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さようなら。その声がとてつもなく底冷えして自分の耳に返ってきたのは気のせいではないのだと思う。足元に横たわる男はとても美しく、今にも動き出しそうで。自分の手の赤が月明かりでぬらぬらとして、まるで別の生き物のようだ。さようなら。何度だって言おう。さようなら。もう忘れてしまう誰かへ。
(水溶き片栗粉さん(@katakuriko_o)さんのイラストでss)
◆
「青春、ってあっという間だよね」
「なにそれ、悟り?」
「そんなんじゃないよ、ほら、もう女子高生ってブランド脱がなきゃじゃん」
「まぁね、でもだからって青春が終わりってことでもないでしょ?」
「分かってないな〜女子高生だから意味があったんだよ」
「あんたって変な子」
「知ってた」
(イラストからss)
◆
母が選んでくれた麦藁帽子のリボンが
揺れる
迫り来る夏と汗ばんだ空
君の声も分からない
白球を追う彼等の情熱に侵されそうな余韻を胸に私は振り返らなかった
いつかの憧憬が蘇る
彼等も私ももう大人になってしまった
室外機の冷風を浴びながら歩いた路地には帰れないほどの大人に
君も
私も
(第1回 句読点縛り「麦藁、憧憬、室外機」)
◆
#ヘキライ その日までには元気になる。そんな約束を君は覚えているだろうか。優しい嘘は君を守れただろうか。僕はもうこんなに老いぼれてしまって、君は僕が分からないかもしれないね。ニーナ。君との日々のささやかな幸せを集めて花束を作ったよ。届くかな。果たせなかった27回目の結婚記念日に。
◆
知ってる?真昼のユーレイ。え?あれってユーレイとは違うって聞いた。なんかさ、願い事叶えてくれるらしいよ。その代わり大切なもの渡さなきゃいけないらしいけど。へぇ、私も頼んでみようかな。会えたらでしょー?会えないよー。会えないかなぁ、その辺にいそうじゃない。案外こっち見てたりして〜!
(涼暮紫闇さん(@Suzukura_o0)のイラストでss)
◆
私の中身を詰めて捨てる。少しでも見栄えが良くなればいいなと思いながらぎゅうぎゅうと押し潰して蓋をしてガムテープでぐるぐる巻き、綺麗な紙とリボンで飾る。ラベリングして出来上がり。誰に届く宛もないけどそれに風船を付けてみたり海に流してみたり。誰にも届かず何処かで朽ち果てたらいいのに。
◆
#twnovel そうまでして僕らが声を大にして言いたいのは、多分誰かを救える言葉なのだろう。万能薬のようなそれを探しているのだろう。君を癒せないもどかしさに涙して、その雫による波紋にすら意味を求めて。この際小難しいことは忘れて。叫ぼう、愛を。何度でも名前を呼んでいたいんだ。
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#ヘキライ 君の半分を僕が持とう。僕の半分を君にあげる。君も僕も羽ばたけないけどそれでいいでしょう?仲間達が声高に叫んでるのを横目に僕等は土の中で眠っていよう。7年なんて言わず一生一緒。大人になんかならないで。君の翅が透けるように美しい様なんて見たくない。どろどろのまま、二人で。
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#twnovel 願わくば。誰も泣かずに済む夜の帳を。僕の上にも、あなたの上にも、優しく降り注ぐ月の光を。見守る星々の瞬きに誓えるほどの誠実さは持ち合わせていないかもしれないけれど、それでも祈っているよ。世界平和なんて大逸れたものじゃない。手の届く限りの幸福を。優しいあなたに。
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ねぇおとうさま。星だっていつかは死ぬのでしょう?それならば私達如きのいのちなんて、大したこともないのだから、今すぐお空を飛んだっていいのではなくて?いつか来るお別れを彩る為の星なのだよ。それじゃあ納得出来ないわ。美しい星々が死ぬ理由にはならないでしょう。それならお前も生きねばね。
(@odai_bot00 星だっていつかは死ぬのでしょう?)




