第八話『入学式・朝』
けたたましい音で叫ぶ我が携帯。HIPHOPのアラームを決して起き上がる。
あの夜から外出することなく、部屋に引き籠もって文学小説を読み漁り過ごし、あっという間に約1週間。ついにこの日がやってきた。うん、ついに。
―――入学式。
なんだかんだ予想していた学校と違っていたが、この日が待ち遠しかった。
銀縁の伊達眼鏡もこの1週間ずっとつけて過ごしたし、愛車のスクーターも持ち主に返した。
ちなみに、このスクーターが大変だった。どっかのバカから奪ったものだったが、窃盗品だったらしく、警察が家に来てしまったのだ。色んな理由で名が知れてしまった俺。すぐさま警察に連れていかれてしまった。そこで容疑を晴らすのに費やした時間約2時間。おかげさまで小説を読む時間を損しましたさ。
だが、そのスクーターも持ち主にちゃんと戻り(ガソリンは空で)、警察にも七三眼鏡のおかげで改心したと信じてもらえ、龍也はシメたし、もはや障害はない。俺の真面目ライフが、ついに、ついに、今日から始まるのだ!
「はよ」
慣れた調子でリビングに入る。そこで出迎える我が母。
「おはよ。あんたまだその眼鏡してんの?」
呆れた様子で朝食を並べてくれる。
「あぁ。真面目っぽいだろ?」
笑いながら眼鏡を持ち上げてみる。ちなみに、お母さまはやめてみた。ガラじゃないのもあるが、言うたびに薬中扱いされるのはごめんだ。
「にしても、あんたまさかまた七三で行くつもり?」
そう、俺が七三で出歩いたのは登校日と警察に呼ばれた時だけ。なので、母しか見ていない。だからこそ、母は二人でいる時にしか注意できない。妹や親父が見たら、薬中扱いされるどころか発狂しかねないから。
「カッコイイと思うんだけどな・・・」
「あんた本気なの?!」
いや、本気ですけどお母さま。
さて、ビシッと学ラン(普通の)を着て、七三に眼鏡。鏡に映った自分の姿を見て、酔い痴れる。今日は中学時代の制服をそれぞれが着て、入学式に出席することになっているから。にしてもだ。あぁ、どっからどう見ても真面目な学級委員だなぁ・・・
「あんた、早くしないと遅刻するわよ?!」
母が焦って声をかけてくる。全く、ゆっくり自分の世界にも浸れん!バイクが無いから、親父が昔使っていたチャリの鍵を手にとって、我が家を後にしようとする。
ちなみに、今日の入学式には保護者は出席しないらしい。ホント不思議な学校だ。
「じゃ、行ってくる」
「そんな格好で行って、カツアゲとかされないでよ?」
・・・もう被害にあってしまいましたけどね!
短めに仕上げました。次回、ようやく入学式です!






