは町長に魔女フローラを捕らえるように直談判しに来ていた。


「しかし…証拠は。」


白い立派なヒゲを生やした町長はオドオドしながら二人をなだめようとしていた。


「森に住んでるなんて怪しすぎるでしょ!?それだけで調査する材料になるでしょうが!!」


キーラがダーンッと町長の机を叩く。


「ま…まぁ、たしかに。」


捕らえるとまではいかなくとも調査する程には怪しくなる。


「家宅捜査を許可しよう。」


町長は引き出しから滅多に使わない家宅捜査許可の書類を出すと、印を押した。


「町を守る傭兵団を集めてくれ。」


もしかしたら魔女狩りになるかもしれない。キーラとクロエは勝ち誇ったように笑った。



******



「ただいま。」


私の手にはカゴいっぱいに入った薬草があった。薬草を摘みに行くといって出ていったので持って帰らないと不自然だ。だから事前に準備したものをさも今摘んできた風に持って帰って母に渡す。


「おかえり、フローラ。」


母は読んでいた本をパタンと閉じる。そして腰掛けていたロッキングチェアーからゆっくりと腰を上げた。その動作だけを見ればそれなりに年を召した女性に見えるかもしれない。しかし顔も体もフローラと同年代のようで親子というより姉妹と言った方が納得できる。

魔法で若かりし頃の美貌(自称)を保っているらしい。と言っても魔女は人間よりも長寿だから人間のように老けていったりせずゆっくりと老化する。だから無理して母のように魔法をかけなくてもそんなに外見は変わらない。

しかし多少は変わるので母は絶対に変わりたくないと定期的に魔法をかけている。父が愛してくれた顔だからと。


「ねぇ、お母さん。お父さんってどんな人だったの?」


私は父の顔を知らない。父は魔法が使える訳でもなんでもなく、ただの人間だったそうだ。

魔女と結婚するということは、人間からして見れば自身も異端に身を落とすということだ。父はそんな異端者として人間に殺された。

もし父が人間に殺されなかったら母は人間をここまで恨んでいなかったのかもしれない。魔女を迫害してきたとはいえ人間である父に一度は心を開いたのだから。そして娘も殺された。母の人間への憎しみは消えることはない。


「優しい人だったよ。」


魔女である母を受け入れた優しい人。少なくとも人間の中に父のような人はいる。


リアムがそんな人だったら良かったのに。初めて出会った人間が優しい人なのは違いないけどその優しさを魔女にまで向けれるほど優しくはないと思う。


「どうして急にそんなことを聞くんだい?」


人間にあったから人間だったお父さんの話が聞きたい…なんて言えるはずもない。


「ちょっと気になっただけ。」


そう言って私は椅子に座るとテーブルの上にあったティーポットからお茶を注ごうとした。しかし中は空で茶葉も切れていたことからすぐにお茶が飲めない状態だった。


「お母さん、茶葉切れてるから摘んでくるね。」


「遅くならないでね。」


薬草を摘みに行ったのが長かったので今度は遅くならないようにと念押しされる。実際は森の外に出ていたので良心が苛まれるのだけれど。

家の裏口から外へ出る。茶葉が植えられているところは家から少し離れている。まぁ、森全体が庭のようなものだけど。

それにしてもなんだか騒がしいような妙に静かなような。騒がしさと静けさが同時に怒るなんて普通はないはずだけどいつもある音が消え、静かになりいつもない音が聞こえ騒がしくなっている感じ。


とにかく森が変なのだ。


これは早く茶葉を摘んで家に戻らないと…。と思い足が速くなる。茶葉を摘んでさあ帰ろうとした時普段なら聞こえない音が聞こえた。


銃声が。

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