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311〜320

#twnovel 君へ捧げたいと願っていた僕の鼓動が優しく緩く遅れていく。止まりそうな程の浅い呼吸で紡ぐ言葉は飽和する。空中で分散していく声音と無意味な言の葉。羅列した想い出。遠ざかる雪解け。悲しいなんて思う暇はなく、ただただ静かに、ただただ細く、僕の息の根が続く限り叫んでいた。



#twnovel 悲しみが渇き切ったらさぁゆこう。どこへ。どこへでも。だれと。だれとでも。では君と。あと猫も連れて。じゃあ本も忘れずに。お菓子をリュックに詰め込んで。いちごみるくも入れていこう。珈琲がいいんだけど。ならそれも一緒に。さぁゆこう。どこへ。どこまでも。君と。僕と。



#twnovel 感情装置の壊れた機械人形はそれでも温かな夢を見る。この腕を作ってくれた人の優しい眼差しを抱いたまま。この眼をくれた人の柔らかな指先に焦がれる想いを持て余しながら。この鼓動を与えた人の記憶を一つ一つ吟味しては潰していく。これはもう要らない記憶。デリートの合間に赤。



#twnovel 重い荷物は棄てるに限る。そんな誰かの戯れ言に怯えたままの子供は息絶えた。重荷でしかなかったそれを捨て去ったのは未来の自分。お前なんか要らねぇよ。言葉は呪となり跳ね返る。お前なんか要らねぇよ。捨てられたのは誰だ?お前なんか要らねぇよ。戯れ言に怯えたのは、本当は。



#twnovel じわりじわりと蝕まれていく。嫌いな自分が侵食していく。もうやめてよ。触らないで。痛いところをほじくり返さないで。痛みが熱に変わって僕の端っこから焼いていく。焦げていく僕はなんて汚く臭いのか。炭になってもそれは最早不良品。誰にも見られず踏み潰されていくだけだ。



#twnovel 重たいのは目蓋か、雨雲か。頼りない街灯の並ぶ田舎道。蛙の声と虫の声が混ざり合う。通り過ぎる車のライトが照らす先にあるのは絶望に満ちた夜の闇。囚われてはいけない。帰ってこれなくなってしまうから。逃げるように足掻いて自由を勝ち取れ。それが僕に残された使命なんだろう。



#twnovel 使えない言葉をぼとぼとと吐き出す喉など潰れてしまえばいい。意味のない言葉をつらつらと書き並べる指先など裂けて墜ちてしまえばいい。あなたに届かないなら、そんなもの要らない。脳味噌の無駄遣いでしかないなら、空からプレスされて醜く死んだ百合のように散った方が美しい。



#twnovel 世界は悪意に満ちている。喉まで伸びた言葉の棘は、刺さったまま動かない。どうにか絞り出そうと喉を締め上げるけれど、息が詰まってしまうだけ。僕の自由は何処へ消えた。言葉と同時に感情までもが凍結する。誰か触れてくれ。とてつもなく寒いんだ。頭の中の砂嵐はまだ、止まない。



#twnovel 悲しみで離散した心を抱き締める。こんなにも傷付いていたんだね、そう言ってくれる人もいない。私も言わない。だって負けを認めるようなものじゃないか。まだ立ち上がれる。まだ戦える。まだ、まだ。そうやって幾つすり減らして来たのか振り返れよ。お前の後ろに転がる己の屍体を。



#twnovel 離さないで、と伸ばす予定の腕は力なく横たわった。私の目が覗いた未来は優しい彼等しか映さない。そこに私の姿はない。止める権利も烏滸がましい。お前は何もしなかったじゃないか。責め立てるのは過去の私。現在の私を置いてきぼりにして双方は解離する。嫌だ、嫌だよ、ひとりは。

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