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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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沈黙の淑女

ガブリエルは爵位を継いだので侯爵の仕事をしなくてはならない。そのため急遽社交界にデビューする事となり学園を退学した。

まだ学園を卒業していない子供に爵位を譲るなんて、とガブリエルの父に非難が殺到したがガブリエルの祖父の推薦とガブリエルの父が急病で死去し、母も心神喪失で部屋から出られる状態じゃないこと、嫡男であったガブリエルの兄が失踪した事を理由にガブリエルが爵位を継いだことは徐々に受け入れられた。

彼女が性別を偽り女侯爵として社交界に出たことはごく一部のラリマー侯爵家の使用人と私しか知らない。


芸術祭前に急遽退学したガブリエルの代わりに私が生徒会会計職に、学園6位だったステファニー・オキニス伯爵令嬢が生徒会入りを果たした。

彼女の取り巻き達が私に生徒会入りを辞退しろなど言ってくるからどんな悪女かと思っていたら生徒会室に入ってきた彼女は虫一匹も殺せないような上品な令嬢だった。艶のある黒い髪をグルグルの縦ロールにしているため人形のようだと思った。


「本日から生徒会役員になりました、ステファニー・オキニスと申しましす。どうぞよろしくお願いします。」


あれ…この人何処かで?会ったことがあるような……無いような。初めて会うはずなのにどこかで会ったことがあるように感じさせる人だった。

派閥が違う為貴族時代に関わることもなかったし自分より下の位の家に対しては貧乏人の家などと言って馬鹿にしていたので関わるなんてこっちから願い下げだと随分失礼なことを思っていた。


(ん…?)


私が彼女に感じたのは既視感だけではなかった。彼女の視線に違和感を感じた。

ステファニーは生徒会室に入ってからたった一点しか見つめていない。ずっと恋をする乙女のように頰を赤らめている。その視線の先にいるのはルイス殿下だった。

彼がステファニーの方を向くとステファニーはサッと視線を逸らし目線が合わないように、自分が見つめていたことが気づかれないようにする。


(あーーーー、叶わない恋だわーーーー。)


私はその視線を知っている。自分もかつては彼と結ばれる将来を妄想したからだ。

でも彼の婚約者は公爵令嬢で聖女だ。よほどアリスに欠陥がない限り婚約破棄にはならないだろう。それに皇太子に好意を寄せる女なんていくらでもいる。

その中で自分だけが掬い上げられて皇后…にはなれなくても側室くらいにはなれる……わけない。砂漠の中から砂金を見つけ出すくらいの確率だ。

……それでも、まだ可能性のあるステファニーは恵まれていると思った。上品だし頭もいい、ただ彼女の欠点を挙げるとするならば家格だ。

伯爵家が悪いと言っているわけではない、歴代の皇后に伯爵家の出身者は居るし何なら男爵家から出ていることもある。アリスの実家…ダイヤモンド公爵家が名門すぎるのだ。伯爵家と公爵家なら間違いなく公爵家に軍配が上がる。ルイスを視線で追うステファニーをまた私も視線で追っていた。

急な生徒会役員の交代。間近に迫った芸術祭の微調整についての資料に目を通しながらも資料に目を向けるステファニーが事あるごとにルイスを見つめているのを見ていた。ステファニーを見るのに意識が向いていた為私自身に向けられる視線に気づかなかった。



******



一通り微調整などの確認が終わり解散という事で私は生徒会室を後にする。廊下に出た所で呼び止められたので振り返るとそこにはアレンがいた。またアリス絡みのことだろうか、でもアリスはあれから学園に来ていない。私、何かしただろうか。


「あ…あの、どうしました?」


呼び止めたのはそっちなのに険しい表情で私のことを足から頭まで一通り睨みつけた後口を開いた。


「前会計職ガブリエル・ラリマーについて聞きたい。」


やはり…違うなという印象を抱いた。アリスの部屋にいたアレンは優しく柔らかな表情をしていたのに今はその面影が一切ない。無表情の仮面をつけているかのようだった。ガブリエルのことについて…。

私だけ知っている公にしていない情報を持ちすぎて何か勘付かれたのかと心配になってくる。顔には出さないが。

前にお父様の無罪を証明するなどと言ってしまったから多少なりとも注目されてしまったのだろうか、私1人が騒いだ所で何ともないと思ってしまっていた。私はある意味有名人かも知れない、貴族社会から追放された者として。


「ガブリエルについてですか?」


「ああ。親しい間柄に見えたから何か知っているかと思ってな。」


「何か……とは?」


そこで一旦アレンは口を噤んだがまたすぐに口を開いた。


「今回…妙だと思う。前ラリマー侯爵が死んだというのに葬儀があったようには見えなかった。そして嫡男の失踪。」


それを…私に聞くのか?私をクロだと踏んだのかカマをかけてきているのか。こんな短期間で私をクロだと決める材料が揃えられる訳ない…というか私がクロだという材料自体無い。

宰相家長男、アレン・エメラルドの天才ぶりは貴族社会から追放されていても耳に届く。

私とガブリエルの関係を見破られた⁈ガブリエルは逃げるつもりだったけど私が辞めさせて無理矢理ガブリエルに爵位を継がせた。

それがお父様の復讐の一歩だとバレたら…反逆罪とまではいかなくとも何かしら適当な罪を着せられて断罪されてしまう。フェイクの葬儀でもさせておけば良かった。


「葬儀についてはまだ執り行われてないのでは?色々急でしたし。」


「しかし、今の季節は暑いから死体が直ぐに腐ってしまうはずだ。」


侯爵ともうあろうお方の葬儀が無いのは不自然だ。まぁ本当は生きているから死体は無いから腐る心配はないのだが。その事を言う訳にもいかない。かと言ってここで何も返答しないのもおかしいし、返答が言い訳のように聞こえてしまったらさらに怪しくなる。


「ガブリエル様と親しかったと言っても家の事情までは知りかねます。それに、もう学園を辞めてしまいましたから…。」


あくまで私は知らない、ただの友人だった。これ以上詮索しても何も出ないという事を印象づけなければ。アレンは納得したような表情になると、引き留めて悪かったというと踵を返した。


「ふぅ……。」


これからは慎重にいかなければいけないな。私は天才でも秀才でも無いからアレンと話し合うのに凄く体力を使う。


「でも、凡人には凡人なりの戦い方が有りますのよ。」


私なりのやり方で争ってやろうじゃ無いの。私は復讐を果たす、それまでは誰にも悟られちゃいけない。その為には何でもしよう、誰でも利用しよう。最後に笑うのが私である為に。

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