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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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フェイクレディ II

あれからアレンの接触はない。納得してもらえたのかな?とも思ったがまだ警戒を解くわけにもいかない。油断させる作戦にシフトしたのかも。

そして変化したこともあった。アリスがまた学園を訪れるようになった。ノックもされずにバーンと生徒会室のドアが開き、


「心配かけちゃってごめんねーー!アリス、復活しました!」


と元気よく叫ばれた時は絶望の一色しかなかった。


(またお前か…。)


アリスが自宅で休んでいる間にガブリエルが学園を退学したことを知らなかったアリスはステファニーを見て


「何で貴女がここに居るの?」


と、失礼すぎる爆弾発言を投下した。流石のステファニーも顔を真っ赤にして憤慨した。ルイス達がここにいなくて良かった。でなければステファニーが言葉は無視できなかっただろう。


「貴女こそ何でここに居るのよ!」


それは相手が恋敵だったからだろうか。上品なご令嬢の名前を欲しいままにしていたステファニーの盛大なキャラ崩壊となった。


「ダイヤモンド公爵令嬢、ラリマー侯爵令嬢…じゃなくて…現ラリマー侯爵は学園を退学なされたのです。その代わりにオキニス伯爵令嬢が生徒会入りしたのです。」


私が説明するとアリスは納得したようにふーん…と一言だけ言うと


「先ほどの非礼をお許しくださいオキニス伯爵令嬢。」


と、謝罪の言葉を述べたが頭は下げなかった。オキニス伯爵令嬢の方が身分は下だし上の身分であるアリスに頭を下げさせるなんてあってはならないけど。

ステファニーはまだ顔を真っ赤にしていたがアリスの謝罪を受け入れた。


「ダイヤモンド公爵令嬢はまだ学園に入学されていませんし、生徒会役員でも御座いません。何故関係者以外立ち入り禁止の生徒会室に入っているのでしょうか。」


ステファニーは怒りの中で最大限言葉の棘は取り除いたはずだろう。それなのにその言葉は刺々しいものだった。


「ルーに許可してもらってるから大丈夫です♪」


アリスはニコニコした笑顔でこう答える。ルー?ルイスの愛称だな。前会った時は愛称呼びなんてしていなかったように思えるが…2人の間に何か合ったのだろう。


「そ……そうですか。」


ステファニーは悔しそうにその言葉はを言った後ギリリと奥歯を噛みしめる。それに気づいたのは私だけだった。アリスの後ろから先程まで外出していたルイス達3人が入って来た。


「アリス、来てたんだね。」


「心配したぞ、アリス。」


アレンとケイジがアリスににこやかに話しかける。ステファニーはその様子に目を丸くしていた。そりゃそうだろういつもは無表情に近いのだから。そしてステファニーが1番驚いていたのはルイスがアリスに優しそうな笑みを浮かべたことだった。


「アリィ、元気になってくれて良かった。皆心配していたのだから。」


その言葉を聞いて益々笑顔になるアリスと固まってしまったステファニーを見て私はどうすればいいのだろう。春の微笑みのようなアリスと冬の吹雪のようなステファニーという対極に見える2人に挟まれた私はどのような言動をとるのがベストだろうか。この流れ的に私にも発言しないといけない機会が回ってくるだろう。


「エルリカさん、ごめんなさい!心配かけちゃって。」


はい、来ましたーー。あらかじめ身構えといて良かったよ。こんなの不意打ちで来たらどもっちゃうか舌噛んじゃうでしょ。


「いえ、ご無事でなによりです。」


いえ、心配などしておりませんわよ…と言いかけてしまったが何とかセーフ。そんなこと言ったら先ほどのアリスの爆弾発言より爆弾発言だった。

ちらっとステファニーの方を見ると小さく唇が震えていた。片思い中の相手には婚約者がいて愛称呼びのラブラブなカップルなのだから当然といえば当然か。先程までのアリスのルイスの愛称呼びは一方的に言ってるだけかもしれないと希望を見出すことも出来たが2人とも呼び合っているところを見るとその希望は潰えてしまう。

ここからステファニーがどうするか…。私のようにアリスを陥れようとするのか、ルイスに熱烈なアプローチをかけてアリスより自分を好きにさせるのか、この恋は絶対に叶う事はない…それでも…今だけ、今だけは彼を好きでいさせて!と片思いする自分を美化するのか、潔く身を引くのか。自分ではない恋愛というのはこうも冷静に見てられるものだな…と頭の中で今の現状を実況している私を凄いと思う。


「では早速明日に迫った芸術祭についてだが……。」


生徒会長であるルイスが話を進める。アリスはルイスの隣にちょこんと座ると相変わらずニコニコ笑顔を周りに振りまいた。アレンもケイジもルイスでさえも釣られて笑顔になっていた。何ですか、癒し効果があるんですか。アリスに目を向けて観察する。ふわふわしたシルバーの髪を編み込みのハーフアップにしてレースのリボンで結っており膝丈までのフリルが沢山ついたピンク色の花柄のドレスを着ている。その壊滅的なファッションセンスは相変わらずだった。アリスは自分の顔を見たことがあるのだろうか、どう見ても可愛いではなく美人顔なのに絶対に似合わないドレスを着ている。


(逆にそこまで全身を似合わないのオンパレードで揃えられるのは凄いわ。)


明日に迫った芸術祭。確認に確認を重ねもう確認のしようがないんじゃないかというくらいに確認を重ねてやっと今日まで来た。


(芸術祭……ガブリエルと見る予定だったんだな。)


ガブリエルが私と一緒に周りたいと言ったのは最終的に私と結ばれたかった為の布石だとするなら気持ち悪いことこの上ない。今は私の思い通りに動くとはいえ思い出しただけでも鳥肌が立つ。正直、ガブリエルとは友達でいたかった。友人としてなら最高の関係になれたはずなのに。今更悔いてももう遅い。その関係を絶ってきたのは向こうからなのだから。



******



悔しいっっっ!!とてつもない憎しみが私の中に渦巻いていた。ここまで彼女が憎くなるなんて思っても見なかった。我がオキニス伯爵家はダイヤモンド公爵家の派閥に属している。派閥のトップの家のご令嬢を憎むなんて派閥に絶対服従の我が家の娘にあってはならない。

皇太子殿下をお慕いしたばっかりに……。あの人の冷たい瞳を何故好きになったのかは分からない。でもそうなる定めとしか思えない。神は…聖女という特別なものをアリスに与えたのに私には何も与えてくださらないのね。

生徒会入りなんてするんじゃなかった。少しでも殿下に近づけると思ったのに…実際は殿下とアリスの仲睦まじい様子を間近で見せつけられるだけ。これは何という拷問だろうか。諦め切れない私も悪いのだろう、でも下級貴族の娘が王子様と結ばれるシンデレラストーリーが蔓延る世の中だから私に淡い希望を抱かせ続けるのだ。


(ハッ。笑えてくる、とうとう世の中のせいにし始めたわね。)


私は婚約者がいる人に対していつまでも淡い恋心を抱き続ける私が嫌いだ。

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