プロローグ2
意外と泣き叫ぶようなことにはならなかった。
たぶんあの声としゃべり方にみんな恐怖していた。まあそれと同時に吐き気もしていたと思うけど。
『あら意外と騒がないのね。つまらないわ。まあいいわ、いまから説明するわね~~~。さっきも言ったけどあなたたちは選ばれた人なのよ~~~。私たちの実験に選ばれたのよ~~~。名誉なことなんだから感謝しなさいよね~~~。』
相変わらず気持ち悪く、そして恐怖を感じる声と口調だ。しかし実験とはなんだ?あのオネエ口調の変態の言葉から察するにまだ実験は始まってない。そして実験が終わるまで俺たちは帰れない。
そんなことを考えていると、オネエ口調の変態は話の続きを始めた。
『これは私たち原初の悪魔が考えた~~~。超特大規模の人間版の蠱毒よ~~~。蠱毒っていうのはね~~~、沢山の虫を壺の中に閉じ込めて最後の一匹になるまで殺し合わせて~~~、その虫を使って人を呪い殺すっていう呪術よ~~~。ここには一億人の人がいるのよ~~~。その一億人の呪いってどんなものか気にならない~~~?というか~~~、考えるだけでゾクゾクしちゃあうわ~~~。』
頭が真っ白になった。
「ふ、ふざけるなよ!な、なんでお前たちの言う通り蠱毒なんてしないといけないんだよ。つまりは俺たちに殺し合いをしてくれと言ってるんだろ?悪魔だか何だか知らないけど早く俺たちを返してくれよ!家族が待ってるんだ。こんな茶番に付き合ってる暇なんてない。」
かなり遠くのほだがそんな声が聞こえた。そしてそれに追従するようにほかに人たちも口々に文句を言いだした。
確かにあのオネエ口調の変態もとい原初の悪魔さんは、俺たちに殺し合いをさせて生き残った最後の一人を見てみたいらしい。なんともふざけた話だ。俺たちも周りの人と一緒に原初の悪魔に文句を言っていた。
『あぁ?てめぇら、俺をそこら辺の悪魔と一緒にするんじゃねーよ。俺たちは最初に生まれた悪魔だ。この世界ができる前から生きている存在だぞ。それをこともあろうか普通の悪魔と勘違いしやがって、調子に乗るなよ。今貴様らを殺すと実験に支障が出るから殺さないが、もし貴様が生き残ったならば俺直々に殺してやる。あら、素が出ちゃったじゃない~~~。まったく~~、あんまり私を怒らせないでね~~~。』
原初の悪魔が言葉を発したことで空気が変わった、というより空気が死んだ。あの恐怖を感じさせる声がさらに恐怖を感じさせる声に変った。さっきまで聞いてた声は心が恐怖するような声だったが、今の声は心も体も恐怖を感じて俺たち、いや周りの人たち全員が膝を折って絶望した表情をしていた。
『言っておくけど~~~、このままここで農業とかそんな生活しようとしても無駄だからね~~~。そんなことしたら実験の意味がなくなっちゃうかさ~~~、私たちが直々に殺しに行くからね~~~。だからてめぇらとっとと≪殺し合え≫』