生徒会 II
「えっ、帰れない⁈」
私の声が寮の部屋に響いていた。私の部屋でサラとカオルとで話していた。
「そうよ。エルリカ、生徒会役員になるんだから夏休みは生徒会の仕事で埋まると思うわよ。」
「エルリカ、一緒に学園に残れるわね!」
「サラ、貴女は補習だけどね。」
完全に帰れると思っていた。生徒会の打ち合わせとかがあるので学園内にいなくともせめて、帝都には留まらないといけないらしい。デンドリティックアゲート子爵領は国境の近く、帝都からかなり離れた距離にある。これは夏休みにお嬢様に会うのは諦めた方がいいかもしれない。
(でも…。学園の在学期間中にお父様の無罪を証明しないと。)
学園を卒業したら私はお嬢様の元に仕えに戻らないといけない。なら、上級貴族と関わりが作れる生徒会入りを蹴ってはならない。無罪を証明したとしても、もうお父様は帰ってこないけどそれでもお父様が罪人のまま死んでいるのは許せない。お父様に有罪判決を下した帝国、お父様に罪を着せた悪徳貴族を私は絶対許さない。
「これも、しょうがないわね。」
卒業すればもう、貴族と関わるなんて無理になる。そしたらお父様の事を調べられない。お父様を陥れた奴らを野放しにしてしまう。私が身分剥奪されて汗水垂らして必死に働いている中奴らは元の身分のまま悠々自適に暮らしているのか。中には身分昇格した奴もいるだろう。
「ねぇ、エルリカさっきの廊下での事なんだけど…。」
サラがおずおずと尋ねる。こちらの顔色を伺っているようだった。さっきの廊下では私はどんな顔をしていたのだろうか。サラが尋ねるのはわかる。トパーズ公爵家は罪人として処理されたから私の行動は罪人の肩を持つ事になる。それを大っぴらに行ってしまったが大丈夫だろう。私に周りが影響するほどの権力があれば帝国も私を放っておかないだろうが何も権力を持っていない罪人の娘が騒いだところで何か変わるわけ無い。そう思っていることだろう。
「私は自分の信じたものを貫くことは悪いことじゃ無い思う。」
意外な言葉がサラから飛び出した。てっきり、貴女は間違ってるなどと否定されると思った。世間一般から見れば私は罪人の肩を持っているのだ。たとえお父様が無実だとしても、世間にとっては知ったことでは無い。それなのに私の意思を尊重してくれたのか?
「それが正しいことでも間違ったことでも自分の意思を曲げちゃいけないと思う。意思を持ったからには最後まで貫き通さなきゃいけない。今はまだエルリカのしようとしていることが正しいのか間違ってるのか分からないけど、もしエルリカが間違ったことをしようとしたら全力で止めるから。」
サラはしっかりと私を見つめる。私のしようとしていることは世間から見れば間違ってる事に見えてしまうはずなのにサラはどちらか一方の意見を押し付けなかったのだ。
「私もサラと同意見よ。エルリカから見れば間違ってる様に見えることもあるからね。」
カオルも私をしっかりと見つめる。カオルは言葉を濁したが、カオルが言っていることは世間一般から見ればトパーズ公爵は罪人だが、私から見れば罪人では無いということだろう。
「ありがとう。」
「さっきも言ったけど間違ってることしたら全力で止めるからね!」
私達は笑いあった。誰かを馬鹿にして笑う笑いじゃない、面白いから笑う。それはお互いを尊重し合わないと出来ないことだった。
******
生徒会役員 庶務職に選ばれた私は生徒会室のドアを開けた。どうか、誰も居ませんようにと願いながら。出来れば一番乗りであってほしい。私以外の生徒会役員は上級貴族ばかり。遅れて来るなんて生意気などと虐められる可能性は出来るだけ下げたい。新生徒会役員の会議というか、顔合わせには予定の時間の30分前、まだ誰も来ていないだろう。10分前行動ならぬ、30分前行動。不覚はない。
しかしドアを開けると他の四人は揃っていた。
学園4位生徒会会計 ガブリエル・ラリマー 侯爵令嬢 2年
学園3位生徒会書記 ケイジ・サファイア 第二皇子 1年
学園次席副生徒会長 アレン・エメラルド 公爵令息 2年
学園首席生徒会長 ルイス・サファイア 皇太子 2年
いや、全員来るの早すぎかよ!!
というツッコミを思わずしそうになったが、口に出る寸前のところで飲み込んだ。そんなことしたら無礼では済まない。お父様の無罪を証明する前に私もあっさり首が飛ぶ。
「遅れてしまい、申し訳ありません…。」
たとえ、予定時間より早くとも機嫌を損ねられたら遅刻と同然だ。ここは申し訳なさそうに入る。
「遅れてないですよ。大丈夫です。」
アレンがそう言い、この人たちは怒っていないのだと安心した。にしても、上級貴族が二人に皇族が二人もいるなんて…。廊下での事件のせいで私以外の上位五人をついさっきまで知らなかった。関わりを作ろうにも皇族はハードルが高いし、アレン・エメラルドは宰相家、エメラルド公爵家の長男でガブリエル・ラリマーは侯爵家の中でも名門中の名門のラリマー侯爵家の長女。気安く話しかけれる方々じゃない…まぁ上級貴族の時点で気安く話しかけれる訳ないが。
(無理だよ…これ。事務的な会話以外できそうにないよ。)
「早速ですが新生徒会の最初の仕事、休み明けの芸術祭についてですが…。」
ガブリエルが資料を配りながら話す。私は受け取りながらも目の前にいる皇太子殿下の事が気になって集中できなかった。夢の中ではよく会うのに現実ではほぼ初対面の私の初恋の人。もう二度と会う事なんて無いと思っていて諦めた恋。目の前の仕事が私の恋心なんて掻き消してくれると仕事に明け暮れ、やっと諦めがつきそうだったのにこれから接点が増えていくと思うと奥底に眠っていた恋心が燻る。顔が赤くなるのが自分でもわかったので資料に目を落とす。婚約者もいるのに、もしかしたら…という小さな希望が捨てきれずにいた。




