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秘奥全書と暁天の魔術師  作者: 血塗れメアリの侍従長&黒い白鳥の比喩
プロローグ
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 どうも初めまして。あるいはお久しぶり。侍従長です。

 また性懲りもなく、僕ともう一人とで始めます。

 前回のエタってしまった作品とはジャンルがかなり異なりますが、楽しんでいただけると嬉しいです。

『アカシックレコード』


 それは一冊の本だ。

 宇宙の開闢から終焉まで。

 生命の誕生から滅亡まで。

 我々の住まうこの世界の、過去(これまで)現在(この時)未来(これから)

 有り体に言ってこの世界の全てが記された本。叡知の書。世界の記憶。人類史の記録。現世の航海図。


 それがいつ生まれたのかは誰も知らない。

 それが誰に書かれたのかは誰も知らない。

 ある者は創世と共に生まれたと言い。

 ある者は今尚書き続けられていると言い。

 ある者は『神』の手によるものだと言い。

 ある者は『始まりの魔術師』の手記であると言う。

 嘘か真か分からない推論は数あれど、誰一人その真相を知る者は居ない。しかしそれは、確かに、一冊の古びた本として存在している。


 それも、純粋な紙でできた書物としてではなく。

 この世界のあらゆる全て、森羅万象に宿る不可視にして無形のエネルギー――『魔力』が結集して像を結んだ集合体として。

 ゆえに、常人にはその文面を読み解くことはできない。どころかその存在を知覚することすらできない。

 その存在を知覚し、確かなものとして認識することができるのは、魔力を操り『魔術』として使役する『魔術師』のみなのだ。


 だからこそ魔術師には、『アカシックレコード』から得られる無限にも等しき知識を正しく活用し、この世界のために、七十億の人々のために役立てなければならない。これは義務である。

 多くの魔術師が、この責務を胸に刻み込み、日々懸命に努力している。


 しかし嘆かわしいことに、この責務を忘れ、『アカシックレコード』から得られる情報を私利私欲のために求める愚かな魔術師たちが居る。

 情報は、時に価千金の価値を持つことがある。

 この世界における全てが記載された叡知の書からの情報となれば、どれほどのものか……その輝きに目が眩み、外道に身をやつしてしまったのだ。


 無論、そのような悪の魔術師たちの手に『アカシックレコード』が渡るような事態は万が一にもあってはならない。

 ならばどうするか。守るのだ。正義の魔術師の手で、外道魔術師たちから、『アカシックレコード』を。そして世界を。

 そのために創設されたのが、我々の所属する極秘機関【賢人会議ワイズマンズ・オーダー】である。


 ゆえに、我々は諸君らの訪れを歓迎しよう。

 諸君らの勇気を称賛しよう、義侠心に感謝しよう。

 共に世界を護る正義の魔術師の一員として、背中を預ける頼もしき戦友として、諸君らを迎えようではないか――――




§




 と、要約すれば大体そんなようなことを、毎度言葉を変えながらかれこれ三十分は話し続けているローブ姿の男性に、私は思わず小さな溜め息を吐いた。

 周囲には、私と同じ黒地に緑の線が入ったローブを纏う少年少女が、キラキラと輝く瞳でその話に聞き入っている。

 ずっと立ちっ放しで足が痛くなってきたし、同じ体勢だったせいで、体が凝ってきたのが分かる。身動ぎしようにも、背筋を伸ばして直立不動の周囲の中では目立ってしまう。


 ままならない現状に天を仰げば、そこには雲一つない青空が広がっている……わけもなく。

 骨組みが剥き出しの、いかにも「突貫工事で仕上げました」と言うような武骨(?)な天井があった。

 そう、ここは屋内……どころか、地図で探せば東京都心のど真ん中と表示される、広大な地下空間の一角なのだ。


 何でつい三日前までごく普通の女子高校生だった私が、こんな場所で(失礼)、こんな人たち(もっと失礼)と、こんな変な話(さらに失礼)を聞かされなければならないのか(白目)。

 その原因となった出来事を、私――八薙(やなぎ)カンナは深い溜め息と共に思い返すのだった――……



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