表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
16/259

生徒会 Ⅲ

夏休みの期間、新生徒会の私達は毎日のように打ち合わせを繰り返し休み明けの芸術祭の準備を行なっていた。準備を行なったと言っても指示を出しただけで会場の装飾は職人がやってくれた。この準備期間で私とその他生徒会の役員との距離が縮まるかと思いきや、そんなことはなかった。私は空気のような存在でいても居なくてもいい感じだった。それには毎日のように生徒会室に来る者がいたからだろう。アリス・ダイヤモンド、彼女は生徒会役員でも無く学園に入学すらしていないのにもかかわらず皇太子の婚約者という身分で学園への出入りが出来た。関係者以外立ち入り禁止の生徒会室にも自由に出入りが出来、庶務の私の仕事は毎日来る彼女にお茶を出してもてなす事になっていた。


「今日も来ちゃった!」


そう言いながら彼女が生徒会に入る。他の生徒会メンバーは、彼女を追い出すどころかむしろ歓迎している。皇太子にとっては愛しの婚約者が来てくれて嬉しいし、アレンとは幼馴染で、ケイジとは従兄弟にあたる。だから誰も彼女を追い返す理由がないのだ。しかも、遊びに来るのじゃなく準備を手伝いに来ることになっているから余計にタチが悪い。


(あんたが毎日来るから私の仕事があんたのもてなし役になってるのよ。)


元々庶務の仕事は雑務だったりするけど…私も芸術祭の準備には関われるはずだったのに…。バラバラと崩れ落ちる計画。アリスに対して日に日に怒りが降り積もっていた。私はもう恒例といった感じにお茶を運ぶ。このもてなし役も楽じゃない。何せ毎日来るのだから毎回飽きないようにお茶の種類を変えて、お茶菓子も変えないといけないし、アリスの好みを把握し好きな菓子を多めに盛りつけたり苦手な菓子は出さないように気を使わなければならない。それに、他のメンバーが準備している中私は生徒会室に残ってアリスの話の聞き相手になる。今日も…。


「それでミーナがね〜…」


ミーナとはアリスの妹らしい。ダイヤモンド公爵家は8人兄弟だと聞いていたが、末娘がアリスだから妹がいるのは不思議だったがどうやらダイヤモンド夫妻が養子として引き取ったらしい。アリスの話ぶりからして姉妹仲は良さそうだ。嫌味のように貴族生活を話す。彼女だから嫌味かどうかの判別がつきにくいが。


(羨ましいなぁ。)


兄弟がいない私にとって大家族のダイヤモンド公爵家は羨ましかった。ダイヤモンド公爵に妾はおらず8人とも実の兄弟なのは貴族社会でも珍しい事だった。ミーナが家に引き取られる時もそれなりの反発が貴族達からあったのだが、かなりの変り者夫婦というレッテルが貼られていたおかげで納得してくれる人も多かったのだそう。


「そうだわ!明日からミーナも連れてくる!」


は?…………今アリスから信じられない言葉が飛び出した気がしたんだが。え?ミーナも連れてくるの?もう一人もてなす人が増えるわけ…?


(ふざけんなーーーーーーーーーーーーーー!)


アリスへの怒りが爆発した。と言っても心の中で。どこまで自己中なんだ。聖女として完璧で…公爵令嬢としても申し分無くて…未来の皇后としても相応しい人…それなのに幼稚で、我儘で、年齢と言動が合ってない人。顔も可愛いというよりは美人で…幼い頃からの皇后教育で年齢の割にませているというのに、服装や仕草が可愛らしいというか、幼いというかチグハグな感じ。彼女の全てに対して怒りが湧いた。

心優しく慈悲深い聖女様が私の負担には気づかないなんてね。もう少し自分の迷惑を考えたら?


「エルリカさん、ちょっと来てくれますか。」


その時生徒会室のドアが開いて、ガブリエルが私を呼んだ。ここで来てくれなかったら私の怒りをアリスにぶちまけることになっていた。危なかった…。実際そんな事したら退学どころか死刑になっていた。皇太子がアリスのことを大切に思っているなんて周知の事実、そんな彼女に怒鳴ったとなれば当然死刑だろう。


「あっ。はい、今行きます。ダイヤモンド公爵令嬢、少し席を外します。」


「はぁーい。いってらっしゃーい。」


アリスは可愛らしく手を振る。顔は美人なのに言動は幼い…残念な美人だ。廊下に出るとガブリエルは付いてきてというジェスチャーをした。庶務の私も動かないといけないほどの事態が起こったのだろうか。生徒会室から離れた廊下でガブリエルは立ち止まった。


「えっと…どうされましたか?ラリマー侯爵令嬢。」


「危なかったですね。」


「え?何の…。」


あ、もしかしてガブリエルは私が怒っているのがわかったのだろうか。それで助け舟を出してくれたのか?


「これ以上もてなす人が増えるのは困るでしょう。」


「確かにそうですけど…。」


「あと、これからは貴女も準備に参加できるように掛け合っておきます。」


「ありがとうございます、よろしいのですか?」


「ここは貴族の身分制度が適用される事から貴族社会の縮図だなんて言われていますが、生徒会に入ることが出来るのは成績上位五人ですので実力社会ですよね。だから貴女にも参加する権利があります。」


「本当にありがとうございます!ラリマー侯爵令嬢は実力を重んじる方だったのですね。」


「えぇ。この学園が実力主義である限り私も実力主義です。それと、私の事はガブリエルとお呼びください。」


「はい、分かりました。でもガブリエルが私に敬語を使うのはおかしくないですか?身分も年齢も上なのに。」


「実力主義だと言ったでしょう。実力がある貴女を尊敬しているのですよ。」


そう言うとガブリエルは私の手を取り指先にキスをした。

ガブリエルは女性なのに男性の様に髪が短い為、女子生徒のファンも多い。私は緊張のあまりヒャイッなどと変な声を出してしまった。


「それでは私は先に戻っていますから。」


爽やかにそう言うと、ガブリエルは立ち去っていった。私はただ呆然としていた。ガブリエルが私の手にキス……。女の子同士で………嘘でしょ………。


(きっとあれは挨拶代りみたいなもの…。)


そう、きっとそうに違いない。物語の中でも王子が姫にしたりするやつだきっと。女の子同士ではあまり聞かないけど。


物語の中で良くする手のキスは手の甲にするものだとこの時の私は知らなかった。




手の指にキス 意味 心から愛してる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ