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やり直しへのマクガフィン  作者: あいろに
第1章 護人(まもりびと)
3/3

第1章 2話 初めての救済

 ツカサは自分が何をしているのかわからなかった。


 目の前で命が失われる恐怖に

 勝ったのか、負けたのか。


 一心不乱に走っていた。


「....っらぁ!」


 こちらを振り向いたリザードマンの左顎に全力の右ストレート。

 身長175・体重62の手加減なしの、それも全力疾走の状態からの拳。


 脳へのダメージが1番大きい顎だ。まともにくらえば普通の人間なら間違いなくぶっ倒れるだろう。




 普通の人間なら、だ。


「なっ.......!?」


 リザードマンは倒れるどころかピクリともしない。


 それだけならいいものの、今のツカサは全体重が前に行ってしまって無防備そのもの。


 野生本能を発揮したリザードマンの容赦ない膝蹴りが鳩尾にクリーンヒットする。


「ッガハッ!っっっ...!!」


 間髪入れずにもう一撃。

 唸りをあげる太い尻尾が、腰のあたりを強襲する。

 ツカサは凄まじい速度で壁に叩きつけられた。


 息ができない。最初の膝蹴りで呼吸のペースを失った。


「おいおい 衛兵ごっこのつもりなら噛み付く相手は選んだほうがいいんじゃねぇか?」


 明らかに機嫌を悪くした爬虫類がこちらを見下ろしている。


 しまった。完全に失敗した。

 相手を見誤ってしまった。


 全力で殴れば少女を連れ路地裏を抜けるぐらいの時間は稼げると考えていた。


 甘かった。ここは「異世界」だ。

 向こうの世界の物差しで測れるはずがない。


 相手は硬い鱗を持つリザードマン。

 筋力も普通の人間の比ではないだろう。

 興奮して何も考えずに飛び出してしまったが、少し考えればすぐにわかることだ。


(くそっ...!何馬鹿なことしたんだ俺!)

 そんなテンプレートな後悔をしていると


「てめぇ何しにきたんだ?」

 リザードマンがそう言った。


 ツカサはリザードマンの方を睨みつけたまま、言葉を発するため息を整えようと深呼吸をした。


 瞬間



 バキッ


 左頬を殴られた。

「こっちも暇じゃねぇんだ。特に何もねぇなら口封じにボロ雑巾にしてそこらへんにポイするだけなんだよ」


 痛い。痛い。熱い。

 鈍い痛みが左頬にある。きっと骨が折れた。

 まずい。殺される。間違いなく。

  どうにかしなければ。と頭を全力で回転させる。


 最初の目的を思い出し。

 少女の方を見る。

 無理だ。助けられない。1匹のリザードマンに拘束されている。

 それにもし何とか少女を拘束から解放したとしても路地裏から抜ける道にも1匹リザードマンが立っている。1匹でも手に余るのに、2匹なんてとんでもない。


 こうなれば自分だけでも。

 路地裏の奥の方へ走っていけばその内何処かへ抜けられるだろう。

 少女は助けたい。だが自分の命を投げうってまですることじゃない。


 足に力を入れる。

 声をだすため、助けを呼ぶために準備する。

 隙を伺う。

 リザードマンがツカサをどうするか話し始めた。

 目の前にいる奴も後ろを振り返った。


  (今っ!)


「...!っおい!」


 全力で脚を回転させる。

 道幅が狭いからかとても早く走れているように感じる。


 後ろから「待ちやがれ!」と慌てふためく怒号が聞こえる。


 枝分かれする道をひたすら疾走する。



 右、左、左、直進、右


(明かりっ.....!)


 奥に見えた光に安堵し、スピードを緩めたその瞬間。


「なっ!?」


 横道から、リザードマンが1匹現れた。

「ここら一帯の路地は全部把握してるっつーの」


 終わった。

(死ぬの、はえぇよ)


 リザードマンが曲剣をとりだす。

 目を瞑るツカサ。




 そして

















 閃光。


 目を閉じていても解るほどの、凄まじい光が瞼を灼く。




 目を開けると、そこには華があった。

 可憐で、朧げで、今にも壊れそうな。



「そこまでにしなさい!悪党!」

 白藍色の華が、立っていた。

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