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悪女物語  作者: ひめりんご
悪女物語
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旅行 Ⅴ

「城主様ー!城主様ー!」


この分厚い壁の向こうでもわかるほどに城内が騒がしくなるのがわかった。

一人の兵士が巡回して来た時、彼の顔色が変わった。


「城主様!?」


「逃げるのじゃっ。」


兵士が声を上げたのと同時にスィは私とサラの服を掴んで走り出した。私達も釣られて走り出す。


「話はまだ終わってないからね!」


スィに引っ張られるようにして走っているサラはまだギャーギャー騒いでいる。


私は何故スィの逃亡に付き合わされているのか疑問のままだった。兵士から逃げた事により何かやましいことがあるのではないかと疑われてしまったのではないか。


スィが走るのを止め私達が解放されたのは見知らぬ場所に到着してからだ。


「ちょっと、何引っ張って走ってんのよ!」


「まずは逃げなければならなかっただろう、この味噌っカスが!」


「逃げなきゃ行けなかったのはあんただけでしょうが!!」


走るのを止めるとスィとサラの二人はまだ騒ぎ出した。サラはぎこちないがヒスイ国語で喋っている。


「ちょっと…二人とも。」


私の制止も虚しく二人の喧嘩はヒートアップして行くばかりだ。ここまで来て私も冷静に二人の間に入って喧嘩を収めようという考えは吹っ飛んだ。つまり堪忍袋の尾が切れたのだ。


「二人とも聞けぇ!!」


二人の頭をガシッと掴み無理やり私の方に向かせる。


「「ヒィッ」」


二人同時に肩がびくっと震える。


「大事な話があります。」


ブンブンと首が切れるくらいに二人は首を縦に振った。ここで何か言おうものなら生命活動が困難になると本能的にわかったのだろう。


「急に走らされたので帰り道がわからなくなりました〜。」


私はわざとらしくわー!と1人歓声を挙げパチパチと手を叩いて見せた。


「現地人が居るから椿地区まで案内して貰えばいいじゃない。」


サラはスィの腕を掴み私の前に差し出す。


「貴女が巻き込んだからもちろん案内してくれるわよね?」


スィはプイッとそっぽを向いた。ちょっとこの時点で嫌な予感はしたのだが。


「わらわは城から出るのが今日で初めてじゃ。」


つまりスィの土地勘はエルリカ達と同じくらいかそれ以下だ。まだ少し観光して街を歩いていたエルリカ達の方が土地勘があるかも知れない。


「はぁぁぁぁあ!?あんた、城主でしょこの町の領主でしょ…なんで知らないのぉぉぉ!?」


ガックンガックンとサラがスィの肩を揺らす。


「知らないものは知らないのじゃ!」


どうやらスィは城の中で今まで大事に大事に育てられて来たらしい。

街の様子も知らず形だけの城主や領主の座に座り、その仕事が苦になったから今日逃げ出して来たのだった。


「どうやって帰ったらいいのかしら。」


見渡す限りここは椿地区ではない。人は少し通るが誰も見向きもせず足早に通り過ぎて行くため道を聞こうにも止まってくれない。


日も暮れ始めたし、暗くなる前に帰らないと月下城も見えなくなるし本当に帰れなくなる。


あたりが暗くなり始めるとあたりの建物が一斉に灯りをつけ始めた。


「もしかしてなんだけど…ここってもしかして桜地区じゃない?」


つまり欲望渦巻く夜の店が密集した地帯。カオルから冗談でも近づくなと言われた場所。


「はっ…早く桜地区から抜けるわよ。」


「何故じゃ?」


スィはここが治安の悪い場所など思ってないらしく何故急にこの地区から抜けなければいけないのかわかっていない様子だ。


「サラも早く。」


私はサラとスィの腕を掴むとさっき走ったばかりで疲れている足をもう一働きさせる事にした。


少し前までは人通りがあまり多くなかったのに見世に灯りがつき始めてからどんどん人が集まり出した。

遊女らしき女性が自ら客を迎えに行っていたり、見世の前で遊女を見定めている客が居た。


その人達に椿地区までの道を聞く勇気はなかった。


客らしき男性が私達にも見定める様な目を向ける。そのねっとりとした視線が気持ち悪かった。

サラもここが桜地区でそういう見世の集まっている場所だと気づきさっきまで私に引っ張られる様に走っていたが自分の足でしっかり走り始めた。


スィはここがどういう所なのかはわかっていなかったが、向けられる視線に不快感は感じていた様だ。


(夜鷹か何かと間違われたら困るわ。)


夜鷹ほどの年齢ではないのだが、こんな夜道に桜地区をほっつき歩いている女なんて遊女以外いるわけがない。


人の視線を避ける為に私達は人通りの少ない路地裏に入った。視線を向けられる事はなくなったがそもそも路地裏に入る事自体が悪手だった事には気づかなかった。


「へぐっ。」


「ひぎっ。」


サラとスィの変な声が聞こえ、振り返ろうとした時私の後頭部にも鈍い痛みが走った。


そのまま意識が飛び、気づいた時には小さな檻の中に詰められており手枷が付いていた。


(もしかして…これは。)


私は一度これを体験したことがある。手枷をつけられ壇上に上がり競り落とされる。奴隷の競り。


どうやら私達は奴隷商に捕まってしまった様だった。


狭い檻の中身を動かして鉄格子の隙間から外を見る。ここは商品の保管庫の様な場所で私と同じ様な檻に入った商品(奴隷)が何人もいる。


その中に当然サラやスィもいた。


「サラ、スィさん、起きて!」


あまり大きな音は出せないので小声の中では大きめの声で二人に呼びかける。


「ん…んん……何?」


ゆっくりとサラが体を起こすが檻の天井にガンっと頭をぶつけ、はっきりと目が覚めた。


「ハッここは何処!?私は誰!?」


「サラ、私達奴隷商に捕まったみたい。逃げるよ。」


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