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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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皇室事情 Ⅴ

それは断罪より少し前。



「それで話は何?」


話があるとラヴァリアに呼び出されたミリスとポーラはラヴァリアの向かいのソファに座った。


「はい。単刀直入に言いますと皇帝暗殺の共犯者の勧誘ですね。」


のほほんとした笑顔から物騒な単語が飛び出した。ミリスは周りを確認する。今は真昼間だ。こう行った話は普通夜にやるものではないのだろうか。ラヴァリアはうふふと笑った。


「大丈夫ですよ。この宮には私と同じく共犯者しかいません。」


「侍従達全員が皇帝暗殺に賛同しているわけね。」


ポーラも周りを見渡して言う。


「何で私達を勧誘しているの?黙って決行すればいいじゃない。」


ミリスは腕を組み、ラヴァリアを睨む。父であるはずの皇帝の暗殺を一番寵愛されているはずのラヴァリアが持ちかけるのはどういうことだ。


「憎んでいるからに決まっているでしょう?殺したいほどに。」


やはりその言葉ものほほんとした笑顔で言うのでミリスは恐怖を覚えた。


「そして貴女達も憎いでしょう?」


ラヴァリアはミリス達に微笑みかける。


「憎む…って言っても私達は皇帝と接点なんてないわ。憎いかどうかなんてわからない。」


ポーラがそう言うとラヴァリアは目を見開いた。


「あら?皇帝を殺していただくのはアグリジア様ですよ?」


ミリスとポーラその名前を聞いただけで肩を震わせた。


「何故、第三皇妃が暗殺側につくのです?あの人は愛する人を殺すわけないわ。」


「いえ、皇帝暗殺の犯人に仕立て上げるのです。それにはやはりお二方のお力添えが必要でして。」



******



「アグリジア殿下、どちらに行かれるのですか。」


「陛下の所だ。」


アグリジアは哀れなほどに自分に似てしまった(ミリス)を冷たい目で見ながら答えた。


「陛下はこちらのお酒を好まれます。」


ミリスは赤ワインのボトルを差し出す。アグリジアが手に持っているのは白ワインだった。酒の力を借りて3人目を産もうと言う魂胆だろうとミリスは思った。そろそろ歳をとって皇帝から捨てられるかもしれないとミリスがそそのかしたからだ。


「そうなのか?」


アグリジアは顔をしかめた。だってアグリジアは自分が持っている白ワインこそ皇帝の大好物だと思っていた。それはアグリジアが懸命に調べた結果である。


「白ワインこそよく飲みますが一番好きなのはこの赤ワインです。」


「本当か?」


アグリジアは疑いの眼差しを向けた。


「陛下の側近からの情報です。」


「貰おう。」


アグリジアはミリスの手からボトルを奪い取った。そして代わりに自身がさっきまで持っていた白ワインのボトルをミリスに押し付けた。そして皇帝の自室に入っていく。


「陛下、少しお時間頂けますでしょうか。」


「うむ。」


そう一言だけ皇帝イーサンは言った。イーサンは椅子に腰掛け窓の外を眺めているようだった。アグリジアが最後に見た姿からだいぶやつれ、老けていた。


「陛下がお好きだと聞き、ワインを用意致しました。」


「うむ。」


イーサンはそれだけしか言わずワインを注いでも飲む気配がなかった。アグリジアもワインを注ぎ飲もうとした時、イーサンがポツリと呟きアグリジアは飲む手を止めた。


「くだらん結婚生活に付き合わせてしまってすまなかったな。」


「何を言っているんですか。くだらないなんて。」


少なくともアグリジアにとって結婚生活はくだらなくはなかった。愛しい人の妃になれたのだから。


「そなたもいつまでも振り向いてくれない男に尽くす生活は終わりだ。そなたの実家に帰りなさい。不自由無いように金は渡そう。そなたは自由だ。」


「な……何を…。私は、私は嫌です!」


アグリジアの手が当たりアグリジアのワイングラスが床に落ちる。中に注がれていたワインも床にぶち撒かれた。イーサンは自分の分のグラスを手に取る。


「誰かは知らないが有難いことだ。私は疲れたのだ。」


そう言うとイーサンはワインを飲み干した。その後すぐに椅子から倒れた。


「陛下⁈」


アグリジアはイーサンのそばに駆け寄る。痙攣しているように見える、そしてイーサンは口の中から血の塊を吐き出した。


「陛下⁈陛下⁈」


あまりの出来事にアグリジアは名前を呼び続けるしかなかった。そしてあたふたしている間にもう呼吸音は聞こえなくなっていた。


「まさかこれが……。」


アグリジアはワインのボトルを手に取った。その時部屋のドアが勢い良く開いた。そして近衛兵達が駆け寄って来た。アグリジアはてっきりイーサンに駆け寄ったものだと思っていたが実際駆け寄られたのはアグリジアの方だった。


「皇帝陛下殺害の容疑で拘束する!」


近衛兵達はそう言ってアグリジアを押さえたのだ。


「なっ何を!!」


近衛兵の後からミリスとポーラが入ってきた。


「貴様、母を騙したな!」


アグリジアはミリスに向けて叫ぶ。ポーラも一緒にいることから知っていたのだろう。


「母?私に母はいないのですよ。貴女のことを母と思ったことなんて一度もありません。」


ミリスはしゃがみ、アグリジアと視線を合わせながら言った。


「お前ら、おかしいと思わぬのか!」


アグリジアは近衛兵に向かって叫んだが近衛兵達も知っているという風だった。


「アグリジア皇妃殿下、もうここにいるもの達全員私達の味方なのですよ。ついでに言うと宰相閣下や中立派の貴族全員が皇帝暗殺に賛同しているんです。」


「わ…私が死んでもいつか罪人のお前達の罪が暴かれるからな!」


「罪人の言葉が神に届くとお思いですか?」


ポーラがそう言う。


「貴女は皇后陛下と第二皇妃殿下を殺めているのに?」


そこでアグリジアの顔色が変わった。何故知っているのか?と言った感じだ。


「黙って死んでください。愛しの陛下の所へ送っとあげますから。」


近衛兵はアグリジアを引きずり部屋から連れ出し、ミリスは剣を片手にその前を進んだ。


「広間に人を集めて、断罪を行うわ。」


ミリスは廊下にいたエイデンにそう命令を下す。


「承知いたしました。」


エイデンはそう言うとどこかへと消えていった。

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