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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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聖女を蹴落とす

ステファニーは重大な情報を知ってしまった。グランドピアノを片付けるため舞台裏にいたのだが、アリスが舞台裏に入ってきたので慌てて物陰に隠れた。


(なんで私隠れちゃってるのよ!)


そうは思うも一旦隠れてしまったからには今から出て行ったら明らかにおかしい。アリスが舞台裏から出るまでここで息を潜めていよう。


アリスが入ってきた後にエルリカも入ってきた。ステファニーは耳を澄ませて2人の会話を聞く。


「……私……謝り…………。」


「…昔……いいよ………。」


少し距離があるので聞こえにくい。思わず身を乗り出しそうになったがそれだと居ることがバレてしまうので中腰の姿勢で止める。今すぐこのキツイ姿勢から元の姿勢に戻りたかったが今動くと物音がしそうで動けない。


「まぁ、私貴女を恨む気は無いけど許す気もないから。」


え?今の声……アリス?その酷く冷たい声はいつものアリスとはかけ離れていた。


「私貴女と馴れ合うほど落ちぶれてないから。じゃあね。」


嘘…あの優しい聖女様の本性を聞いてしまった。こ…これは一大ニュースなのか⁈でも噂話を広める趣味はない。しかし聖女の本性を自分の中にとどめておくことは出来なかった。


(ルイス殿下が知ったら幻滅なさるかしら?)


あの心優しい聖女様の本性…きっと幻滅するはずだ。そしたら…婚約破棄になるわよね?私が選ばれる可能性は低いかもしれないが少なくとも婚約者の席は空席になる。あの強敵である聖女アリス・ダイヤモンドが退場すれば私にも勝ち目が見えてきたのでは?時に狡猾に立ち回らなければ貴族社会では生きていけない。



******



放課後の生徒会室、この部屋には2人きりだった。ステファニーとルイスの2人きり。年頃の男女が密室で2人きり……結構ステファニーにとっては危ない状況かもしれないがステファニーはそんな心配はしていなかった。何せ相手は皇族なのだ、もし心配していることをしたら身分剥奪だけでは済まない。そんな危険を冒してまで一時的な欲情に身を委ねる愚か者などいないだろう。しかもこの学園は24時間体制で警備員が巡回しているのでまず見つからないようにするのは不可能だ。しかし相手がルイスならステファニーは迷わず彼を受け入れるだろう。


「ルイス殿下、お話があります。」


「何だ?」


ルイスはさも興味なさそうな返事をしたが、これが彼の通常運転だ。何に対してもこんな返答である。


「ダイヤモンド公爵令嬢のことでして…。」


そこでルイスの目の色が変わった。アリスの名前を出した途端彼にとってどうでもよかった情報が必要な情報に変わる。


「アリィがどうした。」


ルイスの口からアリスの愛称が飛び出した途端ステファニーは心が痛むのを感じた。


「彼女は嘘をついています。」


アリスの本性を言葉に直すのは難しかった。言葉を間違えると違う意味になってしまう。でも彼女が見せているのは偽りの姿。嘘を重ねたままいずれ2人が夫婦になるのは許せない。ステファニーは自分の中に凶暴な感情が芽生えているのを感じた。その感情に支配されれば己の身を破滅に導く。その感情に支配され、どれだけの人が破滅へと歩んだことか。


「彼女は……彼女の本性は…。」


貴方が…皆が…知っているものじゃない。聖女としての責務を全うしていない。…そう、まるで悪女の言葉のようだった。


「とんでもない悪女です。」


気づいて!彼女は自分を隠している。貴方の望む人じゃない。仮面を被ったまま生涯を添い遂げるのですか⁈

私がお側に居ます。ずっとお慕いしております、私は貴方に嘘はつきません。心の中で何度叫んで願っただろう。私は舞台裏での出来事を言葉を選びながら慎重に話した。


「それがどうした。」


やはり彼は私の望んだ言葉を発してはくれなかった。


「え。」


「だから、それがどうしたというのだ。」


「もしかして既にご存知だったのですか?」


知っていてアリスを受け入れているならば私にとってこの情報は何の価値もない。


「いいや、知らなかった。」


知らなかった⁈それなのに…それなのに、受け入れたの?


「なら、何故そんなにも平気そうなのです?」


「どんな姿だろうと受け入れる。だからアリィの本性がどうだとかは些細なことに過ぎない。」


目の前が真っ暗に…いや、真っ白になったのだろうか。どちらにせよ私の体は正常に機能していない。


「それにしてもオキニス伯爵令嬢。先程アリィ…私の婚約者であり、公爵令嬢である彼女を悪女だと罵った。それについてはどうお考えか?」


ルイスの冷たい視線が体中を貫いた。


「あ…。」


どうにか弁明しようにも言葉が出ない。黙り込んでいる状態のままだ。血の気が引いているのが分かる。


(私は馬鹿なの。どれだけあの情報に勝算を見出していたの?)


こんな時に頭はぐるぐると今までにないくらい高速で回るが、どれも自分の反省ばかりで現状を打破できる名案が浮かぶわけではなかった。体中の力が抜け、床に膝をつく。ルイスはやはりさも興味なさそうにしている。こんな時くらいは私を虫でも見るような目で軽蔑してくれたらいいのに。でも、それは望み過ぎというものだ。

アリスの愛称は アリーとエルシーがあるそうです。前者の方を採用させていただいていますが本編中の表記はアリィになっております。これはアリーよりアリィの方が可愛いな〜と思ったからです。アリスの愛称ってアリィじゃなくてアリーだよね?と思われたことだと思いますが、これからもアリスの愛称はアリィで行かせていただきます。

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