小さな神様の御伽話
世界はいくつもある。その全てを創り、束ね統べるのは世界の始まりを司る創造神の私だ。私が生まれたのと同時に世界は始まり私の体から様々な神が生まれた。ある神は火を創り、ある神は水を創り、またある神は空気を創った。そうした神々達が世界を創るのに費やした時間を神聖時代と人間は呼ぶ。
自己紹介が遅れたな。私は創造神、リューエルという。人間達は私の事を白い立派なヒゲを生やした老人と考えているようだが、実際は違う。具体的な例を挙げるとすれば、色白の可愛らしい、プリティーでキュートな幼い女の子☆
「何、自分を可愛いとか言ってるんですか。」
ペシンッと私の頭を叩く者がいる。背中には大きな羽を生やした女性だ。この者は大天使、ナドゥエール。私の神界での仕事の補佐をしている。大天使とは天使という種族の王様みたいな者だ。天使にも階級があり大天使、天使長、
上級天使、中級天使、下級天使、堕天使とある。
どうやらナドゥエールには私の一人語りが聞こえていたようだ。地味に恥ずかしい。
「 天使という種族なのに神様に向かって頭ひっぱたけるとかお前だけだよ。」
「わたしはリューエル様の補佐ですから。多少のことは許されます。」
うぅ…堕天させてやろうか…いや、私が困る。ヒリヒリする頭を押さえプクーッと頰を膨らませながらナドゥエールを睨む。ナドゥエールはその様子を愛おしいものを見るかのように笑顔で眺めている。ナドゥエールはロリコンなのか?
「そういえばナドゥエール、私は助けたい人間が出来た。」
「助けたい人間…ですか?」
ナドゥエールは驚きを隠せずにいる。そりゃそうだろう。神様が1人の人間の為に動くのは。
「悪女と呼ばれた女が死んだ。」
「悪女が死んだのですね。よかったよかった。」
「いや、よくない!よくないよナドゥエール!」
「何故です?貴女ともあろうお方が人間という下等種族の為に動くのですか。」
「呪いがかけられる。魔神が動いているかもしれない。」
ナドゥエールの顔の色が変わった。
「魔神?魔神はとっくの昔に封印されているはずです。それにその世界は魔神関連のものは人間の住む世界と分けられている。」
「そう。魔王や魔女、魔法使い、人間以外の種族はみーんな魔界に追いやられちゃってる。確かその世界の暦で5000年前。」
でももし魔神が動いていて人間に呪いがかけられていたら
…。最悪、神界、天界、人間界、魔界、を巻き込む大惨事になりかねない。
「その人間は死んだのですよね。なら…。」
「いや…その呪いのせいで後々の世界の歴史が狂う。呪いがかけられた悪女には天命を全うしてもらわないと。」
「タイムリープを行うのですか?」
「あぁ。後、人間界との繋がりを強める為に神力の強い人間を産み落とさなければ。」
「聖女…ですか。しかし今から新しく魂を作るのは時間がかかります。」
「これは苦肉の策だが別の世界に生まれるはずの魂をこちらの世界に生まれるよう調整しよう。」
「その別世界の歪みはどうするのですか。」
「ええいっ。今は時間が惜しい。魔神より早くに手を打ちたい。歪みは後で修正する!」
私は机に向かいと白紙の紙を創り出すと羽ペンでその世界の調整を行う。しかし私はこの時大失態をしてしまった。
「あっ。やべっ。」
その声はナドゥエールにも届いていた。
「どうしちゃったんですか⁈」
ナドゥエールはこちらに来て紙を覗き込む。
「うわー。やってしまったよー。」
「でしょうね。別世界から無理矢理こちらの世界に魂を産み落とさせるとこういうこともありますよ。」
「もー。どーにでもなれっ!」
そう言って机に突っ伏すとナドゥエールが凄い剣幕で怒り出した。
「いやいやいや、諦めないでください!貴女と聖女の神力で世界に介入できるでしょう!」
「いや、そうは言ってもこの子の時点で詰みっていうか…元々この子が持ってる力と神力がどう作用するか。もしこの子の力と神力が合わさったら…私でも対処できるか不安だし。」
「大丈夫です。神力がありますからいざとなったらリューエル様が彼女を取り込めばいいでしょう。」
「確かに!ナドゥエールあったまいい!」