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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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旅行 Ⅶ

スィが目覚めたのは夕飯が出来た時だった。ナエの寝床を占領し寝ていたのだが夜になって寝る前に起きたことによってナエが寝床以外の別の場所で寝ることにならずに済んだ。

ちゃんと客用の布団があるのに、わたしの体力が限界を迎えて入り口から一番近くにあるナエの寝床にスィを寝かせることになった。


「ん…ここは何処じゃ?」


眠い目を擦りながらスィは起きてきた。


「あっ、起きた?ほら早く飯食べな。」


ナエはここは何処というスィの質問に答える前に夕飯をテーブルに置き、スィに座る様に促した。


ちょうどその時スィのお腹がグゥーと鳴った。奇妙な長い響きだった。お腹が鳴って仕舞えばお腹が空いているという事で、食べないわけにはいかなくなりスィは席についた。

目覚めた場所が月下城ではなかったことにスィは安心した。気づかない間に月下城に強制送還させられていたらせっかくの家出がちょっと長いお出かけに変わってしまうところだった。


それにもう二度と勝手に出て行けない様に警備という名の監視が増えることだろう。

そしたらもう二度と白の外に出る事は叶わない。今日のことで外に出て怖い出来事しかなかったがそのせいでもう二度と外に出ないか、と言われれば違うと答えるだろう。


たしかに城の中にいれば体験することの無かった出来事かも知れない。しかし外に出なければ何事も体験できなかった。

城の中で出来ることなどスィはやり尽くしてしまっていたから。


そしてスィは自分がお腹が空いたら鳴るのだということを知った。今まではお腹が空くと感じる前に食事にありつけた。

だから、お腹が空く前に食事は取れたのでお腹が空く経験が無かった。お腹が空くほど動いたこともなかった。


目の前にあるのは今まで食べたことない様な明らかに安い飯。しかしスィは自然と箸に手を伸ばしていた。


「えっ、何この二本の棒は?」


目の前の席に座るサラは両手に一本ずつ箸を持ってこれをどうやって使うのか奮闘していた。

その隣で同じくエルリカも箸と睨めっこをしていた。


「刺す…のかしら?」


「扱いづらいわね、このハシって言うのは。」


スィにとっては身近だったこの箸がサラとエルリカにとっては珍しいものだとわかると少しからかいたくなった。


「フッ…箸の使い方も知らぬとは。」


馬鹿にした様に言うと案の定サラは突っかかってきた。


「ハシを見るのも使うのも初めてなのよ!それに私達の国にはね、フォークとナイフがあるのよ。」


「ふぉーく?ないふ?そんなのはここにはないのじゃ、だから箸が使えぬと手掴みじゃぞ。野蛮じゃな。」


キィィィ!と高い声でサラは唸り、絶対に箸を攻略しようと息巻いていた。エルリカはもう箸を本来の使い方で使うのは諦め、食べ物に刺して使い始めた。



******



客室に並んだ三つの布団。左からスィ、エルリカ、サラと並んで寝ることになった。

なんであんたなんかと一緒に寝なきゃならないのよ…とサラは言ったがその言い方は本当に嫌っている様な言い方ではなくいがみ合う関係が確立しているから惰性で言っている様に感じた。


「床で寝るのは初めてだわ。」


ヒスイ国はベッドで寝るのではなく、床に布団を敷いて寝るのが一般的だそうだ。


「わらわも床で寝るのは初めてじゃ。」


「えっ、これヒスイ国の一般的な寝方じゃないの?」


サラがスィに問いかける。


「わらわは月下城城主でありパール家の長女じゃぞ?ベッドで寝れるのは当たり前じゃ。」


スィの言うベッドは私達がいつも寝ている様なベッドではなくヒスイ国式のベッドだそうだ。そこからスィのベッド自慢が始まった。


「そんなにベッドで寝たいのなら城に帰れば良くない?」


「わらわは家出しておるのじゃ!」


(家出っていうか城出じゃない?)


スィは布団の文句をサラに一蹴され渋々スィは布団の中に入る。


全員が入ると私が自分の頭上にある灯りを消した。フッと息で火を消すと途端に部屋は暗くなる。


私は慣れない寝具でなかなか寝付けなかったがしばらくしてサラは寝息を立て始めた。


「おい、エルリカよ。」


スィも寝付けないのか私に話しかけてきた。


「何?」


「寝れないのじゃ。」


寝れない事を私にどうしろというのか。


「怖い話でもしようか?」


年頃の女の子なら恋の話でもするのだろうが、スィは城から出た事がないというから恋をしたかどうかわからない。


「余計寝れなくなるじゃろう!」


とっておきの怪談話を…と思ったがスィはこういう類の話は苦手な様だった。確かにこの手の話は好みが分かれる。普通の貴族令嬢なら勿論嫌うだろう。

しかし私は怪談話が好きだ。だからいつか誰かに話せたらいいなとは思っていたのだがスィと同じくサラやカオルも怪談話を嫌った。


(せっかく話せるチャンスだと思ったのに。)


私も公爵令嬢時代はこう言った話は食わず嫌いならぬ聞かず嫌いであった。しかし平民になりメイドとして働いている中で同じメイド仲間が夏になると怪談話をするのだ。

嫌いだから聞かなくていい…というわけではなく完全なる強制参加。しかし聞いてみて怖かったが謎の中毒性があり、怖いけど聞いちゃう現象が勃発した。


「そうなの。なら早く寝なさい。」


「寝れなくて困っているのじゃ。」


それを私に相談してスィが眠れる様になるわけないだろう。まぁ私も寝付けないから話を聞くだけならするがこれが眠たい時だったらとっくに怒りの沸点には到達している。


「ねぇ、なんで家出なんかしたの?」


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